創業107年、地域に愛され続ける呉服店。
現状に甘えず、人と織物とを仕合わせる
大正元年に創業し、これまで三代に渡ってバトンを渡しながら長い歴史を走り続けてきた東彼杵町の老舗呉服屋、入江京呉服店。
店内に入ると、さまざまな粋な物が出迎えてくれる。懐かしさを覚え、ついつい長居したくなる温かさが漂う。現在は7人の社員が在籍し、その他に仕立て屋が3名。合計10名のスタッフが呉服店の運営を支えている。
店の雰囲気を作るスタッフたち。作業場からは、笑い声が絶えない。なるほど、親戚の家に遊びにいくような、童心に返ってしまう温かさはこの現場から作られているのだ。
そんなアットホームな呉服店がメインに取り扱うのは、もちろん織物。「シミ抜き、洗い張り、染め直し、お仕立て、お直し、お手入れ。着物のことなら何でもご相談ください」と謳う。着物のこと、または着物を活用する場面においてわからないことがあれば、まず相談してみることをおすすめしたい。
色とりどりの帯紐が美しく掛けられている。改めて見ると、随所にこだわりがあって組み合わせも無限大。飽きなく楽しめることができる。
また、呉服の仕立てだけにとどまらず、さまざまな取り組みも行なっている。例えば、雛人形。着られなくなった着物の帯の生地を使ってオーダーメイドの人形服へと生まれ変えさせる。
店に置いてある雛人形が着ている十二単は、入江秀俊社長の奥さま文恵さんが使っていた振袖の帯を再利用したものだ。このように、別の形として思い出の帯を残しておくことがでる。タンスの中に眠った帯をお持ちの方は、私だけのお雛様を作ってみるのも良いだろう。
現状に甘えることなく、活動を広げる入江京呉服店は、情報発信においてにも余念がない。
入江秀俊社長の奥様、文恵さんが毎月発行している『いりえ通信』。最初は手書きで始まり、20年も続けているという長期刊行物だ。着物だけでなく、季節に合わせた情報なども差し込みで入れる。顧客に行き渡るように配っているとのこと。
立ち寄りやすいアットホームな店の雰囲気は、きっと地域との密接な関係性が築かれている証拠だろう。気さくで、親切なスタッフが着物の悩みを解決してくれるはずだ。着付けを学びたい、着物を探している方は一度立ち寄られてみてはいかがだろう。
ひと・ものについての詳細は以下の記事をご覧ください。
また、オンラインストアより入江京呉服店の特性マスクの購入が可能です。
写真 : 小玉 大介 / 川崎 順平
記事 : 東 孔明
編集 : 森 一峻