線画と出逢い、その魅力に取り憑かれた新星。佐世保市在住の謎のアーティスト・shinさん

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「友人から言われた言葉で、『絵を見たら、音楽が鳴っている』と。全然意識していなかったんですが、絵にテンポがあるんでしょうかね」。そう話す佐世保市出身、在住のアーティスト・shinさんが絵画と運命的な出逢いを果たしたのは最近のことだという。

何かを表現したいと言う気持ちは昔から、常に根幹に、確かにあった。溢れ出すイメージを、次々に形にしていく氏の生い立ちと絵との出逢いに迫る。なお、今回は本人たっての希望により氏名、職業ともに伏せさせてもらう。

様々なカルチャーに触れ、表現したくなった。
だけど、自分に合った表現方法が見つからなかった

造船とアメリカ軍港の町として発展を遂げた佐世保の地で生まれ、育った。

shin「幼少期を一言で表すと、”わんぱく”。いたずらっ子で馬鹿なことばかりしていました(笑)。とにかく好奇心旺盛で、落ち着きがなかったように思います。中学時代は多感と言うか、ちょっと悪ぶってみたり、オシャレに目覚めたり、どこにでもいるような変なヤツ。人と同じなのが嫌で、とにかく人と違うことをしたいと漠然と考えていました」

高校時代は、学校に通いながらアルバイトをする中でこれまで知らなかったカルチャーを吸収していった。

「周りに音楽をやっている人が多く、その影響を受けて自分もバンドを組んだりして。とにかく、たくさん音楽を聴いたし、音楽に触れていました。それがきっかけで、卒業後は福岡にある音響関係の専門学校に入って2年間学び、その後も福岡に残って音響の勉強をしながら、自分でもバンドを組んでライブしたり。でも、なんとなくですが、自分が表現したいのは音楽じゃないのかもしれないと思ってしまった。ある程度までは表現できるかもしれないけど、その先の自分が伝えたいことが完全には表現しきれない。そう考えるようになっていました」

自分だけの表現をしたい。でも、それがどういう形なのかがわからない。模索・葛藤し、悩む時期が続いた。

「そんな時に就職の話があったので、一旦佐世保へ帰ってきました。一般企業に勤めて、そこで初めて社会人になって社会というものを知りましたが、しばらくして辞めました。会社やそこで働く人たちとの波長が合わなかったんです。そして、今の職業に就くんですが、それまで絵を描いたことなんてありませんでした。描き始めたのは、1年半前になります」

ふとしたきっかけで絵を描いてみた。
表現したい者は、その時初めて表現者となった。

なぜ、絵だったのか。きっかけは、友人への贈り物だったという。

「友達が福岡でお店を出すことになって、その出店祝いをあげたくて。お店で使えるものや、オブジェを普通に買ってプレゼントしてもよかったんですが、あまり面白くないなと。そこで、お店の簡単なイメージが頭の中にあったので、ポスターにできないかなと思いました」

「濃紺の夜に酒瓶を傾けて、その中から星や月が散らばるというシンプルな構図をPCを使って書いた簡単なもの。でも、出来上がってみるとすごく良くて、友人もとても喜んでくれました。日常で絵を贈り合うことってなかなかない。だけど、贈ってみると反応も面白いし、自分も描いていてすごく楽しい。そこから、人生の節目で誰かと出会って閃いたイメージがあれば作っていました。ただ、PCで描けるんだったら、表現の幅がもっと広い手で描いた方がもっと良いものが作れるんじゃないかと思い、手描きに。そうして、今のスタイルに至ります」

音楽では見出せなかった表現が、絵を描くという行為でかっちりと当てはまった。

「新しい発見でした。自分の中にイメージがあるということと、それを形にできたことの驚き。そして、観た人の反応が想像以上に面白くて。ひょっとしたら、自分にしかできない表現が”この場所”にあるのかなという思いが芽生えました。誰かに観てもらい、いろんな反応をしてもらえるというところに表現の面白さがあります。自分で楽しむのもそうですが、作るからには人に出会って見てもらうことに意味があり、使命なのかなと。それが最終的な意味であり、そこに躊躇う理由はないなと思います」

人に伝わって、初めて表現は成立する。
根本にあるテーマは、『光と影』

shinさんにとって、絵画は本業ではなく自分を表現するツールに過ぎない。今の仕事に就けたからこそ、自由に絵を描くことができている。

「これまで、先が見えない仕事で将来に不安を感じていました。自立できていないという想いがあって。それが、今の職業に就いて5〜6年と続ける中で自信がつき、心に余裕が生まれました。そうすると、表現したい気持ちが湧き起こってくるんですよ。明確ではないけど、自然に出てきたということは無意識にそう思っていたんだと」

仕事ではたくさんの人と会い、時にはハードな経験もある。

「毎回真に受けていると心がもたないので、やり過ごすこともあります。中には、意識しないようにしても自分の中に残り続けるほどの出来事もある。そんな中で、行き場を失った感情を絵を描いて表現することで解放しているのだと思います。絵に救われている部分は、多くあります。絵によって自分の真意を気付かされることもあります」

「美術は文字じゃない言語だから」。某漫画に出てくる登場人物の科白だ。それまで何一つ実感が得られなかった主人公が、絵画と出逢って絵を描き、それが人に伝わって「初めて人と話せた気がした」。文学も、音楽も、芸術も。表現者は、ただ作品を創るわけではない。そこに、内なるメッセージを込めて観る者に問いかける。

「僕なりに、絵には必ず意味を持たせています。わかりやすい形では描いていないので、表面的な評価をする人もいれば、謎解きのように考える人もいる。僕は、面倒臭くて、こんがらがって、わかりにくい表現を好みます。それは、音楽にしろ、映画にしろ、絵画にしろ深みだと思うからです。何回も見て、聞いて、読んで。自分なりに紐解いていくのが好きな性格なので、僕の絵に興味を持ってくれる人には、そう言う風に思いを巡らせながら何度も眺めて楽しんでもらえたら嬉しいですね」

イベントについての詳細は以下の記事をご覧ください。