デザインの提案から、仕上げまで。シール印刷と言えば長崎・波佐見町の『丸研特殊印刷』

取材・文・写真・編集

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思い出してみてほしい。スーパーマーケットの惣菜を選ぶ時に見る、パックに貼られた『アレ』を。

思い出してみてほしい。釣具店で擬似餌やルアーを選ぶ時に見る、魚の目に貼られた『アレ』を。

思い出してみてほしい。ケーキ屋でカットケーキを選ぶ時に見る、上に乗っている『アレ』を。

商品だけではない。街の広告看板にも、店のレジ付近にも、電車や車の窓にも、送られてきた段ボールにも、貼られた『アレ』、『アレ』、『アレ』。あれ、そういえば私たちの生活の至る所に無数の『アレ』は貼られている。

アレ、すなわち『シール』は、もともと『印』を意味しており、印鑑や紋章、封印紙などを指す言葉だった。日本のシール起源は大正元年。イギリス皇室からの贈り物に貼られていた菊の紋章のシールと全く同じ物をつくるようにと、宮内庁から注文があったことが契機らしい。現在では、ワンポイントアクセントとして映えるキャラクターシールや、値札や商品名、成分説明のシールなど、多岐にわたってシールが使われている。

さて、長崎県は波佐見町に、シール製造という特殊な印刷を、デザインから仕上げまで一貫して行う印刷会社がある。1976年創業の『株式会社 丸研特殊印刷』だ。二代目として代表を務める、丸田敦史さんに話を伺った。

最初から最後まで引き受ける。
マルケンならではの独自性

丸研特殊印刷は、46年前に敦史さんの父と祖父とが一緒に立ち上げた会社だ。

「祖父が、シールの印刷機を一台買ってきて、父を呼び戻したのがきっかけです。祖父は元々段ボール業社の営業をしていました。波佐見焼きなどを段ボール箱に入れる際に、何かデザインをつけたいと考えた時にシールを貼るのを思いついた。そして、祖父の弟が大分の印刷会社に勤めていたというのもあって。当時、父は静岡にいたのですが、呼び戻されたそうです(笑)。そして、祖父と一緒にシール製造をメインでやっていったのがこの会社の始まりです」

そもそも、シール印刷とはどのような印刷方法になるのだろうか。

「シールの印刷は、普通の紙の印刷とは異なる特殊な方法で印刷されます。ものにもよりますが、基本は台紙があって、その上に糊付きの紙が付いている。そういうベースがあるものであれば、ほぼ同じ機械で製造できます。あとは、最終的な加工の仕方で工程が変わってくる。箔をしたり、ラミネートしたり、浮き出し加工したり。あとは、セロテープなどシールの形状自体を変えたりと、機械を使っていろんなものを組み合わせられます」

シールを製造するだけでなく、デザインの相談から引き受ける。

「お客さんからデータでいただくこともありますが、デザインから注文を受けることもできます。現在、会社の中にはデザイナーが4名います。シールを作りたいというご依頼から、打ち合わせを経てデザインを決め、納品まで一貫してできるようになっています。デザインにおいても、打ち合わせは重要です。場合によっては印刷した時の色の出方が難しかったり、イメージに合わないということで代替案を出したりすることもあります。紙の種類によって、出る色でない色があるので、色味を出すのがなにより難しいです。例えば、茶色のクラフトの紙に印刷するとして、デジタル上ですぐに仕上がりイメージが出る。しかし、実際に印刷された現物を見ると、思っていよりくすんでる印象に見えてしまう。なので、そういったところは直接見てもらって、調整をしていきます」

シールという特殊印刷を初めて46年。丸研特殊印刷ができる、他社とは違った独自性がある。

「近場で、フットワークを軽く作っていくというのを柱にしていました。また、デジタル印刷機を導入することで、これまである程度の生産ロットを作らなければならなかったものが一枚から何千万枚という範囲で作れるようになりました。レーザー加工機も持っているので、付加価値の高い複雑な一枚を作ることができるのが強みです。長崎県内、佐賀県を含めても、シール専門で直接注文を受け、仕上げまで行える会社は弊社だけだと思います。全て自社で完結できる。なので、『シールと言えば丸研』と言ってもらえるような会社を目指して、頑張ります」

特殊印刷の不思議。
シール工場見学ツアー

ここで、実際に工場内を見学させてもらった。工場へ入ると、早速目に飛び込んでくるのが大量のロール紙。大きさも、色も、さまざまな種類が見受けられる。

「弊社は、既製品というものがなく、お客さんから注文をいただいたものに対して全部オーダーメイドで作っています。そのため、注文をいただいてから、その都度それに合った紙を発注するようになります。ですから、サイズや種類によって紙のサイズや厚さが全部違ってきます

「続いて、これは刃型と呼ばれるもの。後で機械の中にセットして打ち付けます。そうすると、下の台紙は切らずに上のシールの部分だけを型抜きしていくことが可能となるのです。型抜きが0.05ミリでも深かったり、浅かったりするとシールが剥がせにくくなるので、かなり精密さが求められる。ちょうど良い剥がし具合のところで機械を調整します」

「最後に、印刷の版です。版にインクをのせることで、初めてシール素材に転写することができます。版は印刷するシールの色数によって作る枚数が異なります。例えば、これだと赤と黒の二色で作られているので、2枚の版が必要です。版と、刃型と、紙。これにインクを加えた4種の材料で、シールは作られています」

一台の印刷機で、全ての工程が流れ作業のように進む。そこに、ラミネートなどの加工パーツを工程中にセットすることによって、特殊加工を施したシールなどの作成も可能となる。なんともシステマチックな現場だ。

「触るとペタペタしているシールの粘着剤ですが、その種類は一般粘着糊、強粘着糊、弱粘着糊(再剥離)、冷食・冷凍糊などの様々なタイプがあります。紙×糊という組み合わせとなると膨大な種類になるので、毎回オーダーメイドで作るわけです」

2.5ミリのミクロから、80センチ×3メートルのマクロまで。さまざまなサイズのシールが、この現場で作られている。例えば、ケーキの上に載っている『アレ』なんかもそう。じつは、あなたも生活のどこかで丸研特殊印刷のシールを手にしたり、目にしたり、手に取っているはずだ。

「シール印刷の技術も、発展はめざましいです。昨今は、デジタルで印刷でき、さらにいろんな加工ができるようになってきた。金箔の箔押しなども、これまでは版を作ってホットスタンプという熱と圧力で押していたものが、プロットタイプでデジタルで箔押しできたり」

デジタル印刷機を導入している会社は、全国、世界で見ても多くはないという。

「これは、レーザーカッターでカットしています。今のところ、デジタルのほうがアナログよりも印刷時間は長いんですが、それまでの段取り諸々を考えると色数が複雑なものだったり、少数の枚数を作るならデジタルのほうが便利です」

もっと人に喜んでもらえる
デザインの取り組みを

地域、社会貢献も進んで行う。5月14日に、東彼杵町の『Sorriso riso』にて開催されるウクライナ支援金グッズ販売&トークイベント『Piece to Peace』への協賛も、『一般社団法人 東彼杵ひとこともの公社』の森一峻さんからの連絡を受け、すぐに引き受けることを伝えた。

「森くんから連絡がありました。すぐに返事をして(笑)。8年前に帰ってきた時に波佐見町商工会に入って、青年部で初めて会いました。同い年なんですが、それまでは交流もなかったんですが、今ではいろいろやりとりしていて。そんななかで、今回のウクライナ危機。別の企業や団体からも協力依頼があったのですが、間接的に関わることが多かった。何かしら、私たちも動ければと思っているところに話をいただいたので、ぜひ協力したいと(笑)」

丸研特殊印刷が、ウクライナ支援金グッズで主に関わっているのが、オリジナルデザインのシールの製造と、岩嵜紙器さんと共同でのマグネット制作だ。

「マグネットへの直接的な印刷ができないので、シールにしたものをマグネットに貼り付けて、そこからプレス加工を施すことで完成させます」

紙のパッケージデザイン会社の岩嵜紙器をはじめ、地域の会社とも連携を取る。

「特に、岩嵜紙器さんからは箱に当てるシールを依頼されます。また、逆にシールを作りたいけど、それを治める箱がいるとなると岩嵜さんのところにお願いしたり。持ちつ持たれつの関係の中で、やりとりをさせていただいています。”パッケージ”という意味では、同じ業種なので」

「今回は、イラストレーターの伊達(雄一)くんがデザインしています。前から仕事をしていたのでデザインを見た時に彼のだとすぐにわかりました。これから、シールを刷るにしても数種類刷って欲しいなどの様々な要望が出てくるので、どんなニーズにも積極的に応えられるようなシステムを作っていきたいです」

丸研特殊印刷HPはこちら→ https://maruken-sp.jp/

ひと、イベントについての詳細は、以下のそれぞれの記事をご覧ください。

店 名
株式会社 丸研特殊印刷
所在地

〒859-3722 長崎県東彼杵郡波佐見町岳辺田郷446−3Google Map

お問合せ
TEL
0956-85-4424