新たな可能性を見つけた町。地域おこし協力隊として歩む道「斉藤節子さん」

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  • 坂井 佳代

    坂井 佳代

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「自分のやりたいことをやりたい」という思いと、「誰も知らないところに行きたい」という願いを胸に、埼玉から長崎県東彼杵町への移住を決意した斉藤節子さん。3人の息子と共に2022年3月に移り住んだ彼女の新生活は、地域おこし協力隊員としての活動を軸に広がっていきました。

温かい地域との出会い

離婚を機に大きな転機を迎えた斉藤さんは、「もういいきっかけだから、どこか行ったことないところに行ってみたい」という思いから、九州に目を向けました。九州の中でも鹿児島と長崎を候補に絞り、災害の少なさなどの条件から最終的に長崎に決定。

そして東彼杵町の空き家バンクで気に入った物件を見つけ、内覧に訪れたんです。夜行バスと飛行機を乗り継いでの弾丸内覧でしたが、役場の方々や地域の人々の温かな対応に心を動かされたといいます。役場の方々や保育園の園長先生など、出会う人々が皆温かく迎えてくれたことが決め手となりました。

物件内覧の後、斉藤さんは役場から地域おこし協力隊の募集を紹介されました。この制度は、都市部から地方へ移住して地域の活性化に取り組む人材を支援する総務省の事業です。

斉藤さんにとっても、家と仕事がほぼ同時に決まるという幸運に恵まれたのです。「移住したいと思っていた時にちょうど地域おこし協力隊の募集があって、タイミングがぴったり合った」と嬉しそうに話します。特に子育て世帯としての移住経験を活かせる情報発信の仕事は、彼女の背景にぴったりマッチしていました。

地域おこし協力隊としての主な仕事は、SNSでの東彼杵町の魅力発信です。面白いのは、斉藤さん自身、SNSをほとんど使ったことがなかったという点。「こっち来て初めてInstagramのアカウントを開いたんだよね」と話す斉藤さん。全く未経験の分野でしたが、持ち前の行動力で次々と新しい投稿を公開していきました。

「最初は全然分からなくって戸惑ったけど、町の人たちが協力してくれて、おすすめのスポットとか教えてくれたり、一緒に写真撮ってくれたりして。そういう交流を通して町のことをもっと好きになっちゃった♡」と目を輝かせて語ります。

メディアがつないだ地域の輪


移住と同時に、NHKの密着取材が始まりました。「出発の時から撮影が始まって、移住までの過程を追っていただきました。7月の放送後、思わぬ効果があり、お店で『テレビで見ました』と声をかけていただいたり、野菜をいただいたり。番組のおかげで、自然と地域に溶け込むことができました」と取材の効果を感じ、「名刺代わりになっちゃった(笑)」と斉藤さんは笑います。最初はびっくりしたけど、おかげでたくさんの人と知り合えた」と、予想外の展開が移住生活をスムーズにしたと振り返ります。

地域おこし協力隊の活動を通じて、斉藤さんは東彼杵町の様々な伝統行事や地域活動に参加する機会を得ました。

新たな夢へのステップ

協力隊の任期は3年。残り1年となった今、斉藤さんは次のステップとして飲食店の開業を視野に入れています。以前居酒屋でのバイト経験があり、「接客してる時すごく楽しかったし、ご飯作るのも好きだったから」という経験を活かした将来を描いています。

「協力隊の活動を通じて町の農家さんや漁師さんとのつながりができたから、地元の食材を使った料理を提供したいな」と、任期中に築いたネットワークを活かした計画を立てています。東彼杵町は日本有数のお茶の産地としても知られ、「お茶を使ったメニューも考えてるんだ」とのこと。

斉藤さんは地域おこし協力隊として移住を考える人へのアドバイスも積極的に発信していて「協力隊制度は移住のハードルを下げてくれる素晴らしい仕組み。特に家族での移住は不安が大きいけど、仕事と住まいが同時に確保できるのは大きな安心感になるんだよね」と優しく語ります。

振り返れば、住まいが見つかり、協力隊の仕事が決まり、テレビの取材が入るという偶然が重なったことで、斉藤さんの移住は非常にスムーズに進みました。「ほんといい移住だったなぁ」というシンプルな言葉に、新しい土地での充実ぶりが表れています。彼女の挑戦は、地方移住を考える多くの人にとって、希望と勇気を与えてくれる物語といえるでしょう。

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