縛られない、自由な生活に憧れて。東彼杵に移住したフリーライター・中川晃輔さん【長崎国際大学 佐野ゼミ生共著記事】

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2021 年に長崎県東彼杵町に移住してきた、フリーライターの中川晃輔さん。以前は『日 本仕事百貨』の編集長を務め、全国各地で仕事と人とのマッチングに貢献してきた。そんな彼が、なぜ都心から東彼杵の地へと移り住み、暮らし始めたのか。話を伺った。 

好きな仕事を見つけるまでの道のり

中川さんは千葉県柏市に生まれ、千葉県立東葛飾高校を卒業した。 

中川「高校までは実家のある千葉県で暮らしていて、大学は慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパスに通っていました。2015 年に卒業してからは、大学4年の頃からインターンをしていた株式会社シゴトヒト会社へそのまま入社。しばらくは東京で生活しながら、あちこちを取材して回るような生活をしていました」 

日本仕事百貨で働き始めたきっかけは何だったのだろうか。 

「大学ではアカペラと演劇を ずっとやっていて、就活でみんながスタートを切るぞという時もまだ、自分たちで舞台をつくって公演していました。それで、単純にスタートが出遅れてしまって。それに、就活への違和感もありました。みんなそれぞれ、好きなこと、やりたいことがあって研究やサークルをやっていたはずなのに、いざ就活となると、突然それに飲み込まれていくような感じがして。 

いきなりスーツを着て、髪型を整えて、何十社も受けて。自分がやりたいというよりは、漠然とした不安感から、とりあえず内定を欲しいがためにたくさん受けておく、みたいなやり方はどうなんだろうなって」 

そんななか、友人から「いい求人サイトがあるよ」と教わって出会ったのが、日本仕事百貨だった。 

「日本仕事百貨は、全国各地のいろんな仕事を紹介するメディアです。求人サイトなので、当然給料や福利厚生についても書いてあるんですが、それだけではなくて、そこで働いている人の想いとか、仕事場がどういう環境なのかを丁寧に伝えているメディアだと感じました」 

この場所なら、自分にとって良いと思える会社が見つかるかもしれない。そうして読み進めていくうちに、仕事と人とを巡り合わせる仕事そのものに興味を持つようになったという。 

「いい仕事がないかなあと思って見ていたときに、ちょうど日本仕事百貨のインターン募集の記事が出てきて。いろんな取材に同行して文字起こしをしたり、東京にある自社スペースにいろんなゲス トを招いてイベントをやっていたんですけど、そこのバーでドリンクを提供するお手伝いをしたり。そういう感じでインターンを始めて、そのまま就職に至った感じです。実際にいろんな人に出会って、いろんな働き方や生き方に触れることで、自分にとっての『仕事』の手応えも増していったように思います」 

東彼杵で人から人へ。
インスピレーションと安らぎをもたらす場所

2021年の4月にフリーライターへ。そこから半年ほどをかけて新しい拠点を探し始めた。 

「父が北九州出身で、小さい頃から帰省で年に1、2回は遊びに行っていたんです。そういう繋がりもあって、九州に惹かれて。知り合いに車を借りて、人にお勧めされるがままにいろんな所を回っていく中で出会ったのが、東彼杵町でした。知り合いは一人もいなかったけれど、穏やかな大村湾を望む景色に一目惚れしたんです」 

東彼杵での暮らしの中で、新たな趣味が広がってきたという中川さん。 

 「最近いろんなことに興味が湧いてきました。ギターも買ったし、カメラも好き。最近は家事にハマっていて、家の掃除や料理も楽しんでいます。『生活』って、こなさなきゃいけないもののようで、趣味や娯楽にもなると思うんです。 

たとえば、東彼杵ではご近所さんや知り合いからいろいろなものをいただきます。それこそ、イチゴ農家さんからイチゴを貰ったりとか、ゲストハウスのご夫婦からふきを貰ったりとか、この間も梅をボーンと貰って。無駄にしちゃいけないと思うから、とりあえず調理したり、ジャムのような保存食に加工したり。仕事が忙しいときに来ると、『うわ、今か』とかって思ったりもするんですが(笑)」 

そこで、自然と食べ物づくりについて考えさせられるという。 

「やっていると楽しいし、自作できたことの満足感が得られます。梅シロップなども、じ つは凄い簡単。氷砂糖と梅を一緒に入れて時々混ぜる、それで梅の液体が自然に出てきて梅のシロップが出来てきます。もちろん、自作したものがお金になっているわけではないし、それだけで食べていけるものではありません。けれども、どこか豊かなことだと思うのです」 

娯楽にしても、日々の生活にしても、お金をかけて成立するものもある。一方で、東彼杵での生活には、それとは違った豊かさがあると中川さんは語る。 

「家事は手間が増えたりして大変なんですが、その手間自体が凄く楽しかったりします。梅やイノシシの肉をお裾分けしてくれた方たちに『この間の梅、シロップにしましたよ』とか、『この前オススメしてもらったイノシシカツ、やってみたらとても美味しかったです』って話せることも楽しいです」 

周りには親切な隣人がいて、人とコミュニケーションできるのが楽しい。そんな中川さんの話を聞いて、わたし自身も心が弾んだ。 どこに住んでいても、好きなことができる限り、それが意味のあることではないだろうか。

日本仕事百貨で培ってきた人と人とを結びつける力は、彼自身の暮らしも豊かにしているように感じた。

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