あなたは“フェムテック(Femtech)”という言葉をご存じだろうか。フェムテックとは女性(Female)と技術(Technology)が掛け合わされた言葉で、女性のライフステージが変化するごとに起こる様々な悩みを解決し、快適な暮らしへと導いてくれる製品やサービスを指す。
フェムテック市場は世界的に成長を遂げており、日本国内でも数多くの製品が開発されている。全国に店舗を展開するオーガニック専門店での販売をはじめ、大手デパート内にもフェムテック専門店がオープンするなど大きな注目を集めている。
長崎のフェムテック市場をリードしているのは長崎市万屋町にある『布なぷきん・布おむつ専門店りぼん(以下りぼん)』だ。りぼん特製の布なぷきんはその品質の良さから全国にファンを抱えており「経血が減って生理がとても楽になった」「自分の身体が変化していくのが楽しみだ」という人も。先日東京と大阪で開催されたイベント『Femtech Japan2022』では布なぷきんが完売するほどの大盛況だったという。
そして2022年秋、私たちくじらの髭の店舗でりぼんの布なぷきんの販売がスタートする。それを記念して『株式会社りぼん』代表・大原万里亜(おおはらまりあ)さんにインタビューを実施。布なぷきんの詳細や女性の身体の深い話までたっぷりと伺った。
りぼんの布なぷきん
りぼんの布なぷきんは主に3タイプ。スナップボタンで下着に固定できる羽根つきなぷきん、三つ折りで使い、汚れたら折り面を替えられる四角なぷきん、そして経血が多い日にナプキンの厚みを出したりナプキンの交換のために羽根つきなぷきんの上に重ねて使えるライナーがあり、全ての製品に日本オーガニックコットン協会認定のオーガニックコットンが用いられている。
いずれもサイズ展開があるため、その日の状態で使い分けができる。また、肌触りもふわふわな真綿のように温かい厚手タイプと、すべすべで滑らかなベーシックタイプの2通りがあり、季節や好みで選べる。さらには布なぷきん初心者やまとめ買いしたい人のためのセット商品もあり、至れり尽くせりのラインナップだ。
どの製品もあらかじめ豆乳を浸透させ、その上から草木染めを数回繰り返し施しているため、30分〜1時間水に浸けておくだけで血液などのたんぱく質がはがれ落ちやすくなるという。浸水した後は入浴時などにサッと手洗いし天日干しすればお手入れ完了だ。
そしてさらに注目なのは、片面をオーガニックコットン、もう片面が国産シルクで作られたおりものシート『Feel Me(以下フィールミー)』である。“わたしを感じる”と名付けられたおりものシートは、京都・丹後産のシルクを存分に使った贅沢な逸品だ。
万里亜さん(以下万里亜)「思考と子宮はつながっているって感じていて。自分の身体のこと、特に子宮や膣周りに意識を向けることはすごく大切なことだと思います。生理の時のナプキンなど、性器まわりにどんなものをあてたら快適に過ごせるのかって……これまで無視し続けてきたことにちゃんと目を向けて感覚を研ぎ澄ませて生きていくことと、自分の人生を自ら選んでいくという生き方はつながっていると思うんです。だから私は『自分を感じて生きていこう!』って意味を込めてフィールミーを作りました」
シルクはデトックス効果が高く、保温・保湿効果も大いに期待できる。肌に当たる瞬間はヒヤッとするものの、しばらくすると体温になじんでほわっと温かくなっていく。また、殺菌効果もあるため匂いがかなり少なくなる。万里亜さんいわく暑い日はシルクを、身体が冷える日にはコットンの面を使うのがおすすめだそうだ。
布なぷきんで身体が変わる
布なぷきんはりぼんの工房ですべて手作業で作られている。布なぷきんの染料となる植物を手摘み、布を豆乳染めし、植物の薬効を出すため数日かけて煮出して布を染め、裁断と縫製を行うという工程を3週間から1ヶ月ほどの時間をかけて行う。
染料に用いられる植物は、力が最も満ちる満月の日に摘み取られる枇杷の葉、茜の根、柘榴の実の皮だ。それぞれで色や特徴は異なるものの、いずれも月経不順や生理痛、更年期症状、不妊など女性の身体には嬉しい改善効果が期待できる(詳しい効果はりぼんのHPや店頭でチェックを)。
遥かはるか昔に生きていた女性たちの生理は、男たちが狩りや漁に出ていく満月に出血が始まり、男たちが家に戻る新月に次の排卵があるというリズムだった(未成熟の女性は成長しきれていない身体を守るためリズムは逆だったそうだ)。そして人間を含む動物はそもそも天敵に襲われるかもしれない夜は本能的に出血が止まるという。
しかし紙ナプキンが主流となってしまった現代では、ストレスフルな環境と吸水し過ぎてしまう化学的な成分が子宮を冷やし、本来の力を抑えられてしまうことで月経不順や月経過多、重い生理痛などのトラブルを生み出しやすくなってしまった。
そんなトラブルを改善し、子宮本来の力を再生してくれるのが布なぷきんだ。身体を優しく包み込む素材で子宮を温めることで、次第に身体のリズムが月の満ち欠けに合ったものになり、夜の経血量もかなり少なくなるうえ諸症状も改善していく。その効果は個人差があり1ヶ月〜半年ほどかけて現われるが、場合によっては使い始めてすぐに実感できる場合もあるという。
万里亜「例えば12歳から30年間紙ナプキンを使った人がいるとして、42歳で布なぷきんに変えたとしても、たった1ヶ月から半年くらいで身体が整ってくる。それだけ子宮って『力を取り戻したいよ』っていうパワーが強いんです。だから布なぷきんを怖がらずに、気軽に一度チャレンジしてほしいなって思います」
もっと気軽に、生理のことを話そう
最後に万里亜さんがおすすめしてくれたのが『生理カルタ』である。生理期間中やその前後に起こる“生理あるある”が可愛いイラストとなっており、性別や年代を問わず友人や家族で遊びながら生理を学べるものだ。りぼんではこの生理カルタを長崎県内すべての小中高校と子育て支援センターに寄贈している。
生理カルタを開発したきっかけは、万里亜さんが中学校で生理の講演会を行うようになってからのこと。学生たちは最初こそ気恥ずかしそうにしているものの、次第に女子も男子も興味を持って聞いてくれるという。
しかし、いざ異性の友人や学校の先生、親などと生理の話になるとどうしても不快感がよぎってしまう。そこで、生理を題材にして「これってどうなの?」と気軽に質問し合えるようなツールがあれば「お互いの壁を取り払って楽しく勉強できるのでは」と思い立った。
万里亜「ヨーロッパのように昔から膣のオイルマッサージが習慣になっている国ならいいんだろうけど、いきなりフェムテックを生活にどんどん取り入れようっていうことに抵抗のある人が日本にはまだまだ多いなあって感じています。生理日や排卵日を予測するアプリなどは取り入れやすくても、性器周辺のケアなどは文化や国民性の違いで話題にするのも難しいと感じることもありますね。でも、性器まわりを意識してお手入れしていくことって、自分のすべてを受け入れて自分自身を大切にすることにつながっていくとても重要なことなんです。そこの部分の抵抗を少なくして、まだ拭いきれないギャップを埋めていくのがりぼんの商品だと思っています」
ぜひ肌ざわりを確かめてみて
りぼんのライナーは1枚1000円~、布なぷきんは1800円~ではあるが、布なぷきん1枚1枚にかけられる手間ひまや生理の悩みが改善していくこと、そして紙ナプキンとは違い何度も繰り返し使えることを考えると、かなりお手頃な価格となっている。
布なぷきんのやわらかく温かな肌ざわりに、きっとあなたも虜になるはず。店頭では実際に感触を確かめることも可能なので、ぜひあなたのその手で素晴らしさを体感してほしい。
りぼんを運営する大原万里亜さんの「ひと」「こと」の記事は下記リンクからもご覧になれます。