写真家 村山嘉昭氏が切り取る写真集 『石木川のほとりにて』をプレゼント(抽選30名) 協力:パタゴニア日本支社

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『くじらの髭』と『patagonia(パタゴニア)』がお届けする、長崎の山、川、海が織りなす自然の魅力と、そこに潜む問題を伝える人々の応援レポート。

第1回めは、長崎県川棚町川原(こうばる)郷の自然や人々の暮らしを切り取る徳島県在住の写真家、 村山嘉昭さん。

一枚の写真が語りかけてくる情報の力。それは、ときに一石を投じるほどの力を持つ。村山さんが川原郷へ足繁く通い、市井の住民や自然と心を通わせてきたからこそ撮れた、撮らせてもらえた写真集『石木川のほとりにて~13家族の物語』。収められたひとつひとつの瞬間は、そのどれもが氏にしか切り取れない魅力的な記録であり、そこに住む人々のまぎれもない暮らしの証拠である。そんな珠玉の写真集を、この記事を読んでいただいた方の中から抽選で30名様にプレゼント。

自然が好きで、そこに生きる人をリスペクト。
だからこそ、守りたい、伝えたい

神奈川県横浜市の住宅街で生まれ育ち、20代後半からは東京で生活をしていた根っからの都会人だった村山さんは、「東京じゃないところから日本の社会を見てみたい」という気持ちで、現在は徳島県徳島市に在住。これまで各地を訪れては研鑽を積み、カメラマンとして自然や人が引き起こす災害の惨劇を発信してきた。「現場では葛藤の連続で、社会や自分に対しての悔しさがあるからこそ、災害がある度に駆けつけているのかもしれません」と語る村山さんは、反省と後悔の経験を重ねる中で、自分自身に言い聞かせていることがあるという。それは、被写体を”素材”にしないということ。川棚町での取材活動においてもその考えを軸にしていたからこそ、石木川の写真集は出来上がった。

その中には、「ある意味、川の健康度がわかる指標生物」だという『川ガキ』が収められている。彼らが生息するということは、水が綺麗であり、かつ川と暮らしの関わりが豊かなまま現存している証なのだ。川での事故が相次ぎ、ダム建設などで立ち入り禁止場所が全国各地で増え、川遊びの文化が失われつつある日本社会に警鐘を鳴らす。そして、川の魅力を記録し伝えることで人々の自然を渇望する本能を想起させたい。そんな村山さんの熱い想いと願いが、この写真集に込められている。

また、川棚町内を流れる石木川は、想像を絶するホタルが飛び交っていることも証明している。まだ、この地には震えるほどに感動する山や川が残されているのだ。「川棚町に来て初めてホタルを見たときには驚きました。『日本でこんなにものホタルが乱舞する場所があるんだ!』って。心が震えるほど、感動します。純粋に美しいというか、ただただ、すごいとしか言えなくなります」と語れるのは、そこで見た者だけが味わえる特別な体験だ。「一度で良いから、その光景を目に焼き付けたい」。「こんな自然が、いつまでも残っていて欲しい」。一枚の写真が、そこで綴られる随筆が、人々をそのような思いへと駆り立てる。

「川棚町へ頻繁に足を運ぶようになって6年くらいが経ちましたが、そこで写真を撮る理由も”石木川を守りたい”という人々に共感するところがあるからです。熊本県の川辺川や、徳島県の吉野川も同じように取材を続けていますが、石木川も私にとっては大切な川なのです」と語りかける氏の目が光を失うことはない。

川が好き。自然が好き。そこで生きている人々に共感する。だから、包み隠さず撮り、伝える。「できる人間ができる範囲で取り組み、現地の声を拾うスピーカーになる。誰かが発信することが重要なのです。石木川のほとりに暮らす人や自然を写真に撮り、それらを発信するのが私にできることかなと思って、長崎へ足を運んでます」。身体が動き続ける限り、その活動は続いていく。時代の変遷の中で、次の世代に歴史や文化の継承を絶やしてはならない。問題は、どうやって継承させていくか。ぜひ、この写真集を手に取って一読して欲しい。ひとりで物思いに耽りながら。大切な家族や友人たちと一緒に。行動を起こすのは、いつだって自由だ。

ひと・ことについての詳細は、以下の記事をご覧ください。

協力:パタゴニア日本支社