3人の女性たちが紡いでいく、花と夢の物語 『ミドリブ』

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『ミドリブ』は東彼杵町千綿を拠点に活動している、店舗を持たない花屋さん。バリエーションに富んだ作品づくりを行いながら、『Sorriso riso千綿第三瀬戸米倉庫』やイベントへの出店、ワークショップの開催、飲食店や整骨院の空間装飾を行うなどその活動は多岐に渡っています。

また、結婚式での装飾や記念日の花束制作などのオーダーも受けており、SNSなどを通じて次々と新たなオファーが舞い込んでいるとか。人の心をパッと明るく華やかにする、そんなミドリブの温かな魅力は多くの人から評判を呼んでいます。

メンバーは、花束やスワッグ制作を主に担当する飯塚陽子さん(写真左)、空間デザインを得意とするプロデューサーの堤彩子さん(写真中央)、生花を使った作品制作やイベントの企画発案を担当する下野惠美子さん(写真右)。

実は3人ともIターンあるいはUターンで長崎へ移住しており、毎日の子育てにいそしむお母さんでもあります。年齢も経歴も出身地も違いますが、集まればにぎやかな笑い声が絶えないほど、仲良しの皆さんです。

どうして『ミドリブ』?

ミドリブは、当時はまだオープン目前だった『海月食堂』の看板作りを彩子さんが任されたことが全ての始まりでした。制作を続けていくうちに「看板だけだと少し寂しいかも…」と感じた彩子さんは、周りに緑を増やしてみようと思い立ちます。

彩子「やるならお金とか関係なくやりたくなったんです。そこで10年以上花屋さんで働いていた陽子ちゃんと、子供の時から生け花を続けている惠美ちゃんに『面白い仕事があるからやってみない?』って声を掛けさせてもらいました。陽子ちゃんはその頃あまり元気がなくて心配だったし、惠美ちゃんからは『お花に関わる活動をやりたい』って話を聞いていたのもあって」

初めての3人での仕事は緊張を交えながらのものとなりましたが、この機会をきっかけに「これからも皆で一緒にやっていこう」と活動していくこととなりました。

そこで彩子さんが思い立ったのが“屋号を付けること”。名前があれば伝わりやすく、自分たちも一層やる気が出るのではないかと考えたのです。しかし良い案が浮かばなかった彩子さんは、夫の豪輔さんに相談を持ち掛けることにしました。

彩子「豪輔に相談した時に、陽子ちゃんや惠美ちゃんはお花がしっかりできるからゆくゆくは緑全般を扱う花屋さんのようになりたいことや、結婚式とかイベントの装飾も手掛けたいこと、そして町の文化度を上げてみんなが楽しめるようにしていきたいって伝えて。それに私たちの活動が『新しい婦人会(ニューフジ)だね』って友人たちから反応があったこともあり、豪輔からはニューフジの部活的な意味合いで“ミドリブ”で良いんじゃない? ってアイデアをもらいました」

やがて2017年7月に『ミドリブ』として本格的に活動を開始。当初はイベント出店やワークショップ開催、空間装飾が中心だったそう。そこで出会った人たちと新たな繋がりが生まれ、次第に活動の幅を広げていきました。

2021年現在はコロナ禍によって予定していたイベントが軒並み中止となっているものの、個人からのオーダーや結婚式での装飾のお仕事が増えているとか。

3人が生み出す、魔法のような作品たち

ミドリブがつくる作品の数々は、いずれも3人の美学を感じるものばかり。心まで彩り豊かに洗練されていくようです。

惠美子「作品を作る時は、季節感や植物そのものの素材感が活きるように演出しています。あるいは中心にしたい植物があれば、その花の色から世界観を広げていくとか。使っているものは生産者さんや卸屋さんから買わせてもらったり、私の家の庭で育てているものを使ったりしますよ」

陽子「制作スタイルとしては、オーダーをもらってお客さんのことをじっくりと考えながらお花を仕入れてコツコツ作って…という感じです。それと今はソリッソリッソへ月1回出店しているので、その日に向けて花のアレンジやスワッグを作ったり。あと最近は結婚式の注文を頂くようになって。そこでは私が花束を作り、惠美ちゃんがお花を生けて装飾していく感じかな」

ミドリブでは東彼杵町川内郷にある『抱星窯』や波佐見町の『ながせ陶房』との合同展開催や、パッケージメーカー『岩㟢紙器』との母の日ギフト企画など、積極的にコラボレーションも行っています。

また、クリスマスやお正月、ハロウィンなどのイベントに合わせたコラボも実施。毎年恒例で『ながせ陶房』と共作している特製のしめ縄はくじらの髭の店舗でも発売しているので、気になる方はぜひチェックを。

惠美子「新たな可能性を拓きたいこともあって、異業種の人たちとコラボレーションしていきたくて。ファッションとか本の世界の人たちとも機会があれば一緒にやってみたいですね」

陽子「彩ちゃんと惠美ちゃんって人と関わることが好きだし、人の心をつかむのが上手いんですよ。2人がいろんな縁をつないでくれたからこそ、ミドリブが大きくなってきたんじゃないかなって思います」

広がり続けるミドリブの夢

年々活躍の場を広げているミドリブの皆さん。今後チャレンジしていきたい夢はどんどん膨らんでいるようです。

彩子「素敵なお葬式をつくってみたいと考えていて。いわゆる従来のお葬式という型にはまらず、故人の人柄やご家族の想いを汲み取った心のこもった形が提案できたら、と。私のお葬式も、皆で笑いながら美味しいものを食べて送ってほしいです。その時は喪服じゃなくて一張羅で。そしておばあちゃんになっても、皆でこうやって色んな活動をしていけたら良いな。3人でフランスへ研修旅行に行くことも大きな夢です」

陽子「今までミドリブで色んなことを経験させてもらって、やりたかったことがどんどん叶っています。想像以上のこともたくさんあったけど…(笑)。私たちがフラワーアーティストとしてもっと世間に認知されて、この活動で生活が成り立つようになれたら良いなって思います」

惠美子「一つ一つ誠意を込めてお仕事をやらせてもらうことで信頼が出来てきているので、それに応えられるようおごらず怠けず勉強を重ねて大きくなっていけたら。それに季節のお花のコラム連載をやってみたいですね。夢が広がって妄想が止まらない…(笑)。活動当初は3人で『かもめ食堂』みたいな映画になりたいねって話もしていました」

最後に、東彼杵で活動していくことについて伺ってみました。

惠美子「3人とも他県からの移住ですが、もしそのまま留まっていたらミドリブのようなことはできなかったかもしれません。東彼杵に来たからこそ快く協力してくれる友人や仲間に出会えて、自分たちがやりたいことができるようになったし、新しいことに挑戦しやすくなりました」

これからも紡がれていく『ミドリブ』の物語。植物たちに彩られたストーリーはいつまでも、誰かの心に明かりを灯す大きな力になっていくことでしょう。

ミドリブの「ひと」についての詳細は以下の記事をご覧ください。