「焼肉 音琴」の店長【塚本隆男さん】が見せる、職人の顔と商売人の心

東彼杵町の国道205号線沿いにある、この地域でも珍しい牧場直営店「焼肉 音琴(ねごと)」。

塚本畜産」が経営するこちらでは、東彼杵町育ちの極上な長崎和牛を堪能できる。焼肉メニューはもちろん、数量限定「牛トロ丼」などの生肉を使用した逸品も、多くのファンの心を掴んでいる。

このお店の美味しさの秘密は、まさに牧場との連携によるもの。こだわりの自家配合飼料を与えるなどして大切に育てられた牛の枝肉は、すぐに『音琴』に持ち帰って包丁を入れ、“結果の検証”に入る。脂の質をチェックして、次の飼育に向けた改善点として持ち帰るためだ。牧場と焼肉店は、美味しさを求め続ける二人三脚の関係性。

その「音琴」の店長・塚本隆男さんに、お店との長い歩みのお話を伺った。

焼肉音琴・塚本隆男さん

長年の経験による、料理人としての顔

2004年より始まった牧場直営店「焼肉 音琴」。店長・隆男さんは、その前からずっと飲食業に携わってきた。

隆男「ここ始める前は、ずっと福岡でやってたんよ。学校卒業して、なんとなく最初から飲食がやりたいって思っとったんやろうね。知り合いの紹介で、生簀割烹から始まって。それから、ちょうど仕事辞めたタイミングで、牧場をやってる兄からお店をやってほしいって言われたから、ここに焼肉屋を作ったんよね。」

焼肉音琴の店長・塚本さんが話すシーン

聞けば、23年間もの間、福岡という地で料理人として勤めてきたという。かつては自分で居酒屋を経営していたこともあった。自分のお店も含め、隆男さんが生業としてきたのは和食がほとんど。つまり、魚料理が中心だったのだ。同じ飲食業とはいえ、今まで扱ってきた食材とは異なるジャンル。難しさなど感じなかったのだろうか?

隆男「難しいも何も、“他人の口”に合わせるってのは、魚でも肉でも難しいさ。福岡と長崎ってだけでも違うしね。焼肉屋はタレが一番難しいから、最初は色々試したよ。家族に味見してもらったりとかね。」

焼肉音琴の焼肉シーン

通常、焼肉のタレに使う出汁は、牛骨などを使用する。一方、ここ「音琴」は珍しくも、鰹昆布出汁でタレを作っている。長らく和食を専門としてきた隆男さんらしい個性が隠されていた。

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お店という「場」との関わり

飲食店において、店舗の立地は重要だ。「音琴」が構えるのは、町中ではなく海沿いのドライブコースの途中。「塚本畜産」の牧場がある山から降りてきた位置に当たる。

隆男「ここは以前、農協の支店やったんよ。だから建物はそのままやけど、内装も全部自分で手がけて。図面を自分で引くところから、キッチンの配管工事まで。大工さんにも頼めなくて、自分でやるしかなかったけんね(笑)」

焼肉音琴の店舗内観

17年前の創業当初を思い返しながら、懐かしそうに塚本さんは語る。ここを訪れてくるのは、何度もお店の前を通る度に気になっていた人、噂を聞きつけてやってきた人など、様々だろう。一方で、周辺地域との関わりについても尋ねてみた。

隆男「ここは他所から来る人がほとんど。ハウステンボスへのお出かけついでに、立ち寄ってくれる人とかね。だから、駐車場でも佐世保ナンバー見ることは少なかよ。森くんみたいに、よく消防団の人たちを連れて食べに来てくれるのは嬉しいね。いつも「牛トロ丼」ば頼みよるけど(笑)」

塚本牧場の塚本伸一さん

同席してくれた「塚本畜産」社長の息子・塚本伸一さん(隆男さんの甥)も思い当たる節があるのか、隣で笑みをこぼしていた。伸一さんにとってこのお店は、努力の結果を知るためでもあり、同業者たちが集う場でもある。

伸一「牛の品評会があった時は、共励会(きょうれいかい)をここでやるんです。つまり、反省会ですね。同じ東彼杵支部の生産者とか、役場の人、農協の人たちで集まって、みんなで話し合います。」

隆男さんが作り上げてきたこの場所は、目的を同じくする者たちが高め合う場ともなっていた。

美味しい牛肉を届けるために

「塚本畜産」の牧場では、牛にあげる餌は完全自家配合。既製品を使わず、自分たちで素材を仕入れ、配分を考えて飼料を作る。そのこだわりが良い結果をもたらすのか、問題があるのか。脂の質・柔らかさなどからその点を判断するため、お店の調理場で一緒に確認をするのだ。

焼肉音琴で牛肉に包丁を入れるシーン

隆男「今はほとんどないけど、昔はお客さんに怒られることもあったよ。脂が柔らかいと、焼いている時に火がよく燃えるから、脂が多いんじゃないかって思われてね。「牛にぎり」も、持ち帰りしたいって言われることあるけど、それはお断りしてる。お店で美味しくても、外で時間が経ったものを食べて美味しくなかったらダメやけんね。」

「音琴」は牧場と連携することはもちろん、お客さんに提供する飲食店としての立場として、「牛肉の美味しさ」を伝えるための場でもあるようだ。クオリティを保つためには、お客さんに理解してもらわなければならない。しかし、隆男さんはその必要性や難しさを感じながらも、需要と供給のバランスを忘れていない。

隆男「ここは値段が高いって思われてるけど、相場よりは高くしないって決めとる。オープンしてからも、料金を上げたのは2回だけ。どんなに良いものを提供したくても、お客さんに食べてもらえんかったら意味がないけんね。生肉のメニューは、取れる量も少ないしご飯もたくさん使うから、本当はもっと値段を上げたいんやけどねぇ(笑)」

焼肉音琴の店長・塚本隆男さん

隆男さんの心意気もあって、ここ「音琴」は牧場直営店であるにも関わらず、お手頃な価格で長崎和牛をいただける。牛肉本来の美味しさが損なわれることのないよう、一貫して妥協しない職人としての顔。純粋に、より多くの人に楽しんでもらいたいという店長としての優しい表情。取材の中で、どちらも見せてくれた。

東彼杵町の恵みは料理の味となって現れ、温もりはお店の空気に現れる。格式の高い高級店ではなく、家族が団欒して過ごせる焼肉屋としての居心地の良さが、そこにはあった。

焼肉音琴のテーブル席

「みせ」についての詳細は以下の記事をご覧ください。

みせ:牧場と焼肉店の二人三脚。東彼杵町育ちの長崎和牛を提供する「焼肉 音琴」

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写真:小玉大介
取材 / 記事:森恭佑
編集:森一峻

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