長崎の結節点・大村から、都市と地方の関係をもっとなめらかに。cotoがつなぐヒト・モノ・コト。

取材

写真(3枚目)

公開取材動画配信

幼少期に都市と地方での生活を経験したことから、地域づくりへの関心を膨らませていった谷本雅章(まさあき)さん。

大学での研究活動やアフリカ・ウガンダでのフィールドワーク、空間デザイン会社でのプロジェクトマネジメント職やコワーキングスペースの運営など。さまざまな体験を経てたどり着いたのは、長崎県大村市という、縁もゆかりもない土地でした。

このまちに谷本さんがやってきたのは、2021年の4月。大村湾商事代表・長尾さんの誘いで、商店街のアーケード内にコワーキングスペース「coto」を立ち上げ、その運営を任されることに。

(この記事は、2022/12/2に開催された公開取材と、その後の追加取材をもとに編集しています。)

公開取材の様子はこちら。

谷本さんの半生を追った前半の記事はこちら

「そもそも大村湾商事はどんな会社かというと、大村湾エリアのヒト・モノ・コトの魅力を掘り起こして発信する地域商社です。長崎には、地元に特別な思い入れをもって取り組みをされている方が各エリアにすでにたくさんいて。だから、地域に深く入り込んでいって何かやるのは、ぼくらのゴールじゃないと捉えています」

「よそ者だからこそできることは何か。“外となかをつないで、新しい化学反応を生み出していきたい”っていうのが大きな方向性ですね。コワーキングスペースは、そのための拠点として運営しています」

cotoのある大村市は、人口10万人弱の地方都市。長崎空港や西九州新幹線の駅があり、福岡方面からは九州横断自動車道がのびていて、県外へのアクセスがいい。

また、県央に位置しているので、県内の各エリアとも行き来しやすい。

人口減少が進む長崎県のなかで、50年連続で人口増が続いているのだとか。

「ぼくも移住してみて、心から住みやすくていいまちだなと思っていて。市街地がコンパクトにまとまっていて、海にも山にも近い。身体感覚としてまち全体を捉えられる気持ちよさがあるまちです」

「ここを長崎のハブとして、訪れた人を各エリアのおもしろい人、場所につなげていきたいんです。これから必要なのは、いろんな人とパートナーシップを組みながら、そのつながりを加速させていくことなんじゃないかなと思っています」

長崎のハブとして、県内外の人のつながりを加速させていく。

その拠点となるcotoはアーケードに面した2階建ての空間で、1階にカフェとコワーキングスペース、2階にフォンブースやシェアオフィスを備えている。

カフェで注文をすれば、コワーキングスペースで作業することができる。もちろん、カフェのみの利用もできるので、気軽に誰でも足を運べる場になっている。

とはいえ、ただ場を開いただけでは、新しいことは巻き起こっていかない。

そもそも地方では、コワーキングスペースという存在自体が珍しい。オープンしてから聞こえてきたのは、「アーケードのなかでこの空間は異質で、なかに入りづらい」という声だった。

「まずはいろんな人に来てもらえるように、ポップアップやトークイベントを企画しています。たとえば、大村の移住者交流会で仲良くなったきゅうり農家さんに販売会をやってもらったんですけど、その方はお子さんが3人いらっしゃって。お母さんネットワークで情報を広めてくれて、はじめてcotoに来てくださる方もたくさんいらっしゃいました」

「そうやっていろんなところから縁をもらいながら、巻き込んでいって、また広げてもらって。その積み重ねなんだなっていうことを、これまでいろいろやりながら実感しているところです」

cotoの運営以外にも、長崎出身の学生の地元就職やUIターンのきっかけづくりに、行政とともに取り組んだり。3ヶ月に一度、都市部で働く人たちを集めてワーケーションツアーを企画したり。

「働くこと」や「仕事」を起点に、さまざまなことに力を注いでいる。

「直近で言うと、長崎はビワが有名で。そのビワの葉っぱを使ったビワ茶をペットボトル飲料として商品化した会社さんが大村にあるんです。もともとは魚の養殖用の餌なんかをつくっていた、全然別業態の会社さんなんですけど」

「そのビワ茶を、ワーケーションツアーの懇親会で参加者のみなさんにお配りして、飲んでもらいました。外から来た人のフィードバックがもらえたことで、その企業さんも喜んでくれて。そんなふうに、自分たちが介在することによって地元企業さんの事業がドライブしていったりだとか、外の人と関わるきっかけができたり。大きく言えば、地域経済への貢献に少しでもつながったらいいなと思っています」

さらに、cotoにも2つの大きな変化が最近あった。

1つは、カフェスペースの運営者が変わったこと。大村市出身の2人が共同代表を務める「Layers coffee」というチームが、2022年末からcotoでおいしいコーヒーを淹れている。

熊本にもお店を構えていて、2人は大村と熊本を行ったり来たりしながらお店を運営しているそう。

「2人ともぼくと同年代で。ロースターの山浦くんがテイスティングの全国大会で3位に入賞していたりと、コーヒーに強いこだわりのあるチームです。とはいえ、ただコーヒーを極めていくだけじゃなくて、コーヒーを通じていろんなコミュニケーションがとれる場所にしていきたい、生まれ育った大村っていうまちに恩返しがしたいとも話してくれていて。頼もしい仲間が増えました」

もう1つの変化は、新しいコワーキングスペースが2023年春にオープンしたこと。

場所はなんと、長崎空港のなかだとか。

「空港を管理している長崎空港ビルディング株式会社さんのオフィス移転に伴って、ぼくらがその場所でコワーキングを開くことになりました。ビジネス利用のニーズがあるのではないかっていうことと、空港はいろんな人が訪れるので、人を混ざり合わせたり、つなげたりしたいぼくらにとっても、おもしろいチャレンジになるんじゃないかなと」

そんな変化のなかで、谷本さん自身の役割や考え方も少しずつ変わってきているという。

「ぼくがやっている仕事は、いわゆる『コミュニティマネージャー』だと思います。でも正直、今の自分にはあまりフィットしていなくて」

コミュニティマネージャーという肩書きに、違和感がある?

「コミュニティって、自分がつくれるものでも、マネジメントできるものでもないなと。何かいい表現はないかなと思って、最近は友だちが名乗っていたのを真似して、『関係案内人』と名乗ることが多いですかね」

ちょっとやわらかな印象になりますね。谷本さんがやっていることを見ても、そのほうがしっくりくるかも。

「自分で何かことを起こすというよりも、何かやりたい人の後押しをしたり、活躍できる場を用意したりするほうが、自分には向いていると思っていて。ただ、第三者的にコーディネートするのではなくて、自分も地域に飛び込みながら、いろんな人たちと関係性を築いていくことが大切だと思うんです」

この仕事を通じて、谷本さんが目指していることってどういうことなんでしょう?

「個人的には、都市と地方の関係のアップデートに興味があります。今後の日本社会での働き方や暮らし方、大きな話をすると資本主義経済からの変容を考えるうえで、都市と地方の、もっとうまい補完関係がつくれるんじゃないか。それをどうすれば具現化できるだろうか、っていうことを考えていて」

「都市部にいる人たちが、もっと地方っていうものをうまく生活のなかに取り入れたりだとか、逆もしかりなんだけれども、それによって人生が豊かになったりとか。そうなっていけばいいな、みたいなことを思っています。すごく抽象的ですけど」

地方創生や関係人口創出、コロナ禍を通じて一気に広まったリモートワークやワーケーションなど。

言葉ができて、いろんなモデルケースが生まれることで、それまで明確化されていなかった働き方や暮らし方を誰もが想像しやすくなる。

一方で、言葉に引っ張られることで、イメージが固定化されてしまうこともある。本当はいろんな可能性があるのに、流行り言葉に乗っかるようにして大勢の人が同じ動きをはじめると、なんだかつまらなくなってくる。

名前もつかないような、さまざまな関係性のグラデーションが育まれていくように。地域のヒト・モノ・コトを案内し、関係を結んでいく。

谷本さんがやろうとしているのは、そういうことなのかもしれない。

「都市と地方の関係性をもっとなめらかにしたいんです。働き方も暮らし方も、自由になってきているはずで。もっといろいろできると思うんですよね」

10年後、20年後、どんな風景がこのまちに広がっていくのか。cotoがあり、そこに谷本さんがいることでつくられていく未来の風景を、一緒に見てみたいと思いました。

「ひと」についての記事は、以下をご覧ください。

cotoのHPはこちら→ https://coto-hub.com/