靴は、どこへ行くかを決める道具ではありません。しかし、どのような時間を歩くかを、静かに決めている存在でもあります。この春、倉敷市を拠点に靴づくりを行う LedenLeden(レーデンレーデン) が長崎県東彼杵町を訪れます。「旅の靴」をテーマに、夫婦二人で手がけてきた革靴の展示受注会を開催します。

三島翔さん、三島あゆみさん。ともに1984年生まれ。翔さんは地方新聞社の記者として、あゆみさんは地下足袋メーカーのインハウスデザイナーとして働いていました。2016年、二人は仕事を辞め、26カ国を巡る世界一周の旅に出ます。歩き、見て、話し、食べ、眠る。旅のなかで強く感じたのは、「旅ができる世界は平和だ」という、素朴な感覚だったといいます。帰国後に選んだのは、効率や規模を追い求める道ではありませんでした。家族の時間を大切にしながら、自分たちの手で、丁寧にものをつくること。2017年、二人は神戸の靴学校で製靴を学びます。2019年からは倉敷市児島地区の実家の廃工場跡に工房を構え、活動をスタートしました。

LedenLedenの靴は、デザインから製造までを二人で行っています。型紙づくり、裁断、縫製、底付け。工程を分業せず、一足一足と向き合います。主な製品は、「旅の靴」をテーマにした革のブーツです。足の形に近い“オブリークトゥ”を採用し、長時間歩いても負担が少ない設計にしています。パーツはできるだけ少なく。修理がしやすく、長く履き続けられる構造に。それは「丈夫な靴」をつくるためというより、「時間をともに過ごせる靴」であるための設計です。イベント出店時の販売方式としては、用意したサンプルモデルを履いていただいて、そちらを作るセミオーダー形式が基本となります。履く人と直接会い、話し、足を見て、その人に合った一足を仕立てていきます。

LedenLedenという名前は、スウェーデン北部にあるロングトレイル Kungsleden(王様の散歩道)に由来しています。特別な装備がなくても、時間をかければ歩くことができる道。ただ歩くことで、風景が変わり、思考がほどけていく。その「歩く」という感覚が、靴づくりの根底にあります。「旅の楽しさを靴にのせて」旅に最適な靴をつくることから始まりましたが、いまは“旅することの楽しさ”そのものを伝えたいと考えられています。
LedenLedenが定義する“旅の靴”は、特別な表現ではありません。
しかし、その一つひとつを守りながら形にすることに、誠実さがあります。

2022年には第一子が誕生し、現在は家族三人で暮らしと靴づくりを続けられています。この春、その営みが長崎県東彼杵町に届きます。会場は、海をのぞむ米倉庫を活用した空間、sorrisoriso千綿第三瀬戸米倉庫。
風が抜ける場所で、ゆっくりと靴に触れていただけます。旅の予定がある方も、しばらく遠くへ行っていない方も。足元から少しだけ気持ちが外へ向く。そんな時間になればと思います。旅は、遠くへ行くことだけではありません。いつもの道を、いつもより丁寧に歩くことも、また旅なのだと思います。

※受注生産のため、お渡しは後日となります。