こんにちは、ライターの山本と申します。このたび、地元佐世保について執筆した記事をまとめた本を自費制作しました。少しだけ、お付き合いください。
東彼杵から車で1時間ほどの場所にある佐世保。私の生まれ育ったまちですが、見事なまでに愛着はありませんでした。高校を卒業してアバヨ!と旅立ち、結局、社会人数年目でUターンすることに。
当時は30歳手前、「このままでいいのか」と悩む時期でした。なんとなく、ずっと避けてきた苦手なこと(文章を書くことと、地元)を克服してやろうと考えまして、地元フリーペーパーの編集記者になったんです。
しかしながら、企画力も、文章もいまひとつでした。上司にしこたま怒られました。けれど、“佐世保はこんなにも面白い!”と教わったんです。視界ががらりと変わりました。今まで「何もない」と思っていたのは「知らない」ことだったんだなと。
結婚を機に会社を辞めてもなお、佐世保への興味は尽きませんでした。現在は個人的に、地元の面白そうなことを片っ端から取材しWeb記事にして、全国に向けて「どうですか、おもしろいでしょ」と囁いています。
Web記事をわざわざ本にしようと思ったのは、これまでインターネットの海に放流してきた魚のような記事たちを集めたらどんな水槽ができるのか見たくなったからです。結果、大満足なものができました。
ゆるい大人の自由研究
「佐世保の自由研究」は、私、36歳の良い大人が真剣にやってみた自由研究です。
「佐世保豆乳」や「味カレー」といった佐世保の定番から、スーパー「エレナ」で流れる店内ソング、家族経営の小さな住建屋さんや駅の構内にあるたこ焼き屋さん、使われなくなったバスを使った公民館など、佐世保のまちのあちこちに散らばる不思議でおもしろいヒト・モノ・コトについての記事11本が収録されています。
関東のおもしろウェブメディア「デイリーポータルZ」および個人ブログにて公開されたものです。
佐世保の「大和製菓株式会社」が作っている駄菓子「味カレー」。全国的にも有名なお菓子ですが、私は恥ずかしながら、なぜこれだけ長く続いていて人気なのかを知りませんでした。
「佐世保豆乳」も「天津包子舘のじゃんぼ餃子」も、なんとなく名物だと知っていながら、その理由については考えもしなかったのです。
ネットで検索すれば、だいたいの情報は出てきます。読めば、知った気分にもなれます。
しかし実際に、関わっている人たちに会って話を聞いてみたい。彼らの声や表情、空気感で、その背後にあるストーリーを私なりに感じてみたいのです。
内容はとてもゆるく、あくまで私目線で書いています。基本情報をおさえつつも、「そんな情報いる?」ということまで盛り込んでいるので1記事あたりのボリュームは多いですが、スナック菓子のようにサクッと読めます。
人間臭さは宝物
「スーパーのエレナの店舗『なかよし村』のネーミングは、株式会社エレナの創業者・中村義治氏の名前をもじったもの」
「味カレーのパッケージは大中小ともデザインが違う。理由は不明。ちなみに、マスコットキャラクターのやまと君の出現時期や由来も不明」
「味カレー味のレトルトカレーを作ろうとしたらとんでもなく塩辛いものが出来たので、社長と常務取締役でとことん美味しさを追求したら、味カレーとは程遠くなったうえ原価が高くなった」
「佐世保豆乳のパッケージにある“佐世保”の文字は、『秘密のケンミンショー』で全国的に認知度が高まってきたのでラベリングしてみた」
本の中のエピソードを抜粋しました。とても人間臭いんだけど、全部いまを形作っているもの。このようなお話を聞いた瞬間は宝物を見つけたかのように嬉しくなります。
ちょっと距離を感じていたものが、ぐぐっと身近になった感覚。抱いていた地元のイメージがどんどん変わっていくことは、ライター活動におけるやりがいのひとつです。
記事を読んで「面白い」と共感してくれる人がいたら、もっと嬉しい。
そして、この本をきっかけに、SNSでも、本でも音楽でも絵でも何でも良いのですが、もっといろんな人からの発信が増えて、地元の情報がもっと分厚くなると良いなと思います。
続刊も予定しています
「佐世保の自由研究」は、今後も続刊を予定しています。
vol.2では、国の史跡でもある福井洞窟をファッショニスタのお姑さんと一緒に巡った話や、12月の超オフシーズンの宇久島に家族旅行に行った話、三川内焼や波佐見、有田焼にコンビニフードを盛り付けてみた話や平戸和牛のメガ盛り丼をくるくる回転させてみた話などを収録予定です。
一体どこに向かっていくのか自分でも分かりませんが、一緒におもしろがってくれませんか。