豊かな自然と穏やかな気候で生まれる。 全国品質ナンバーワンの『そのぎびわ』

手間暇かかっているからこそ日本一。
東彼杵町の明時さんちのびわが、おいしいワケ

奈良時代から存在し、本格的に栽培され始めたのは江戸時代からだと言われている『びわ』。”庭に植えると病人が絶えない”という迷信があるが、びわの木を求めて病人たちの行列が絶えなかったという逸話から生まれたという説がある。なぜ、病人はびわの木を求めたのか。びわは、栄養価に優れ、特に葉の部分は古くから薬として用いられるほど優れた効能があるからだ。そんなびわだが、長崎県は収穫量・出荷量共に日本一と言われ、さらにその中でも特に『そのぎびわ』が極上だという。

ビニールハウスに入った瞬間、あたり一面に生い茂るびわの葉と樹に圧倒される。”徹底的に管理されたジャングル”。この光景を見て、言葉が脳裏に浮かんだ。

「びわの木は、そのままにしておくと上へ上へとどんどん伸びていきます。なので、ハウス栽培では残す枝を数本決めて、残りは横に倒します。露地栽培のびわの木とは全然見た目が違うでしょ」。そう語るのは、東彼杵町の果物農家に生まれ、20年以上柑橘系とびわの栽培を行ってきた三代目、明時幸治さんだ。平成元年に「長崎早生」という品種のびわを導入し、現在はハウスをメインに栽培をしている。

ひとについての詳細は以下の記事をご覧ください。
ひと:日本一の”長崎びわ”を、そのぎから全国へ。東彼杵町の柑橘&びわ農家・明時幸治さん

長崎びわの歴史は、江戸時代からと古い。露地栽培が主だったが、平成に入り市場性の高い”ハウス栽培”の導入を進めていった。日本一のびわ生産地として、ブランドの維持・拡大に力を注いだ結果、平成3年から『長崎びわ』は日本一の単価となった。今日に至るまで、高品質な果実として市場で高い評価を得続けている。

明時「びわの出荷量も、単価も、おそらく日本で一番だと思います。びわの産地として有名なのは千葉、鹿児島、長崎なんですが、一番長崎が多いです」

びわ栽培で、一番忙しい時期は冬から春にかけての収穫時季。1月くらいから採り始め、ピークは3月。そして、4月で片付けるという流れだ。果樹としては珍しく、冬の11~2月の間に花が咲く。果実はデリケートであるため、傷がつかないように2~3月に、ひとつひとつ実に袋をかけていく丁寧ぶり。袋かけはもちろん、収穫まで全てが手作業であり、相当な手間暇がかかっている。

明時「びわは3月の彼岸前が忙しいです。1月くらいから約2ヶ月をかけて全てを収穫していきます。その時期は、スタッフ3人で毎日、日中ずっと作業をしています」

びわの選別基準として、カタチや色、表皮の艶などを見極める必要があり、生産者の経験が物を言う。

明時「一回自分で、グラムと色を選別したあと、作業員と指導員とでもう一回選別をして送ります。大きさは、大きい卵くらいが目安です。糖度は採れ始めのもので11度。後半になると15~6度まで上がります」

路地栽培とは異なり、ハウス栽培は技術が必要で苦労も多い。手間隙をかけた分、育てたびわの価値は大きい。

明時「びわに関しては、県内の平均単価が2000円と全国で一番高い金額が付けられています。特に、東彼杵のびわはキロ単価が県内でもトップです。平均より1000~1500円くらい高いんじゃないかな。”高品質を育てる”ことが結果的に効率が良く、ブランドとして価値が上がれば売り上げも良くなります。私が育てたびわは、銀座千疋屋に取り扱ってもらっています。品質を維持しないといつ切られるかわかりませんが、自分が農家として帰ってきたときからのブランド力なので、このイメージを守ってやっていくつもりです」

びわのブランドを維持して、もっと、びわの美味しさをみんなに知ってもらう。明時さんの挑戦はこれからも続いていく。”びわのフリーズドライ”も思案中だ。くじらの髭も、過去に明時さんからレモンを分けてもらってフリーズドライに加工し、”レモンソフトクリーム”として販売した実績がある。

明時「びわでワインを作るという話が出たことがあります。ただ、それは1日30キロ取る必要があるらしいので今のところ現実的じゃない。ただ、認知のためのフリーズドライはやれそうだし、良い方法だと思います。普段は売り物にならないものを試食で出すんですが、今はコロナ渦のため、すべて肥料として土に戻しています。なので、その分をフリーズドライとして商品化すれば、認知度が上がって良いのではないかと考えています。」

「例えばですが、もし仮に甘くないイチゴが陳列されていたとしても、見た目と認知度で売れると思います。それだけイチゴは知名度が高いですし、何より見た目が人を引きつけます。ですが、びわはそれだと生き残っていけません。なにより、食卓に上がる果物として認知されていません。関東では、食育活動で学校の給食に出したりするんですが、食べ方がわからないという子どもがいて驚きました。剥いてないと食べないんでしょうね。アンケートが返ってくるんですが、本当にびっくりです(笑)。びわを食べる時は、軸の方を持ち、お尻から剥くと皮と実の離れがよく食べやすいです。保存は常温で、食べる2~3時間前に冷やすと美味しく食べられますよ。」

ハウスびわを見学した後は、露路びわを見るために坂を登った。日に照らされ、気持ちの良い汗をかきながらふと後ろを振り返ると、空と、大村湾と、あたり一面に広がる田んぼが、一斉に目に飛び込んでくる。びわが爽やかな甘さを蓄えるには、豊かな自然と温暖な気候、そして、燦々と降り注ぐ太陽光が必要だ。すべてが、揃っているこの地で、徹底された管理体制のもとで育つ『そのぎびわ』は、”極上の美味”が約束されている。

ひとについての詳細は以下の記事をご覧ください。

ひと:日本一の”長崎びわ”を、そのぎから全国へ。東彼杵町の柑橘&びわ農家・明時幸治さん

記事:東 孔明
取材:東 孔明
写真:小玉 大介

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