20代男子3人組の鋭い感性に価値観が揺さぶられる。手作り雑誌「YIPPEE MAGAZINE(イェピーマガジン)」の第2号が出ました【tajuramozoph(タジュラモゾフ)】

長崎と佐世保を拠点に雑誌づくりにチャレンジするtajuramozoph(タジュラモゾフ)という、23歳男子3人組がいる。彼らは長崎県立大学を通じて知り合い、3年生のとき、就職活動を一旦止める形で本格的に活動をスタート。在学中の翌年2020年には「YIPPEE magazine(イェピーマガジン)」第1号を発行した。

A4サイズ、全236P。製作期間は約1年間。取材、撮影から編集、誌面のデザインまですべて彼ら3人で行い、アルバイト代を貯めて自費出版した労作だ。

彼らの鋭い感性や独特の切り口が多くの反響を呼んだその約1年後。待望の第2号が、ここ、東彼杵Sorrisorisoにやってきた。

2020年冬、Sorrisorisoとの出会い

「YIPPEE magazine(イェピーマガジン)」。雑誌名の由来は、達成感や喜びを意味する「YIPPEE(やったー!!)」から。やっとのことで編集作業を終え、3人でちらほらと挙げていった候補の中の1つだった。

彼らとわれわれが初めてお会いしたのは、第1号が発行された2020年冬のこと。たまたまメンバーの2人、そうたさんとたくみさんがSorrisorisoを訪れてくれたのだ。そこで彼らの活動について伺っているうちに「この子たち、めちゃくちゃおもしろい!」となり、東彼杵のグループライン「たしてひがしそのぎ」に仲間入りしていただくこととなった。

そしてその約半年後、「YIPPEE magazineの第2号ができました」とメッセージが舞い込み、「たしてひがしそのぎ」がワクワクに包まれたのである。

B5サイズ全132Pにぎっしり詰まった膨大な時間と熱量

第1号の制作を始めた当時、彼らには雑誌づくりやインタビューの経験はまったくのゼロだった。古い雑誌を読み込んで研究し、特に気に入った1990年代のテイストを誌面に盛り込んだ。

テーマは“pika-pika | mera-mera(ピカピカ メラメラ)”。同世代の男女16名15組の、何かに情熱を注ぐ姿や夢に向かって輝く姿、迷いや葛藤などを2~3時間のインタビューを通し描き出した。

今回発行された第2号では、テーマを“Tic Tac(チクタク=時間)”とし、ロングインタビュー2本とルポルタージュ1本の計3本をメインに据えた。それに加え、イラスト、漫画、フォトグラフ、エッセイなど、身の回りの若手アーティストにも声を掛けコンテンツを増加。読み物に加えファッション的な要素も盛り込まれた、魅力あふれる一冊だ。

ちなみに、第2号の発行後、Sorrisorisoが定期的に選書をお願いしている、長崎市の「ひとやすみ書店」店主・城下康明さんからさっそく冊子が送られてきた。

▲「YIPPEE magazine」への想いが綴られていた。

自分たちが楽しいと思えるものととことん向き合い、形にしていく。そんな純粋なパワーに、われわれおじさんおばさんたちは、ガンガンと価値観を揺さぶられてしまったわけである。

▲取材時にたまたまお会いした、「山﨑マーク」の山﨑社長も彼らを応援したくなってしまいました。

40ページ、5万文字でも足りない!古物商・豊島さんの不思議な魅力

では、気になる第2号の内容を少しだけご紹介しよう。

まず1本め。「tajuramozoph(タジュラモゾフ)」のリーダー的存在・りょうさんが執筆した、長崎市の「古物 豊島」オーナー豊島さんのロングインタビュー記事だ。

取材にかけた時間は、2020年8月の約1ヶ月間。インタビューの録音データは約30時間を超えた。ページ数は40P、文字数は約5万字におよぶ。

りょう「削ってコレです。全部載せたら、100Pになりました。」

——1ヶ月の取材期間はすごいですね。人間ドラマのようなものが見えてきましたか?

りょう「そうですね。まず最初に、幼少期のことからお話をお聞きして、現在へと辿っていきます。その中でも心理学的な問いを投げかけてみたりします。そこでまた深く掘り下げて質問をするのを心掛けていました。」

1人の書き手が、1人の人物に40P以上を割くことへの情熱と、雑誌の自由さについて改めて舌を巻く。そしてそれほどまでに、りょうさんの観察眼は鋭く、豊島さんへの敬意は深い。

りょう「お店で話をする機会は多かったんですけど、『お金ないけど、長期インタビューさせてください』って、なかなか言い出せなくて。やっとお願いしたらすんなりと。『若いから、とことんやれ』の言葉が嬉しかったです。」

バイトをしながら10日間通い続けたレコードバーの深い夜

次は、そうたさんが執筆した「ステージ上の不思議な男」。小説のようなタイトルに思わず引き込まれる。こちらは佐世保市塩浜町にある「Cafe Bar & Music BESSIE SMITH」のマスター・小田原さんを取材。10日間、毎晩通い詰めてインタビューを敢行した。

小田原さんは55歳。佐世保出身で、18歳のころ東京に出て数々の経験を積んだのちUターン、その後この店を開いた。そうたさんはふとしたきっかけで店に通うようになり、小田原さんに強い興味を抱いたという。取材依頼をしたところ、快くOKしてくれた。

そうた「小田原さんも、豊島さんのように僕らの活動を面白がって見てくださってました。」

——「ステージ上の不思議な男」。面白いタイトルですよね。この方も、一週間ぐらい追いかけて?やはり、人生観とか面白いですか。

そうた「はい。チャレンジ精神がとてもある方で。小田原さんは、僕たちの活動に対して『若いっていいねぇ』って言ってくださる方々となんだか一線を画している気がします。」

令和二年七月豪雨の被害に遭った故郷・熊本県人吉市を記録

——これは、深そうですね。

たくみ「この日たまたま僕が実家の熊本県人吉市にいたので、実際に経験したことや取った行動を書きました。最初は、雑誌に載せるつもりはなかったんですけど、2人に『書いてみなよ』と言われて。載せると決めてからは、また人吉市に戻って、写真を撮ったり人々に話を聞いたりしました。」

この取材を終えてからの2021年8月、未曾有の豪雨でふたたび九州各地が被害に見舞われた。ここ近年のこうした災害は、現在くじらの髭に関わる人々の生活に大きく影響を与えたものもある。われわれも少しでも力になれればと、東彼杵への移住を手助けしたり、災害で店舗を失ったメーカーさんの商品を売る手助けをしたりした。

こうした支援の経験もあるわれわれから見ると、たくみさんの執筆した記事のタイトル“共生と略奪こそ私たちの営みなのか”には、どこか心に刺さるものがある。執筆の手応えをたくみさんに伺ってみた。

たくみ「記録として残ったことは良かったんじゃないかと思います。それ以上の意味は、僕自身もあまり見出せていないですね。」

——この雑誌自体が保存版というか、この先もずっと残っていくものだと思いますから。しかもコロナ禍で起きた災害。とても貴重な記録だと思います。

今回、まさにテーマのごとくメンバーの3人がそれぞれの“時間”を注いだ、とても読み応えのある雑誌が仕上がった。第1号と比べ、雑誌のベースのようなものは出来てきたとのこと。長期インタビューを経験したことで、短時間のインタビューでは見えてこない、取材対象の思いや行動、心の動きなどより深い記事を書くことができた。

長い時間をかけて取材対象の深層に入っていくことは、同時に彼ら自身にとっても表現したいことや方向性と向き合うことに繋がったようだ。「言葉にはできないが、テーマが徐々に見えてきた」と3人は話す。

「まだまだ面白くなる余地はあると思います。」と、メンバーのそうたさんは話す。

偶然の「時の記念日」

「YIPPEE magazine」第2号の発行は6月10日だった。

りょう「今回、“時間”というテーマだったんですけど、発行後に読者さんから『その日は時の記念日だよ』って言われました。3人ともまったく知らなくて。ははは。」

そんなたまたまも重なりつつ、次号への準備へと歩を進める「tajuramozoph(タジュラモゾフ)」の3人だった。

ちなみに、チーム名の由来を伺うと、こんな風に決めたそうである。

3人「せーの!」

そうた「タジュラ!」
たくみ「モゾフ!」
りょう「爆弾!」

りょうさんの放った爆弾はむなしくも消えてしまったそうだが、口にしたこともない架空の単語が結びつきチーム名が誕生した。こんな偶然性やひらめきが形になる楽しさも、彼らは教えてくれる。

▲たくみさん画。Tシャツなどのグッズ展開も視野に。

古い雑誌が、時代を超えて人々を惹きつけるように、長く読まれる雑誌を目指したいという3人。

そうた「第3号は何をしようかなと考えていて。僕、日常の中で起こるちょっとしたハプニングが好きなんですけど。そんな一瞬を逃さず深堀りして、形にできたらいいなと思います。」

今後、彼らが独自の目線で切り取ったものが、どう面白く形になっていくのか楽しみだ。

「YIPPEE magazine(イェピーマガジン)」に凝縮された彼らの情熱や生みの苦しみ、取材対象の人生や思い、時間は、これから時を経てもきっと色あせることはない。

「YIPPEE MAGAZINE 2」は、現在Sorrisoriso内にて取り扱い中だ。ぜひ手に取ってすみずみまで楽しんでみてほしい。

ひとについての詳細は以下の記事をご覧ください。

ひと:23歳の男子3人組、雑誌をつくる。【tajuramozoph(タジュラモゾフ)】

記事:山本 千尋
取材:森 一峻
写真:森 一峻

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