無駄な挑戦はない。これからもいろんな事に挑戦する『株式会社ウラノ・丸田江里佳さん』【長崎国際大学 佐野ゼミ生共著記事】

取材・文

  • 喜屋武沙和(長崎国際大学佐野ゼミ生)

    喜屋武沙和(長崎国際大学佐野ゼミ生)

編集

撮影

ウラノ 丸田さんメイン

2024年1月中旬に岡山県から長崎県にやって来た丸田江里佳さん。

現在、長崎県東彼杵町にある株式会社ウラノに勤め、とても大きな“わ”がトレードマークの〈uminoわ〉で社員さんの弁当や一般の方向けのランチを日々愛情をこめて作っている。

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小さい頃から関わって来た農業

生まれも育ちも岡山県の丸田さん。大学では、農学部を専攻。農学部を選んだ理由は、丸田さんが育った環境によるものが大きいようだ。

ウラノ 丸田さん 仕事風景

「元々、農業や環境に興味があって…。ずっと小さい頃から祖父母が家で食べる野菜や果物を作ってくれていたので、旬の野菜は大体買わなくてもあるような環境で育ちました。

あとはアトピーを持っていたので、多分それがきっかけで母親も食べ物に気を使ってくれてたからかな。食べる物には結構関心があって、何になりたいとかは無かったけど農学部面白そうと思ったのがきっかけです」

幼いころから、農業が身近にあった丸田さん。季節の野菜に加え、祖父が元気だった頃はお米も収穫していたそうだ。毎日当たり前に収穫した野菜が食卓に並んでいて、野菜が大好きになったと話していた。

ウラノ 丸田さん 料理

そして大学3年生の頃から、トマトの成熟に関わる遺伝子について研究をしていた。

「目に見えない事を研究テーマとして取り扱っていました。どのタンパク質が作用して遺伝子を発現させるかみたいなことを調べるため、専用の機材を使って遺伝子の世界を見ていました。

白衣を着て実験室でやるような事をしていて、自分でもいまいち何やっているか途中で分からなくなっちゃって。その時、結果が目に見えるものに直結しない基礎研究は、自分には向いてないなと学びました(笑)」

大学生活は研究を主にしていて、自分が心の底から楽しいと思えることではなかったが、経験としては、とても良かったと語っていた。大学卒業後、食品の品質管理の仕事に就く際にも、実験器具を操作していた経験が役に立ったそうだ。

8ヶ月のアイルランド留学

「世界を見てみたいなと思って。昔から、何となく英語に興味があったし、違った価値観を学びたいなあと思っていたんです。日本から出ると日本の良さ、悪さが見えるから、一度は外で暮らしてみたいという気持ちもありました。でも大学に留学したいなどのそういう大きな目標とかは特に何も無かったです」

ウラノ 丸田さん 取材風景

前職を辞めた後、思い切って8ヶ月間のアイルランド留学を決めた丸田さん。

元々、何に対しても枠にはめて考えてしまう癖があり、先入観を持つことが多かった。だが、このアイルランド留学を機に自分の考えを改めた。

「語学学校には、フランスやドイツ、イタリアなど、ヨーロッパ諸国から来ている学生が沢山いました。一般的によく耳にする国民性などから、話をする前についその人の性格を想像してしまう自分がいたのですが、いろんな国の方に会ってみて、国でひとくくりにできないなって思ったんです。

それぞれの国ごとの先入観を持たないようにしたいなって学んだし、人には一人ひとりそれぞれの考え方があって、人と向き合って深く話をするのがすごく楽しいって感じました」

アイルランドには、ヨーロッパ以外にも南米アジアなどから来ている方も多く、様々なバックグラウンドの方と話すことができ、自分の価値観を広げていく事が出来た。

また、留学先の語学学校には日本人もクラスに2、3人いて、困った時にはお互いに助け合うことが出来て心強かったと話していた。

ウラノ 丸田さん 会話風景

「帰国してからもアイルランドで出会った友達とたまに連絡を取ることがあり、いい繋がりが出来ました」

自分の考えを改めて見つめ直すことが出来たアイルランド留学。多くのことを得られた大切な経験となった。

岡山県から長崎県へ

アイルランド留学後は、職業訓練校に入学した。通いながらも、農業に興味があり、どのような形態の農場があるのかを知るため、何ヵ所か農場へ足を運んでみた。

ウラノ 丸田さん たまご

その中に佐世保の農場があり、実際に訪れた際にその農場で働いていたアルバイトのある女性の方と知り合った。

「佐世保の農場に行った際に、ある1人の女性と出会いました。その方とはたった2、3時間草取りを一緒にしただけなんですけど、私が岡山に帰った後も時々メールで気にかけてくれて。

その方がこのウラノの方と知り合いで『社食プロジェクトの立ち上げメンバーを募集しているみたいですよ。興味があったらどうですか。』とメールを送ってくれたんです。農業にも食にも関われるプロジェクトだというので面白そうだなと思って」

ウラノ 丸田さん 取材風景

当時、地元岡山の農場にも足を運んでいたが、自分の腑に落ちる働き方が思い描けず途方に暮れていた。そんな時にこの話が来て、「好きなことに関われる!面白そうだし挑戦してみよう!」という前向きな気持ちで受けたと話していた。

はじめての県外暮らし。不安はなかったのだろうか。

「多分、一人も知り合いが居なかったら不安だったと思うけど、紹介してくれた方が東彼杵の人だったんです。だから不思議と不安はなくて。ここに来てからも色々な方と繋いでくれました

ウラノ 丸田さん お店の前で

この辺りに住んでいる方は皆さんとても親切で、そして明るくて。昨日も農家さんのところに用事があって行ったら『ご飯食べてく?』ってご飯食べさせてくれて(笑)。すごくフレンドリーな方が多いなと感じます」

新しい土地での生活であったが、周囲の方の温かさに救われたと笑顔で楽しそうにエピソードを話されていた。

無駄な経験はない

野菜作り、研究、海外留学などと様々な経験をした丸田さん。

取材の中で、私自身が悩んでいる就活のことについてお話させてもらった。私の相談に対して丸田さんはこう話してくれた。

ウラノ 丸田さん 仕事風景

「私は学生の時は消極的な方で。あの頃もっと積極的に動いて沢山の人と話をして価値観を広げてたら、また何か違ったのかなって思います。まあでも過去の話だから。今は今で(笑)。

その時の私はその時の最善の選択をして今があるわけで。振り返るとつい後悔してしまうこともあるけど、どれをとっても何かしら意味のある経験の一部。ほんとに無駄な経験はないと思うから。ちょっとでも興味がある事があれば、とりあえず自分の足で動いて実際に見てっていうのが1番いい。そうすればその時にベストな選択が出来るんじゃないかな」

と熱く話してくれた。何かに挑戦することに対して背中を押しているような温かいメッセージとしても捉えることが出来た。

そんな丸田さんが、最後に今挑戦したい事について話してくれた。土に触れる機会を持つこと、調理だけでなく食べ物を作ることにも興味があるそうだ。

ウラノ 丸田さん 野菜と土

「野菜を作るだけでなく、野菜が育つ土作りから携わりたいです。あと、スーパーで野菜を買う際にただ買うだけでなくて、この野菜はどこから来たのか、どのように育ってきたのかなど背景を考えるきっかけや場を設け、多くの人に伝えたいなとずっと思っています」

丸田さんは熱い思いと同時に自身の畑が欲しいと話してくれた。

岡山にいた頃は家庭菜園をしていて、家庭から出る生ごみから土を作っていたという丸田さん。でも今は、畑が無いため可燃ごみに捨てている。狭くてもいいからちょっと食べれる分だけの畑が欲しいなという気持ちと、季節によって草刈りに追われてしまうだろうなという葛藤を笑いながら語っていた。

ウラノ 丸田さん 仕事風景

これまでいろんなことに挑戦してきた丸田さん。

何かに挑戦することはもちろん勇気が必要である。しかし無駄な挑戦はなく、その先にいろいろな新しい繋がりや自身の成長が待っていると、インタビューを通して教えてもらった。

そんな丸田さんは、次は何に興味を持ち挑戦していくのだろう。とても目が離せない。