『続、楽しい人生、おいしい人生のサポーター』大安ご夫妻の新たな取り組み。

取材・文・写真

写真

東彼杵中学校の真横、国道205号線から一本入ったところに位置する大安(だいあん)歯科医院。「楽しい人生、おいしい人生のサポーター」という理念のもとメンテナンスの重要性を伝え続け、健康な人がたくさんくる歯科医院となって20周年を迎えた。地元で歯科医院を開業後、現在は塾も運営されているという大安ご夫妻が次に計画していることとは?

第三次地域貢献計画

国道205合線沿い、コメリ東彼杵店の隣に位置する場所に飲食店2店舗を迎え入れる予定で募集を進めている。およそ14坪と16坪のスペースを現在建設中で、とうひ不動産のホームページには情報が掲載中。完成予想図や工事の様子などが公開されている。詳細はこちら

努「親戚の人からそこの土地を買いませんかって話が急に来てびっくりして。最初断ったんですね。使う目的もないし。断ったけど、二人で酒飲んで話してるときに考えたら、あの土地は元々自分たちが開業したかった土地で、それが20年後に回って来たんじゃないかと。酒飲んだり、ご飯食べたりするのが好きであちこち行ってたけど、贅沢を言えば家のすぐ近くにそういう飲食店が少なくて。タクシーで行ったり、代行で帰ってきたりっていうとこばっかりなんで、歩いて行けるところにお店があったらいいねっていうのを何年も前から言ってて。ん?チャンス来たんじゃない?って。そしたらちょっと背伸びかもしれないけど、土地を譲っていただこうっていう風に方向転換して。何をするか…..迷わず思い続けていた飲食店にするぞ!っていう感じで始まったのが一昨年ぐらいやったかな」

20年前は欲しくても手に入らなかった土地が、20年後には土地の方からやってくるという、フィクションのような展開。それがこのプロジェクトの始まりだった。

努「自分の感覚かもしれんけど、外食して夜に居酒屋さん行ってっていうのがこの辺の人少なくて。お店が少ないっていうのはあるけど、そういう文化も少ないのかなって思って。当院スタッフもそうですけど仕事帰りに「ご飯食べて帰ろうか!」ってこっちに来てからあんまり聞かないかな。お店さえあればそういう楽しい文化っていうのがこの地域でも出てくるんじゃないかと思って。それで何か役に立てればと思って、計画をしてるところなんですよ。感覚的にはこの医院も塾も今度の飲食店も延長線上で計画してて」

『楽しい人生、おいしい人生のサポーター』という理念で歯科医院を開業し、子どもや親のサポートができるのではと学習塾を始めたお二人。患者さまの健康や子どもたちを応援してきたわけだが、今回のプロジェクトに関しては綾乃さんの方が前向きだったようだ。

飲食店をやりたいけど、本業で手一杯そんなときに舞い込んできたチャンス

綾乃「一旦夫と話してお断りさせていただいたんだけど、その後からまたムクムクムクムク気になりだしちゃって。やっぱり思いが色々繋がってきて、地域貢献でもありますし、行動ば起こさんことには何も始まらんけん。上手くいけば地域活性化になってくるし、場所もすごくいいのでテナントに入っていただく方も喜んでくださるんじゃないかなって思って。私たちの思いに何かピンと来て『チャレンジしてみたい!』って勇気を出して手を上げてくださる方がいるとありがたいですね」

東彼杵という場所が綾乃さんの性格も考え方も変えたのか、さまざまなご縁や出会いに恵まれ、結果的にここに来てよかった、東彼杵が大好きになったと何度も口する綾乃さん。最近では『ひとまずやってみる』をモットーにしているとか。

綾乃「私すごく変わったんですよ!東彼杵町に来てから。もうポジティブいきすぎて心配されるぐらい。たぶん夫の影響もあるし、色んな人と町内に来て関わらせていただく中でも色々感じて変わってきたんだと思います。最初は行きたくないって言ってたけど、来て良かったと思って。小さくなって、自信のないまま長崎でどがん過ごしとったかなっては思いますよね(笑)。東彼杵町って、人も含めて素晴らしい場所なんだと思います」

努「妻はこっち来てから本当に変わって、それこそ結婚した頃はいつもネガティブなことばっかり言ってて。どうやったらポジティブになるやろうってずっと思って、話し合いをしてて。で、あるとき気づいたらあんまり言わんようになってきて、ちょっとポジティブになったのかなって思ってたらもうこの有様ですよ(笑)」

迷ったときは変化の大きい方を選べ

綾乃さんの変化には努さんも納得のようで、今では努さんがブレーキをかけることもしばしば。しかしお酒は例外、その時ばかりは手綱も緩み、これまで幾度となく二人で突き進んできた。

努「2人とも酒飲むから、なんかしようっていうときはまあまあ酔ってて『やっちゃおう!』ってなることも結構あって。でもそれがきっかけで動いたこともたくさんあるんですよ。とくにここは土地からの話だったし、本業ではないのであんまり大きなリスクも背負えない、もちろん不安ではあるけど。もう勢いも止められんぐらいきてるし、『俺もいいと思うよ、やろうぜ』って」

綾乃「子供たちにもその姿を見ててほしいっていうのは伝えてて。人のためにって言ったらおこがましいですけど、自分たちがお陰様でいるんだからそれをお返しできるようなことをするだとか、やりたいなって思ったことがあったら思い切ってチャレンジしてみるみたいな。そういう姿を見ててほしかって。今回のことをきっかけに子どもたちには伝えてはいますけどね。『え、建てよっと?』とか言われたりしたので『楽しいと思うよ!』って(笑)」

歯科医院と学習塾、そしてこれから3足目のわらじを履こうとしているおふたりだが、どこからそのパワーが湧いてくるのだろうか。

努「それこそひとつの出会いですよね。塾長とたまたま出会わなければしてなかったですし、元々そういう縁があって親戚の方の縁とか、全部そうですよ。偶然が多いというか。でもその時にチャンスを捕まえるか、行動できるかだったかなっては思いますけど。20代のときにお世話になった先生から『迷った時は変化の大きい方を選べ』って、そしたら楽しいよって言われたから、そっから五分五分で迷ったときは変化の少ない方は捨てて、変化の大きい方を選ぶようにずっと今まで生きてて。結果的には変化の大きい色んなことがあったけど、それで良かったのかなって」

飲まなくったって会えるけどそういうことじゃないんだよな、人生には飲食店が必要だ

では、お二人は具体的にどのようなお店に入ってほしいと考えているのだろうか。

綾乃「ひとつのことに特化した専門店もそれはそれでいいと思うし、みんなが喜べるところっていうか、行けば誰でもなんか食べたいもんある居酒屋みたいな。コロッケもあるし刺身も食べれるし、パスタもちょっと出てくるみたいなお店もいいですね。とにかく私たちが欲張りなんですね(笑)。子どもたちが野球とかやってたとき『今日も子どもたち頑張ったね」ってアガリって言って飲み会するんです。練習とか試合とかあった後に親同士で『今日アガリしゅーで』みたいな感じで。そしたら子供たちもすごい喜んで、親も開放的になって楽しんで。あっという間に親同士仲が深まって、子どもたちみんな我が子みたいに親密になっていくんですよ。やっぱりなんかそこには食べ物があったり、飲み物があったり、お酒があったりして。それで大人も子供もゆるーってなって笑顔になる。そういうのがあるといいなっていう感じですね。大きなスペースではないですけど、誰っちゃ利用できるっていうか。子どもも行きたか、大人も行きたかってなるのが理想です。欲張りですね(笑)」

理想のお店はあるものの、思いを理解してくれる、やる気のある方であれば精一杯応援したいという。お酒を介してチャレンジできたこと、そして食を囲んだコミュニケーションが人生を豊かにしてきた大安ご夫妻を動かしている。

努「サントリーのコマーシャル知ってますか?色んな映画とかドラマのお酒を飲む場面が次から次に出てくるCMで。‘‘人生には飲食店がいる’’っていう。昔の映画から最近のドラマまでお店で酒を飲んでるシーンが色々出てきてブルーハーツの『情熱の薔薇』が流れてる。あれを酔っ払ったときに見てて、なんかイメージが湧いて。あ、こういう場所が地元にもっとあるといいんじゃないかっていうのもあったですね。あのコマーシャルがピンと来て」

綾乃「いんごちさん(屋台屋いんごち)にそのCMのパネルがあるんですよね。‘‘飲まなくったって会えるけどそういうことじゃないんだよな、人生には飲食店が必要だ’’みたいなコピーがあって。『そうなんですよ!』っていっつも思うね。飲み会したり、同じお店で飲んだりしてご縁が広がっていく経験をたくさんしたし、お店の方には我が子の成長まで見守ってもらってて。お互い応援し合えるっていいですよね。新しいお店はどんなお店になるかな、どんなオーナーさんかなってワクワクします

努「近所の人たちが歩いて行って、行くと知り合いがいて、『おう久しぶり!元気しとる?』でご飯食べながらわーってなって『次なにする?』っていうような場所に。まあ夢かもしれんけど可能性はあると思うけん。その最初の拠点になって、後に続いて近くにまたお店ができたりしてくるとなお良いかなと思ってて。その役割を自分たちができればと。第一号になってくださる方には、ぜひ夢を持ってチャレンジしてほしいですね。そりゃあもう、私たちは感謝しながら、全力で応援します!」

そしてもうひとつ大安さんが実現できればと考えていることがある。それは現在募集しているテナントに移住者を迎えることだ。

努「町内の人のチャレンジの場っていうのもいいけど、よそからやって来てもらって、少しやけど町の人口も増やしてもらって。その人がお店をやってくれるってのもいい形だなと思って」

新しく事業を始める苦労を知っている大安さん。だからこそ完成には内装まで仕上げ、用意するのは厨房機器だけという万全の状態で新しい出会いを心待ちにしている。

「みせ」「ひと」の記事につきましては、以下をご覧ください。