新聞記者から東彼杵町役場へ、地域活性化を促すため東彼杵で働く中山雄一さん【長崎国際大学 佐野ゼミ共著記事】

  • 矢埜鈴也

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  • 長崎国際大学 准教授 佐野香織

    長崎国際大学 准教授 佐野香織

この記事は、長崎国際大学 人間社会学部 国際観光学科 ×くじらの髭でお届けします。

東彼杵町役場、まちづくり課に存在する異例の職歴の中山さん

長崎市内から東彼杵町に移り、地方で働くことを決めた人がいる。東彼杵町役場の中山雄一さんだ。長崎県出身で京都の大学へ進み、就職活動を通して地元へと戻ってきた。そして、長崎市で新聞記者として12年半働き長崎新聞東彼杵支局長を経て、思い切って職を変えた。転職先は、東彼杵の町役場。働き始めて6年目になる。

なぜ新聞記者から転職して
町役場で働くことにしたのか

長崎市出身の中山さんが、なぜ東彼杵町のまちづくり課に転職しようとしたのか。理由を伺った。

中山「記者として県内各地に赴いて仕事をさせてもらって、川棚町や波佐見町、東彼杵町といった地域を担当したときに初めて地方を見ることができました。自分が知らないことがたくさんあり、こういう場所がある、人がいるんだと気づいて、そこから地域活性化をしたいという気持ちが芽生えました」

仕事を通し、いろんな町で生活を営み、生きる人たちを見てきたことで、中山さんの心が動いた。

「もともと、何か新しいことにチャレンジしてみたいという気持ちがあったんですが、この体験がきっかけで自分らしさを発揮できること、もう一度別の新しいことをやりたいと思うようになりました。転職というと難しいことですし、今までやってきたことがすべてゼロになってしまうような気持ちも少しはありましたが」

中山さんが働く
まちづくり課の仕事とは

実際に、まちづくり課とはどのような仕事なのだろうか。

中山「まちづくり課には、僕が所属する商工観光係と企画係という2つの係があります。商工観光係はその名の通りで、商業・工業の活性化と観光の促進というのが大きなテーマとしてあります。例えば、商業に関することでいうと、道の駅をはじめ町内店舗などにお客さんを呼び込む活動です。商売が成り立たなければこの町に暮らし続けることも難しくなるので、そういったところを考えながら行動しているつもりです。しかし、結果を出すのはなかなか難しいですね」

単にお客を呼ぶといっても、実際に興味を湧かせるような魅力を打ち出すのは簡単なことではない。

中山「東彼杵町という町のことを、どれだけの方が知っているのか。たぶん、全然知らない、聞いたこともないという方もいらっしゃるでしょう。観光地と呼べる施設やスポットもまだ少ない中で、どうやって発信していくのかというのを考えています。しかしながら、昔の古い建物を活用してそこをカフェにするなど、そういう動きが少しずつですが活発になってきている。町民と一緒に連携して情報発信をする、魅力を発信するということに力を入れて取り組んでいます」

経験してきたからこそわかる
働くうえで大切なこととは

働くというのは、人間らしい生活を送るためには切っても切れない行為だ。生きる=仕事と捉える人も多いだろう。何を基準にして決めるのが好ましいのだろうか。

中山「自分は本当に“普通”でした。それなりに勉強はできましたし、困ることはなかった。そんな中、いざ就職となって自分の歩んできた道を振り返ってみると、そこに他人に評価されるような突出した個性がないことに気づきました。しかし、過去のことは取り返しがつかないので、どうしようかという思いで、結局自分がやりたいことって何だろうと。そう考えた時に、自分は雑誌が好きで、文章を書くのも嫌いではないし、ということで最初は雑誌を作りたいと。それで、マスメディア方面の就職先を探したり試験を受けたりしたのですが、当時の私の見聞があまりにも狭すぎました。寡聞だったからこそ、目に入ったものはすべて大手企業。とても太刀打ちできなかった。そして、残された道が地元の新聞社だったというわけです」

勉強ができるからといって、興味を惹くような印象を人に与えられるというのは話が別である。挫折をし、それでも与えられた環境の中で働くことの大切さを中山さんは語る。

中山「どこかに就職して、働いて。まずは、始めてみて、そこから頑張れば良いんじゃないでしょうか。そこで得るものもあるので、違うかなと思えばそこからまた何か別の道を探せばいいだけですし。目の前の仕事を全力で頑張れば、いろんな人との出会いもあったり、自分の興味のあるものにも出会えたり。そういったチャンスは絶対にあるので今の選択がすべてだと思うのは、ちょっともったいないです」

人生において働くこと
生きることとは

人生において働くことは、家族のためや自分のため、または誰かのため。理由は人それぞれだ。今日でも、数多くの人間が就職や転職、起業や修行といった活動を行なっている。どの人生にも正解がないだけに、自身の好きなことを仕事にすることは難しい。しかし、どんな仕事であっても、どこかの誰かの役に立っている。もし、自分が働きたい仕事に就けなくても、そこから頑張れば良い。中山さんの言葉が心に沁みる。目の前のことに全力で取り組めば、きっと報われる日が来るはずだ。

中山雄一

中山雄一(東彼杵町役場まちづくり課)

長崎県出身。京都の大学へ進み、就職活動を通して地元へと戻り長崎市で新聞記者として12年半勤務。長崎新聞東彼杵支局長を経て、東彼杵の町役場まちづくり課へ。現在、6年目になる。