見えない「縁」を感じる〈「わたし」と「わたしたち」のことばART×旅するムサビプロジェクトin佐世保〉ワークショップレポート【武蔵野大学 佐野自主ゼミ生共著記事】

取材・文

  • 大田寧音(武蔵野大学 佐野自主ゼミ生)

    大田寧音(武蔵野大学 佐野自主ゼミ生)

編集

企画

  • 武蔵野大学 佐野香織

    武蔵野大学 佐野香織

8月。武蔵野美術大学の前野色葉は、長崎県佐世保市を訪れていた。彼女の目的は観光でも帰省でもない。ここ、佐世保の土地でワークショップを行うためである。

『ながさきピース文化祭2025 みんなのさせぼフェス』の中で、ながさきWell-beingミライ研究所が企画・運営するプロジェクト『「わたし」と「わたしたち」のことばART×旅するムサビプロジェクト in 佐世保』として、前野はポスターアートと参加型ワークショップを行った。

プロジェクトの一環として、8月に前野はたくさんの佐世保市民と交流をした。

▼ポスターアートプロジェクトについてはこちらの記事から

※四ヶ町商店街アーケードくっけん広場でのポスターアート展示、アート作品展示は終了しています。
  アルカスSASEBO, 佐世保市役所高砂駐車場連絡通路においてポスターアート展示をしています。

佐世保の地で、前野は何を思ってどんな活動をしているのか。
その活動を追って、武蔵野大学の学生である私達「ライター武蔵野」は前野の活動を取材した。

本ワークショップは、カラフルに染められた布を参加者が被っていく、というものだ。布には複数のサイズが異なる穴が空いており、一人で着ることもでき、逆にいくつもの布を重ねて被ることで、参加者同士がつながっていくこともできる。

今回我々は、「ワークショップを取材する」という立場で現場に立ち会ったが、この視点だからこそ見えてきたものがあった。

見て触れて楽しむアート。子どもたちの反応は……

まずはじめに訪れたのは、佐世保市内にある、地域と学生をつなぐコミュニティスペース「ソーシャル・ディスコ On℃(オンド)」で開催されている、こども食堂「親子いこいの広場 もくもく」。中に入ってみると、たくさんの子どもたちが元気よく出迎えてくれた。

ワークショップ準備のために、ムサビ生たちが色とりどりに染められた布を机の上に広げると、興味津々といったふうに子どもたちが集まっていた。見たことのない形をした、何に使うかわからない布に触れ、子どもたちの独特な語彙力でその感触を言葉にする。

実際にワークショップを行ってみると、大人と子供の混ざった午前の回では、身長による高低差が顕著に見られた。被る人によって毎回見せる姿を変えるのが、この布とワークショップの面白いところだ。

しかし、布に興味を示す子どもたちがいる一方で、突然現れた知らない人たちに戸惑い、困惑する子どももいた。子どもたちからしてみれば私達はまさに、自分たちの場所に突然やってきた、「知らない国」から来た知らない人たちだったのだ。

「知らない場所から来た人に困惑する」
このワークショップのテーマの一つである共生社会とも重なる部分がある。

ワークショップ後は一緒に昼食を頂いた。食事中にはワークショップ中に撮影された写真がプロジェクターによって壁に映し出され、自分を探す子や、友達が写っていることを教える子など、布を被るだけでなく、被り終わったその後もワークショップを楽しんでいるように見えた。

短い時間ではあったものの、子どもたちのエネルギーをひしひしと感じることができた時間だった。

今度は大人が主役。午前とは違う様子を見せたワークショップ

午後からは佐世保市白南風町の交流拠点「コミンカ」でワークショップを開催予定だったが、夕方急遽開催スペースを変更し、古民家裏の屋外スペースを整えてスタート。この時間帯は、近所の方や日本語学校の生徒など、午前と比べて多様な年齢層の参加者たちが集まった。

午前中とは異なり、屋外で行われたワークショップは、この場所だからこそ見ることができる姿を見せてくれた。夕日に照らされきらきらと光る布は、一回目のワークショップで使用した布とは全く違う布のような印象を受ける。

午前と午後のワークショップの違いは、環境光による布の変化だけではなかった。

体の小さい子どもたちがメインだった午前では気づくことができなかったが、それぞれの布の大きさには違いがあり、思わぬ相手との距離感に驚いている様子も見られた。参加しようと意欲的な姿勢であっても、どうしても生まれてしまう苦しみ、というのも、共生と重なる部分があるように思う。

ワークショップを俯瞰して見えてきたもの

参加している、していないで善悪を語るわけではない。むしろ、布に触れないという選択肢を選ぶという形でワークショップに参加しているとも考えられないだろうか。

メインのワークだけがワークショップの内容なのではなく、ワークショップ会場全体で起きている反応すべてがワークショップの意図するところなのだ。

周囲で見ているだけの人、積極的に参加していった人、誘われたから参加した人、参加に抵抗があったがやってみたら楽しかった人、参加しなかった人……。そのすべてのリアクションがこのワークショップをきっかけに多文化共生について考えるにあたって価値あるもののように感じた。

ただ「きれい」「楽しい」ということだけで終わらないメッセージ性というものが、このワークショップには含まれているように思う。

いかがだっただろうか。

前述したが、『縁』は決して綺麗で素敵なものという側面だけでは終われない。
綺麗で素敵なものであるためにこそ、私たちはこの『縁』、そして『つながり』をもう一度実感する必要がある。

▼その他のアーティストと展示作品紹介についてはこちらの記事から

※四ヶ町商店街アーケードくっけん広場でのポスターアート展示、アート作品展示は終了しています。
  アルカスSASEBO, 佐世保市役所高砂駐車場連絡通路においてポスターアート展示をしています。


「わたし」と「わたしたち」のことばART×旅するムサビプロジェクト in 佐世保

本企画は、「第40回国民文化祭、第25回全国障害者芸術・文化祭 ながさきピース文化祭2025 みんなのさせぼフェス」において、ながさきWell-beingミライ研究所が企画・運営するプロジェクト〈「わたし」と「わたしたち」のことばART×旅するムサビプロジェクト in 佐世保〉として、ポスターアートと参加型ワークショップを行いました。

https://bunkasai2025.nagasaki-tabinet.com/events/5968

主催:文化庁 / 厚生労働省 / 長崎県 / 第40回国民文化祭 / 第25回全国障害者芸術・文化祭長崎県実行委員会 / 佐世保市 / 第40回国民文化祭 / 第25回全国障害者芸術・文化祭佐世保市実行委員会

企画・運営:ながさきWell-being ミライ研究所

協力:武蔵野美術大学 / 西海みずき信用組合 / させぼ四ヶ町商店街協同組合 / させぼ四ヶ町商店街 / くっけん広場