伝統の綿織物『久留米絣』をマスクの生地に活用。
ものづくりの職人がこだわり抜いた匠の品
昨今は、ウイルス感染対策としてマスクが必須の世の中になりつつある。『マスク不着用の方お断り』。入店においてこういった注意書きを掲げる店も出てきた。世間の空気はピリピリと冷たく張り詰めている。
こんな状況、だからこそ心にゆとりを持たせたいと思う。マスクの性能にも気を配りながら、なおかつ御洒落を楽しむ。そんな気持ちに答えてくれたのが、東彼杵町の入江京呉服店だ。どうやら伝統織物を取り込んだ素敵マスクを生産しているらしい。
実際にマスク作りに使われている生地を見せてもらった。布製マスクは、生地を数枚重ねて縫い合わせて作られるが、その生地には絹よりも綿素材や麻といったものが好まれる。何度洗っても縮むことがなく、長く使えるからだ。
まず、直接口に触れる裏側の生地には『新モス』が使われている。
モスとはモスリンの略称で、木綿や羊毛などの梳毛糸を平織りにした薄地の織物の総称をいう。ガーゼよりも目が細かく、フィルターの役割を果たす裏地にはもってこいの素材だ。他にも、布巾など多くの日用品に使われる晒(さらし)も裏生地として利用している。
そして、布マスクの顔となる、表面の素材に使われている素材が日本伝統の綿織物である久留米絣だ。
日本伝統の織物の技法である絣(かすり)によってマスクに美しい文様が施されている。
入江秀俊社長「マスク作りを始めるにあたり、店にある物で綿素材は何かと探して出てきたのが風呂敷と久留米絣でした。特に、久留米絣は妻がそもそも絣を使ったモンペを作ろうと考えており、すでに生地を集めていたのでそれを活用しました」
第二次世界大戦時、日本人の女性たちは自分たちの着物をモンペへと生まれ返させ活用していた。そして、現在はモンペではなくマスクへ。時代の変遷とともに、物も捨てられることなくその姿を変えていく。資源を無駄にしない、ものづくりのプロフェッショナルたちの匠の技と姿勢がそこにはある。
マスクが完成した後は、店独自の手法でマスクへの除菌作業が行われる。
オゾンの力で菌やウイルス、臭いの原因成分を強力分解する小型オゾン除去・消臭機『バクテクターO3』。全国の救急車にも搭載されているという高性能の機材を導入し、袋詰めした完成のマスクに浴びせることによって最終の仕上げを行う。付着するウイルスを完全に除去した上で販売している徹底ぶりだ。
「結局これしかないんですよね、できることは」と氏は笑う。しかし、できることをこだわりを持ち徹底してやるというののいかに難しいことか。
入江「作れる枚数には限りがあって、現在は1日に160枚くらいが限界。今のところ全国展開は厳しいでしょうが、できるところから進めていきたいですね。今後は、町役場と話をしてふるさと納税の返礼品でも扱ってもらえるかどうか検討していく予定です」
作り手の想いの詰まった久留米絣のマスクを試しに付けてみた。優しい肌触りにほんのりと温もりが伝わる。調整も効いてピッタリとフィット。鏡に映った顔を見て自然と顔がホッコリほころぶ。ピリピリとこわばった頬と心を優しく包んでくれたのだった。
ひと、みせについての詳細は以下の記事をご覧ください。
また、くじらの髭ストアより入江京呉服店の特性マスクの購入が可能です。