朗らかな人柄が愛されている、カッコ良い人気者。『L’ECRIN(レクラン)』代表・江頭知裕さん

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長崎県の北部、北松浦郡佐々町にお店を構える『L’ECRIN(レクラン)』はオーダーメイドでスーツやタキシードを仕立てる長崎県随一のテーラーである。その人の魅力を最大限に発揮できるよう細部までこだわり抜かれたスーツは、スタイルアップを叶えながら人生の大切な一日を華やかに彩ってくれると評判だ。

L’ECRINの大きな特色はキャンピングカー『LECRIN号707』で行う移動販売。九州や本州など各地へ出向いてはオーダーを受けたり、場合によってはお客さん希望の場所で写真撮影も行う。この他には和装や婚礼衣装などのレンタルやLGBTQIA+婚(同性婚)のプロデュースも手掛けるなど新たなテーラーの形を打ち出している。

2015年、東彼杵町瀬戸郷にある『Sorriso riso千綿第三瀬戸米倉庫』のオープン当初にL’ECRINが出店した縁もあり、今回のインタビューが実現。店主の江頭知裕(えとうちひろ)さんと今回の取材を務めた我らくじらの髭の森は同い年の友人でもある。ここでは和やかなひとときとなったインタビューの様子をお送りしたい。

自分の体格に合う服を作りたい
江頭知裕さん(写真右)

1984年、福岡県は北九州市八幡西区生まれ。小学校に上がってからはサッカーに夢中となり、中学卒業まで続けた。幼い頃から身長はグングンと成長し、周りの友人と比べても頭一つ飛び抜けていたという。

―小学校の頃からすでに身長は高かったやろ?

江頭「高かった。小学校を卒業したときは170センチあったよ。ランドセルは似合わんし、電車に乗る時は中学生に間違われるけん絶対に名札付けて行きなさいって言われよった(笑)。小さい時からずっとでかかったよ」

高校ではサッカーを辞め、興味はファッションへと向かう。アルバイトでお金を貯めては好きな服を買いたいと古着屋巡りをする日々を送るが、185センチにまで成長した知裕さんに合う服を見つけ出すのは難しかった。

「今は違うやろうけど、自分が中学とか高校の頃は高い身長に合う服って無かったし、あってもすごくダサかったけんね。それで自分の体格に合うカッコ良い服を作りたいって夢を持つようになった」

―じゃあ高校の時から服を作るイメージが芽生えたと。今に至るスイッチが入っとるね。

「そう。やけん福岡市の香蘭ファッションデザイン専門学校に入学して。専門学校ではあんまり勉強せんで洋服ばっかり買い漁りよった(笑)」

それからは衣料品店でのアルバイトを経て、ハイセンスなデニムで知られる人気ブランド『EVISU(エヴィス)』に就職。天神店と大野城店で10年間にわたり勤務した。EVISUはメイン商品であるデニムのほか、スーツや釣り具、ゴルフ商品なども扱っていた。

―EVISUでの10年は長いね。いろんな商品の中でどの分野を担当しよったと?

「EVISU面白かったもん。最後の3年は大野城におったけど、そこでは店長しよったよ。デニムとかスーツとか特に担当は無くて、どの商品もオールマイティーにお客さんに説明できるように接客しよった」

その後、知裕さんは29歳でEVISUを退職し妻の実家がある佐々町へと移住。その2年後に『L’ECRIN』を開業することとなった。

心身に沁みている教え
L’ECRINが提供する貸衣装イメージ

EVISUで知裕さんが受けた教えや経験した学びは、L’ECRINを始めてからも知裕さんの心身に沁みついていると感じるそうだ。

―EVISUで学んだのはどんなことやった?

「まずは服のサイズ感を大事にすること。サイズがぴしゃりと合ってたらカッコ良く見えるっていうのがよく分かった。だけんこそ自分のサイズがちゃんと分かっとらんと、雑誌のマネしても絶対カッコ良くならんね」

―確かに体形に合ったスタイルが出来てないと、どんなに良い服でもダサいもんね。

「それと接客。“人”で売れるっていうのは感じた。『自分のスタイルを売りなさい、この人カッコ良いけんこの人から買おうって思われるようになりなさい』って言われよった。売ってるものの価格が高いけん、いかにお客さんに“人”として気に入られて顧客になってもらえるか。あとこれもよく言われよったけど、ファストファッションって自動販売機でも買えるものやけん、自動販売機的な、誰に対しても機械的で同じような接客はするなって」

―その考え方は良いね。確かにそうかも。

「EVISUではあえてサイズは測らずに、お客さんを一目見てからある程度サイズを見定めて商品を紹介する接客やったんよ。それでサイズがピッタリやったらお客さんに喜んでもらえる。そういう感動を与えようっていう。だからこそお客さん一人一人に大事に向き合うってことをよく学んだし、L’ECRINをやっている今でも自分の中で活きている経験やね」

知裕さんの引き寄せる力

L’ECRINの経営と並行しながら、ファッションショーや新たな結婚式の形を提案したり、商工会青年部の部長としても活躍している江頭さん。多くの人がワクワクする取り組みをやろうと様々な行動を起こしてきた。

―いつも面白い仕掛けを繰り広げている江頭君やけど(笑)、行動力がすごいよね。

「行き当たりばったりよ(笑)。思いついたら即行動して、失敗したら辞めて。考え始めたら『失敗したらどうしよう』って不安になるけん、その前に行動してから考えるかな。エイヤー!で始めたら進むしかなくなるけん」

―それでも、直接的な売上にはつながらんでもギリシャ映画からオファー受けてコメント寄稿することにつながったりして。そういう引き寄せる力は持っとるよね。色んな行動を起こす分たくさんの引き寄せを起こすけん。

「運が良いなとは思っとる。やってみて上手くいかんやったって思うことの方が多いけどね(笑)」

新たな接客の形を見出そうと始めたキャンピングカーでの移動販売。お客さんとのミーティングは採寸や試着を含め2時間ほどの時間をかけて丁寧に行う。およそ45日後に完成するスーツは試着後のやり取りをスムーズに進めるため、原則店舗で受け取りするようお願いしている。

「初めてのお客さんは緊張して硬くなって来ることが多いかな……自分も緊張しとるけど(笑)。でも2時間経つ頃には『意外と大丈夫だ』って気付いてくれて、仲良くなれるんよ。それで仲良くなってお店まで来てほしいし、自分としてはやっぱり人との接点を持ちたい。一度店に来てもらって、もっと仲良くなるころにはその人のライフスタイルなんかも分かってくるし、それに合わせた提案もできるけんね」

―そういうことを大事にするのが、色んなことを引き寄せるっちゃろうね。江頭君の周りでも、人をたくさん集めるたい。見た目は少しいかついかもしれんけど、気さくなキャラクターが良い意味でギャップがあるもん(笑)。

「助けてくれるもん、皆。それに自分が緊張しいやけん、商工会での挨拶も絶対に文字に起こして練習して覚えていくもん。部長になったけんそういう機会が増えたよ(笑)」

―その人間味がある感じが良か(笑)。そういう人柄が今のL’ECRINの仕事に繋がっとるっちゃろうね。

朗らかな人柄と誠実な仕事ぶりが多くの人を惹きつけてやまない江頭さん。彼がこれからどんな面白いことを仕掛けてくれるのか、ますます楽しみである。

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