東彼杵が、もっとワクワク。新たな地域の交流拠点『uminoわ』オープン!!

編集

写真、動画

東そのぎICを降り、国道34号線を大村市街方面へと車を走らせていると、左手に突如として謎の三角屋根のお店? 施設? が現れる。『東彼杵ひとこともの公社』と『九州電力』との協業により生まれた、東彼杵町の新たな交流拠点『uminoわ』だ。

「中には、何が入っているの?」

「一般の人も入れるの?」

「ここで、どんなことができるの?」

そこのところ、詳しく教えてくださーい!

誰もの頭に「?」が浮かぶ、
3つのテナントの組み合わせ

この交流拠点『uminoわ』には、主に3つのテナントで構成されている。

①可愛らしいカラーリングのコインランドリー「洗濯場 わ」

②洋服のお直しからリメイクまで幅広いオーダーに応えてくれる「縫製場 わ」

③そのぎ茶と一緒に東彼杵の野菜がゴロっと入ったスープやお茶スイーツが楽しめる「茶飲場CHANOKO」

まず、この店舗の組み合わせ自体に「なんで?」と思わず首を傾げてしまうのだが、uminoわを訪れたお客さんには、さらなるたくさんの「?」が生まれてくる。

「何のお店だろう?」 。
好奇心をくすぐる外観

わわわわわわわわわわわわ……。駐車場に並ぶ、たくさんの白い『わ』コーン。すでに、謎だ。だけど、よく見ると、コーンの上部にいろんな会社の名前が一つ一つ印刷されている。これは、お祝いの替わりにと、県内外の事業者さんからuminoわへ贈られたもの。駐車場に引かれたラインの分かりにくさをコーンで解消するという狙いがあったのだが、40個を超えるコーンの存在感は、大きな「わ」の看板とともに異彩を放っている。わわわわわわわわわわわわ…。


また、駐車場に並ぶ茶箱も印象的だ。近くのお茶屋さんの倉庫に眠っていたものをいただき、オシャレなプランターへと再利用。お茶どころである東彼杵町を、強く印象付けてくれるアクセントとなっている。

さて、ここまでの外観をお伝えした上で、実際に訪れたお客さんからよく聞かれる質問が、「結局、何屋さんですか?」ということ。3つの店舗のことは説明できるものの、随所に設けられたパネルやプロジェクターなどの情報発信、謎の屋根裏部屋の存在や芝生広場などの余白が、何とも説明しづらいもどかしさを感じる。そう、確かに、謎なのだ。

そんな、たくさんの「?」が生まれる交流拠点uminoわ。なぜ、このような複合施設が建設されたのかは前回の記事をご覧いただくとして、今回はuminoわの建設に携わられた方々にオンライントークイベント形式で、その舞台裏をお聞きした。


uminoわ オープニングトークイベント「場をつくる(建築編)」

【登壇者】
設計:INTERMEDIA設計事務所 佐々木 翔さん、南里 史帆さん
建築:里山建築 専務 里山 賢太さん
施工管理監修:さいとう宿場 齊藤 仁さん(東彼杵ひとこともの公社 理事)
協業事業者:九州電力 照山 太一さん
施主:東彼杵ひとこともの公社 代表理事 森 一峻
インタビュアー:東彼杵ひとこともの公社 池田 晃三
映像:映像クリエイター 山田 聖也さん


建物のコンセプトと
土地の歴史や文化から紐解くデザイン

ーー観光客と地域の方が交わる場を作りたいと、設計の依頼があった時、どのように感じられましたか?

佐々木:実は依頼があった時、すでにある程度の形ができていた状態での依頼でした。そういう途中から入るという案件は珍しくて、悩ましかったのですが、“交わる”というコンセプトをデザインに落とし込むために、白紙に近い形から取り組ませてもらいました。たくさんの案を出して、土地の歴史や文化を見つめつつ、自動車の侵入路や周囲の店舗も含めた人の動線、お客さんの交わり具合、コインランドリーのプライベート感など、本当にいろんなパターンを検討しました。打合せ直前まで考えてて、最終的な三角形のデザインは、打合せ当日の朝、シャワーを浴びてる時に「これだ」と確信しました。

ーーそうして提案された設計デザインを見て、どう感じましたか?

森:これまで空き店舗や空き家をリノベーションして、エリアイノベーションに取り組んできていたので、土地の歴史や文化を踏まえてデザインに起こす考え方を聞いて、佐々木さんと初めてご一緒させていただいたんですが、とても印象的な提案だと感じました。“交わる”がコンセプトの複合施設だからこそ設計上のデザインが大切だと感じていたので、たくさんのパターンで検討してもらえているのを見て、交わりを生む建物として設計していただいてるなぁと感じました。

ーーそもそも、なぜ「観光客」と「地域の方」が交わることがコンセプトになったのでしょうか?

照山:くじら焼のCHANOKO号のマーケティングリサーチをしていた頃、『道の駅 彼杵の荘』と『Sorriso riso』で来訪者にヒアリングをしていたんですが、道の駅は比較的近隣にお住まいの方が野菜などの買い物に利用されていることが多く、Sorriso risoは観光として訪れるお客さんが多い状況でした。この2つの層の交わりを生むことで、東彼杵での暮らしを感じることができ、東彼杵のことを好きになったり、移住してみようかなと思ってくれたりしないかなというのが始まりでした。

ーー設計の検討段階から参画していただいてたと思いますが、前職(商業施設の空間づくりの最大手)でのご経験から佐々木さんの設計をどう感じられましたか?

齊藤:複合商業施設はとても難しい案件。「集客」「売上」「宣伝」で効果が出る設計でないといけない。それが満たされていると感じました。でも、こういう設計や施工管理の仕事はもうしたくないなぁと思って前職を辞めて移住してきたのに、まさか、ここまでがっつり入ることになるとは思ってませんでした。

シンプルな形状ゆえの
難しさと厳しい予算

ーー施工する立場としては、どのように感じられましたか?

里山:まず、模型を見させてもらった時にすごく「シンプル」な建物だと感じました。ただ、それを施工図面に落とし込んでいく過程で、シンプルゆえの複雑さの壁にぶつかりました。木材をあらかじめカットする大きな工場の機械でも計算できないなど「この構造は何だ?」みたいな箇所もあって、職人の知恵とスキルが求められる場面が度々出てきて、大工冥利に尽きる良いきっかけにもなりました。

ーー施工が進んでいく中、スケジュール的にも今回の建設はどうでしたか?

齊藤:ウッドショックやコロナが原因で木材や半導体を使った機器などの資材が入手しづらかったのは、どうしようもなくて厳しかったですね。

里山:金額もびっくりするくらい高騰してて、DIY用の木材も高くてホームセンターの方が手に入り易いとか異常な状態でしたね。

照山:もともと予算が厳しかったので、DIYでできるところは最大限組み込んでたんですが、「やるやる詐欺」的なところもあって、後半はずっと里山さんと齊藤さんにボランティアでカウンターテーブルを作っていただくなど、ご迷惑をおかけしました。

初めて担当するプロジェクトで
苦労しながらも得られた貴重な経験

ーー今回、初めて竣工を迎えた担当物件ということで、苦労したことは?

南里:これまで経験したことがない初めての物件だったので、分からないことばかりでした。設計段階は三角形の建物の模型を作ったりして、「それ、いいね!」などと楽しく検討を重ねてきたのですが、テーブルとか収納の取手とか、トイレの空間なんかも三角形になっていて、こだわらせていただきました。

苦労したのは、特に設備に関するところが専門的なことが多く、施主さんや施工者さんにご迷惑をお掛けしてしまった。

佐々木:入社して初めての物件ということではありますが、南里さんはコミュニケーション力に優れてて、今回の案件は関係者も多く、しっかりコミュニケーションを取りながら進めてくれました。

里山:大変だったと思うけど、今後も色々なプロジェクトに関わることがあると思うので、失敗も含めて、経験を活かしてもらえたら嬉しい。

齊藤:住宅とは違って複合商業施設ということで、非常に難しい案件だったと思う。この案件を経験できたことは、とても財産となると思う。

南里:こういった地域に拓く場づくりのプロジェクトがインターメディアとしても増えてきている。長崎の方々は面白い人が多いので、ご一緒させていただきながら、楽しんでいきたいと思います。

uminoわのこれからと
プロジェクトを通じて感じること

ーーいろんな物語があるuminoわですが、今後、どのような場にしていきたいですか? また、今回の建築をきっかけにご自身の活動や事業にどう展開できたら良いなと思いますか?

森:DIYの段階から地域の方を中心にお手伝いに来ていただいてたりして、コミュニティが生まれつつありますが、この建物を最大限に活かして、地域の中も外も、人と人をつなげる場として運営していきたい。そして、この「uminoわ」に関わってくださった方々、「白いコーン」のお祝いをくださった方々など、営みをつなぐ場としてもしていきたい。また、メディアウォールと呼んでる展示パネルや動画の映写など、Webサイト「くじらの髭」がネットからリアルな場に出てきたように、ソフトとハードを組み合わせながら地域の魅力を発信していきたい。

照山:オープン2日目ではあるものの、すでに人と人が繋がる場面を目にしましたし、2階の屋根裏部屋はこだわりの場所なんですが、お子さん連の笑い声が響いてて嬉しかったですね。uminoわをきっかけにして、新たなコミュニティや人と人の繋がりが生まれる仕掛けを森さんとご一緒させていただき、東彼杵に素敵な方々が更に増えていくお手伝いができたらと思います。

里山:今回、移住促進を目的としてコンセプトであるが、地元の波佐見では移住したくても、ご紹介できる良い空き家が少なくなってきている。移住したいと仰っていただける方に素敵な空き家や物件を提供できるよう建築会社として動いていきたい。と、その前に5年前くらいから計画してきたマイホームを建てたい。

佐々木:uminoわもそうであるが、地域の方が交わる場を民間が主導で動いてあるプロジェクトに携わらせていただくことがあり、自分自身、長崎にUターンしてきてよかったと思う。自分が外で学んできたことを、地元に恩返しできてる気もする。こういうプロジェクトが長崎でどんどん生まれていくよう、関わることができればと思う。

齊藤:本業がゲストハウスなので、観光事業に本格的に力を入れたい。「くじらの旅チャンネル」というWebサイトを立ち上げたので、東彼杵の観光面での魅力をたくさん発掘して、いろんな方々にお届けできればと思っている。

森:「くじらの旅チャンネル」については、改めて皆さんに発信したいと思っていますが、コロナ禍でもあるので、少し焦らしながら発信していきたいと思います。話は少し変わるんですが、駐車場に並ぶ「白いコーン」は県内外の方に“形として残る”お祝いとしていただいたのですが、今日、このたくさんのコーンを見た若い子と話をしたんですけど、「こうやって、いろんな方が応援してくださっている場所が東彼杵にはあるんだなぁ」と、嬉しく感じたようで、その子は今、町外に出てるんですが、東彼杵に戻ってきたいなぁと感じたそうです。そうやって、人と人との繋がりがこうして見えることで、その居心地の良さを求めて、Uターンや移住をしてくださる。そんな風に感じてもらえたらと思います。


こうして、いろんな方々のご協力で生まれたuminoわ。携わってこられた方々は、みんな“好奇心”に溢れる方ばかり。その甲斐もあってか、好奇心の塊のようなこの建物は、随所に来訪者の好奇心をくすぐる仕掛けや余白が眠っている。

ここに集う方の好奇心が、また誰かの心に火をつけ、新たなわくわくが生まれる。

uminoわを舞台にしたいくつもの物語が、これから生まれていくことだろう。

関連する記事として、こちらもぜひご覧ください。