佐世保市広田町生まれの浦綾乃さん。人をサポートする日々研究所株式会社のアシスタントをしている。
今年の4月に入社したばかりで今は自分にできることは何かないかと模索しており、日々地域の方のことを思い、地域の魅力を発信できるように試行錯誤している。地域愛が溢れる浦さんは、一体どのようなことに取り組んでいるのだろうか。
地域の魅力を発信
小・中学校は広田町で、高校は地元から少し離れた川棚高校に進学した。高校卒業後は公務員専門学校に通い、川棚町役場に就職。5年間役場で働いていたものの、地域の魅力を発信するにはもっと違うアプローチの仕方があるのではないかと思い、日々研究所への転職を決意する。
役場ではどのような仕事をしていたのか聞いてみた。
「産業振興課の商工観光係で5年間働いていました。事業者の方や観光客の方から悩み事や相談を受けたりしてその方たちの気持ちを知ることができました」
浦さんは役場で地域の方たちの“思い”を直接聞く仕事をしていた。どちらの立場の意見も知ることができたのは大きかったと話す、明るい性格の浦さん。浦さんに相談すれば、地域もより明るくなり、活気が溢れる町になるのではないかと考える人もたくさんいたであろう。インタビューをしていく内に私自身も浦さんに相談したい、浦さんと話したい気持ちが徐々に大きくなった。
直接人と関わりながら仕事をしていた浦さん。そんな人たちの期待に応えたい。その気持ちが大きく、仕事を熱心に取り組んでいた。観光の仕事として、SNSを活用して地域の魅力を発信していた。
「川棚町のインスタグラムを担当していたんですが、自分のこだわりが凄すぎて……(笑)。こんなにこだわって作成しても伝わらないと意味が無いなと思うようになりました」
一つのことに没頭して取り組み、自分なりのこだわりを持つ浦さん。持ち前の性格をもっと違う方向で引き出せるのではないかと考えた。「事業者さん、町内のお店で働いている人と関わっていけばいく程、魅力的な人たちばかりで好きなんです」と嬉しそうに語る。何か他に人を輝かせられるアプローチの仕方はないのか。
そのことを以前からの顔見知りだった森さんに相談したところ、「こっちで働く?」と誘われ、日々研究所への転職を決意した。森さんとは客としてSorrisorisoに頻繁に通っていた時に顔見知りになったそうだ。
何よりも“ひと”が好き
地域が大好きな浦さん。私は、日頃から地域がより良くなるために地域活性化について考え仕事をしているのだろう、と思っていた。しかし、浦さんの口からは予想外な言葉が出てきた。
「正直、地域活性化について考えたことはあまりないです。自分がやりたいことをやっていたら地域活性化に繋がっていただけです。私は地域というより“ひと”が好きなので、好きな人たちが輝いて楽しんで取り組んでいることを通して、地域が明るくなればと願っています」
地域活性化というと、地域の経済や社会、文化などの動きを活発化させることと思う人がたくさんいるだろう。私自身もそう思っていたが、浦さんはそのことについては深く考えていなかった。“やりたいことをしていただけ”と話す。そんな浦さんだからこそ、“ひと”を第一に考え、地域活性化に繋げることができるのだろう。
“ひと”が好きな浦さん。浦さんを動かす原動力は“ひと”が自分に勇気を与えてくれる存在だからである。
自分自身に厳しいストイックな一面
好きな人たち、困っている人たちの力になりたいと願っている浦さんには自分自身に厳しい一面があった。
「中学の時テニスが佐世保で一番強い学校で、高校でもめっちゃやる気で入ったんですけど、自分の意向に沿わなかったので辞めました。その時に高校で一番強い部活はどこかなと思って、それが陸上部の長距離とフィールドホッケーだったんですよ。でも、私が女性の平均よりも身長が高いから、風の抵抗を受けて多分速くならないだろうと思って、ホッケー部にしました」
ホッケー部は、アイスホッケーの陸上版で女子は川棚にしかない部活動である。ホッケーのジャージを着ているだけでも地域の方から励ましの言葉をかけてもらい、元気づけてくれた。この地域のために何かしたいと思ったきっかけにもなった。
浦さんから話を聞いていると、しきりに“兄”という言葉が出てきた。そこでお兄さんとのエピソードも伺った。
「高校もお兄ちゃんが川棚高校だったので川棚に進学しました。なんとなくお兄ちゃんに負けたくないみたいな気持ちで一人で競ってて勝手にライバル意識を持ってました」
兄が頑張ったことより自分はもっと頑張ろうと高めてくれる。兄はそんな存在だった。役場の仕事に就こうとしたのも兄の影響である。競争心が強く、兄には負けたくないという気持ちがある浦さん。しかしライバル意識を持っていたのは自分だけだったという。負けず嫌いで自分自身に厳しい一面がある浦さんの背景には、しっかりと目標となるモデルを捉え、徹底的に真似したり、自分のモチベーションとなる兄の存在があったからである。
環境を変えることの重要性
役場といえば、公務員であり、安定的な仕事である。一生役場で働いておけばいいのに、と言われることが多かったそうだ。
「役場を辞めてから『よく辞めれたな、安定な場所なのに』みたいなことを言われるんですけど、高校の時に部活を変えた経験があったおかげで環境を変えることに抵抗がなかったんです」
環境を変えなければ、自分自身も変わらない。高校での出来事があったからこそ、今の仕事に就くことができたと語る。環境を変えることには勇気がいる。その一歩を踏み出すことができれば、人生が大きく変わるかもしれない。変化を起こさずに一本道を歩くほうが楽かもしれない。しかし寄り道した先での出会いも大事であることを認識させてくれた。
最後に浦さんは自分が目指している将来像について語った。
「通常業務で忙しくてやりたいことに手が出せない人のサポートをしたり、進む道が分からない人に手を差し伸べたりなど、一緒に人を輝かせられる存在になりたいです」
“人を輝かせられる存在になりたい“。そうして今は日々研究所で常に地域の方のことを思い、 ” 仕事に取り組んでいる。現在浦さんもチームの一環として進んでいる企画がある。人材育成の課題を抱える企業の役に立っていることを実感しており、部活動に力を入れていた浦さんは、部活にも取り入れることはできないかと考えているそうだ。浦さんらしい考えであると思った。
環境を変えることに恐れることはないと教えてくれた浦さん。地域の方のことを思い、“ひと”を輝かせられる環境づくりをしたいと思う気持ちは人一倍である。これから浦さんが川棚町にどんな新しい風を吹かせてくれるのか、とても楽しみだ。