スポーツを活用したまちづくりを。『東彼杵町役場 総務課 係長 山下晋弘さん』【長崎国際大学 佐野ゼミ生共著記事】

  • 門司 峻輔(長崎国際大学佐野ゼミ生)

    門司 峻輔(長崎国際大学佐野ゼミ生)

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長崎県の中央に位置し、大村湾の北側に面している東彼杵町。人口は、7,500人前後という小さな町。
そんな東彼杵町の役場で働いている山下晋弘さんのもとを訪ねて、お話を伺った。

総務課の係長である山下晋弘さんは「スポーツを活用したまちづくりをしたい」という思いを持ち、東彼杵を盛り上げようとしている。

東彼杵町役場で働くまで

山下さんは母方の実家がある佐賀県佐賀市で生まれ、小学校入学時に父方の実家がある東彼杵町の大楠地区に越してきた。中学校までは東彼杵町で過ごし、高校は隣町の川棚高校へ進学。その後、長崎を出て山口大学へ進学し、卒業後は公務員学校を経て平成16年に東彼杵町役場に就職した。

当時の山下さんには、何か大きな目標や夢を持っているという訳ではなかった。高校時代に両親から「大学に行けば遊べる」と勧められて進学を決め、就職氷河期を乗り切るために「公務員にでもなってみたら」と言う両親の助言に従って、安定している公務員になることを決めたそうだ。

しかし、長年地元の町役場で働いているうちに、やりがいや目標が生まれてきたという。

山下「町役場には様々な部署があり、それぞれの部署でも色んな仕事があることがおもしろい。私は、最初は水道課に入ったことで、ちょっとした水道工事なんかもするし、管が破れて水が漏れていたら、そこを直さないといけないから工事の現場に立ち会ったり、土木作業員と同じように穴を掘ったりしました。教育委員会に異動した時は、スポーツや文化を担当してたからスポーツイベントを開催したり、東彼杵町総合会館の運営も任されたり。イベントがあったら音響さん照明さんみたいなこともしたりとか、色んなことを覚えられると楽しいですね」

現在は、総務課で主に町民の移住や定住を担当している山下さん。他にも町の1番大きな目標である総合計画を作る担当をしている。また、地域おこし協力隊という、他県から来て活動する人たちの支援なども行っている。

スポーツを活用したまちづくり

山下さんは、役場で働く中でスポーツを活用したまちづくりをしたいと考えている。

山下「現段階ではまだ『やりたいな』と考えている段階で、話が進んでいるわけではありませんが。理由としては、東彼杵町では年間20~30人程度しか子どもが産まれていないため、少子高齢化がかなり進行している。子供の人数が少ないため、そもそもチームを作ることが出来ないという問題点をどうにか解決したい。中学校の野球部は人数が足りなくて休部になったし、サッカー部も廃部になってしまいました。そういう状況だから、子どもたちもやりたいスポーツが出来ない。そもそも、スポーツに関心を持たなくなってしまうんです」

また、東彼杵町にはスポーツを教える指導者の人数も少ないという。指導をするにも色んな面で負担がかかるため、積極的に指導してくれる人がいないそうだ。そのため、スポーツに対して良くない方向に向いている環境をどうにかしたいと、山下さんは語る。

山下「今はそれぞれのスポーツで、野球は野球、サッカーはサッカーというように縦の組織しかないため、種目の枠を超えて横の繋がりでイベントなどを開催したいと考えています」

東彼杵町のソフトボール

東彼杵町で最も盛んなスポーツはと聞くと「ソフトボールです」と山下さんは即答する。東彼杵町にソフトボールのイメージがなかったため、驚いた。

山下「昔はすごくソフトボールが盛んで、私の親の少し上の世代の頃には、町内に何十チームもあって、町内大会も行われていたそうです。今でも競技人口は1番多く、ナイターもやっていて本日も試合するらしいですよ(笑)」

それでも、競技人口はかなり減っている。以前は東彼杵町内の4つの地区の小学校にそれぞれソフトボールチームがあったが、今は小学校も2校になり、そのうち1校はチームが組める人数もいないため、1チームになっているそうだ。

しかし、諦めるにはまだ早いと山下さんは考えている。これまで町内で年間20~30人しか子どもが産まれていない状況だが、1年間で東彼杵町に移住する人数は70人程度いるというのだ。

山下「引っ越してくる人(転入)と、出て行く人(転出)の数が令和4年度はプラスに転じたんですよ。近年ずっとマイナス続きだったのが、最近移住の取り組みを始めたこともあるのか、外国の方が入ってくることも増えてきて転入転出の差がちょっとプラスになってきている。これを続けていくことができればいいなと思いますね」

東彼杵町民の人の良さ

山下さんが考える、東彼杵の良い点は町民の人の良さにある。

山下「やっぱりみんな協力的だし、特に最近は若い人たち、森(一峻)くんとかご存知のように、 Sorrisorisoや周辺地域の皆さんが中心となって活躍していて、みんな『東彼杵をなんとかしたい』っていう思いを持ってる人があちこちでいるので、横の連携が取りやすいんですよね。年が離れていても結構仲良く『みんなでやっていこうよ』みたいな雰囲気が出ていることはすごくいいことなんじゃないかなと思います」

一方で、町を盛り上げるためには改善していかなければならない点もあるそう。

山下「引っ込み思案なところもあって、新しいことに対して少し抵抗がある。すぐに受け入れることが難しい人もいるっていう風潮はあるのかなと。自然豊かでのんびりしてる町だから、良い意味でも悪い意味でものんびりしているかなって感じですね(笑)」

今回山下さんが考えている「スポーツを活用したまちづくり」の具体的な内容や東彼杵町の現状などについて詳しく知ることができた。

山下さんは今後、大学生とも関わって東彼杵のスポーツを盛り上げたいと語る。スポーツの指導者が少ないということで、サッカー経験のある県内の大学生たちがアルバイトとして東彼杵のサッカー少年に指導するということがあっても面白そうだ。

山下「今後、東彼杵町でスポーツイベントなどが開かれることがあれば、ぜひたくさんの人に参加してもらいたいですね」

スポーツが盛んなまちはきっと良いまちづくりに繋がるはずだ。

山下さんについて、こちらの記事も是非ご覧下さい。