「今期で2期目の今年は、台風や猛暑に耐え抜いた綿花から種が採れて、種を蒔けばまた芽が出て育ち始める。千綿の綿の種をつなげられたことが一番うれしい」
そう話すのは、このプロジェクトの中心を担っているミドリブの下野惠美子さんです。
第二期もたくさんのプロジェクトメンバーにより、工房 灯 (こうぼう あかり)(新井孝太郎氏)製の優しさが詰まった綿繰り機で種が採られ、ゆっくりじっくりと確実に綿から糸へと紡がれています。
プロジェクトへの思いを下野惠美子さんに聞いてみました。
(聞き手:くじらの髭 森 一峻・答え手:下野恵美子さん )
これまでを振り返っていかがですか?
下野「この活動はまだ社会的に認められやすい成果(報酬や対価、名声など)がありません。みんなそれぞれに暮らしがあり、仕事がある中で、草払いや収穫、種採りなどに時間や労力をあてる余裕はないと思います。だから、どうしても協力をお願いすることをためらってしまいます。誘って断られるのも悲しいので(笑)。それでも、一人でできることは一人でやろうという気持ちでいると、みんなが積極的に作業をしてくれたり、「誘ってよ〜」とおやつを持って駆けつけてくれることが多々あります。正直なところ人手はどうにか回っている感じですが、無理なくできる範囲で、楽しみながら関わってもらうことが理想ですね。なかなか参加ができなくても、「最近どう?」「協力できなくてごめんね」などと、常に気にかけてもらえることがうれしいです。綿花はみんなの優しさと愛で溢れながらすくすく育っています。そして、私も(笑)」
プロジェクトをすすめる原動力はなんですか?
下野「私は自然派ではなく、オーガニックなことに意欲的に取り組んできた方ではありません。化粧品や洋服、お酒や食べ物にしても体にも環境にも良くない物も好きだから(笑)。そんな私ですが、ミドリブとして千綿エリアで活動していく中で、千綿でかつて紡績が行われていたことを知り、これはぜひ私たちが携わりたいと思いました。矛盾しているかもしれませんが、せっかくやるならオーガニックでと。種から育てた綿を紡ぎ、糸を織り、土に還るような服などができれば循環型で息の長いプロジェクトになるはずです。第二期もたくさんの力添えをいただき、畑にはたくさんの綿花が弾けました。やりたいと思って始めたこと、やってよかったです。初めてすることって、ひとつひとつに感動があるじゃないですか。特に、自然や植物との関わり合いってその感動の大きさが人工物を超えてる気がします。栽培には人との関わり合いもきちんとあって。ふとした時にこのプロジェクトをやっていてよかったな、幸せだなぁってしみじみ思います。谷川俊太郎さんの『生きる』的な。私の原動力は生きてる感を味わえるからかもしれないですね」
そんなお話をしつつ、来年、何やら動き始める予感です。
続く。