くるくるくるくる…前回の「addiction」に続き、今年も謎多きアーティストshinが手がける個展 ーUZー

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ご来場いただいた皆さま、ありがとうございました。


「UZ」
『一つ一つはただ僕が好きで描いているだけなんですけど、全部繋がってるんじゃないかな実は。何かに向かって繋がっているんじゃないかな。それが渦なんじゃないかなっていうタイトルです。』

渦の中心には何があるのか。前回の個展から約1年。驚くことにこの1年で大きな渦に吸い込まれ始めているshinさん。なんと東彼杵町へ移住を決め準備が着々と進んでいると言う。何が彼をこの地へ引き寄せたのか。
この辺が気になってUZの話が入ってこないので…まずはここから。

ー「縁です。縁です(笑)タイミングと自分の条件に一番適していたということですかね。土地柄好きだったんですよね。通るだけだったですけど、海があって山があってその合間に民家が密集するでもなくある程度の間隔を保って、古いものと最近ではこういう新しいものも建ってきて。これから来そうな感じがしました。これからなんじゃないか、この町は。という期待を持って。じゃないと住もうとは思わないです。」

我々もこの町も今やっと始まったところに新たな仲間として加わってくれたこと。またひとつ足りないピースが埋まっていく気がしている。

謎多きアーティスト shin
addiction(中毒)の先のUZ。

addiction」中毒という強めのメッセージながら反響がとても大きかった前回。shinさん自身も手応えを感じたという。
ー「コロナの時期で行動制限もあるなか正直来場者数などは期待していなかったです。でも作品を販売するとなると瞬く間に売れちゃってあっという間に驚きというか。アートに対する人の感覚じゃないですけど、興味のある人たちが集まってきている感じがあるというか。Sorrisorisoの特異性がうまく噛み合って後押ししてくれた部分もあり伝わったんじゃないかと。だからこの場でまたやりたいという気持ちになりました。」

前回は教育委員会に全額寄付していただきましたが…

ー「もちろん今回もです」(笑)
ー「今回は前回を上回りたいと思って頑張ってグッズも作ったので、この分も絵と合わせて全て寄付します。」

なぜそこまでするのか。教育、文化とつながるのかもしれないが。

ー「ただ作品展をして終わりというのは普通の話で。販売してそれを対価として受け取るのも当然で。ただ僕はそれでいいのかと。アーティストとして職業としている方は当然なんですが、生活の主体が別にあって、収入はきちんとある中で、これを自分の私利私欲のために使ってそれになんの価値があるのか僕が描いた絵が自身の洋服や靴に変わったとして、そんなもんなのかと、僕の絵の価値は。なんか小さいなと。そうではなく、もっと上の表現の先にあるもっと大きな意義みたいなものがあるのではないか。それは何かと考えた時に必要なところにそのお金が使われることで絵の価値が下がらないというか。僕なりの正しい使い方とはそういうことなのかと。」

ー「東彼杵町の教育にと考えたのは、寄付の形にも色々あると思うんですけど。”この町で作品展をして、この町の人たちに喜んでもらって、それがこの町に還元される”という自分が一番やりたかった事と自分の気持ちにしっくりきました。」

評価されない価値っていうところに重きを置くshinさんの思いが感じられる。「ここまでを最終的な表現として作品展としたい」shinさんは自身の行動がさらにその先に何か未来につながっていくのではないか。さらに意味あることとしてつながっていくことを期待しているという。



タイトル「UZ」について

中毒の先に何があるのか。shinさんの新たな挑戦が始まっていた。
今回は自身にとって初めてテーマを決めて作品に取り掛かったという。

ー「絵のイメージは頭の中にありました。渦とは何か。引力、逃れることのできない流れとか、引き寄せる力とか。最近絵を描いていてそういう目に見えない引力を感じます。
昔はただ頭にあるイメージを形にするだけで、それが楽しくて人に見てもらいたいという単純な思いでやっていた事が、いつの間にか自分自身が虜になっている。表現をすることにパワーを感じる。僕はなぜ絵を描いているんだろうと。
特別なきっかけがあったわけでもなく、突然2年程前から描き始めたんです。そこには見えない何かに引き寄せられる感覚があって。何かに向かって無我夢中でいろんな作品を作っているのではないかと。渦の中心に何があるのか。探究したいって気持ちが今すごく強くて。」

ー「渦は中心までの一つの流れで、全部繋がっていて。一人で中心まで辿り着くのは無理なのではないか。流れに弾かれたり、障害物にぶつかったり。中心に行くほどに流れは早くなるし、誰もが流れに乗るだけで中心までたどり着けるかといえばそれは違うのではないかと。

東彼杵町の渦にアーティストshinというヒトが吸い込まれて、新たな渦が巻き起こりつつあるようですが(笑)

ー「そうですね(笑)僕一人の小さな渦がいろんな人を巻き込んで大きな渦となって中心に向かって進んでいく。そういう未来もあるのではないかと予感しています。
一つ一つはただ僕が好きで描いているだけなんですけど、全部繋がってるんじゃないかな実は。何かに向かって繋がっているんじゃないかな。それがUZなんじゃないかなっていうタイトルです。」



新たな表現への挑戦

テーマに沿って描き方も変えているというが、今回変化を求めさらに変わり続けたいという思いから、これまでの線画ベースだけでなく、色を前面に出したカラフルなポストカード風、アーティストシリーズや、今一番力を入れているという貼り絵、線画と貼り絵のミックスなど少なく見ても4つ表現が加わったのだという。

ー「たくさんの表現方法でこの会場を飾られて、それを見るお客さんも飽きずに楽しめるのではないかと。
どうしてもひとりの人の作品展だと同じ系統が並んだりしがちだと思うんですけど。僕は表現の途中ではありますが、試行錯誤しながらもその時の感情に一番近い表現方法で作ってきたのでフレッシュというか。その時その時の心情がより如実に作品に表れていて、観ている方々にワクワクしたりする気持ちも伝わればいいと思います。」

「夜の渦に吸い込まれる くるくるくるくる 孤独な光に向かって」 については。

ー「渦を描こうと思った時にバッと頭の中に浮かんだ映像。夜空を渦で表現してみようと。
五万とある夜空を僕なりに表現しようと思った時に、渦とピントが合ったんです。迷いは無かった。

頭に『UZ』というタイトルで描こうと思った時にはもう構図は頭に浮かんでいました。
普段は何かを参考にして描く事も少なくはないが、今回は頭に浮かんだ心のままに作った作品で、出来た時に一番自分が感動したというか。」


光と影の正体

shinさんの作品の不思議なところは、作品自体あまり明るさは表現していないようだが、なぜか前向きで明るい印象を受けるんです。
一見深い闇の部分が表現されているのかと思いきや、とても前向きな作品だと感じるのはなぜなのか。

ー「自分の人間性そのものだと思っていて、僕が今まで歩んできた人生。僕は自分自身をマイノリティだと自負しています。社会生活では周りに自分のような活動をしている人はいないし、アート活動にしてもほとんどの人がある程度の過程を経て表現しているはずです。つまり僕の場合、社会人としても異質だし、表現者としても異質なわけです。
でも僕は、周りの人と違うということを楽しんでいる。マイノリティでありたい。
みんなと同じふうに考えても面白くないと。僕は僕で当たり前。その当たり前を楽しんでいるし、望んでいることで、あえて孤独な光へ向かってっていう表現をした。

僕は決して世界の良い面だけを見て描いているのではなく、辛いこと、悲しみ、憎しみ、心にある想い全部を使って描いています。だから一つの絵の中に光も影も感じられるのでは。」

ー「実はタイトルもそんなに深く考えてるわけではなく、自然と出てきた言葉で。
後付けで色々考えながら、なんでこんなタイトルにしたのかとも思ったんですよね。当然タイトルについては絶対聞かれると思ってたので(笑)タイトルに込められたメッセージとか。
でもこれがこの言葉がしっくりきたんですよね。この絵に対してこの言葉が一番しっくりきた。
それは自分の考え方とか、どう思われたいかじゃないですか。人間性とか飾りなく出てるんじゃないかと。
マイノリティを楽しむ。そういうのじゃないと伝わらないと思った。自分をさらけ出してる飾らない真っ直ぐなものに人はひかれるし感動すると思う。」

ー「必ず前回の自分を超えなければいけない、同じことをしててもいけない。進化していかないと。それが僕のスタイルだから。」

まさにshinさんの世界観に吸い込まれていくような。これは…UZですね(笑)
最後にご来場いただく方々へメッセージをお願いします。

ー「ただ楽しんでほしいです。色々考えずに楽しんでもらいたい。
実は絵の中にはたくさんの伏線を張っているのでそういう部分も楽しめるかなと。その伏線を追って楽しむのもいいし、単体で単純に色々考えずに楽しんでもらってもいいです。その人の受け止め方次第で楽しみ方は違うと思うし。
それぞれの目で見て、それぞれのストーリーを描いてもらえたらいいなと思います。」

ぜひ今年も1月14日から、shinさんの渦へ吸い込まれに東彼杵へお越しください。

*shinさんの「ひと」の記事や、前回の作品展の記事は下記リンクからご覧ください。

と き
ところ
Sorrisoriso千綿第三瀬戸米倉庫

長崎県東彼杵郡東彼杵町瀬戸郷1303-1Google Map

料 金

無料

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出展者

  • shin
    shin

    佐世保市出身、佐世保市在住。2020年、仕事の傍ら新上五島の地で独学で絵を描き始める。 絵画やデザイン、新上五島発の情報誌「みjoy」のコラム連載等、幅広く精力的に活動し毎年作品展を開催。 型にはまらない作風は自在に進化する。