夢を分かち合い、一丸となって“三方良し”の未来へ。『上田皮ふ科』の社員研修がスタート

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上田皮ふ科』は、大村市にある皮膚科・小児皮膚科・美容皮膚科である。先進医療を取り入れた確かな技術はもちろんのこと、医師やスタッフの皆さんによる心尽くしの対応が大変評判で、長崎県内のあちこちから次々に患者が訪れている。

また、福祉事業として『一般社団法人Palette 障がい者グループホーム スイサイ』の運営にも力を注いでおり、様々な状況にある障がい者が親しみのある地域の中で、自分らしい暮らしを送るための居場所づくりを行っている。

院長および代表を務める上田厚登先生には以前取材を行い、これまでの人生の出来事や上田皮ふ科のこと、今後の展望などについて詳しくお話しいただいた。そしてその内容をもとに『くじらの髭』にて記事をお作りした経緯がある。今回の記事とあわせてぜひご覧いただきたい。

望みを聞き、伝え、理解すること
上田厚登院長

2023年4月12日、東彼杵町にある『uminoわ』にて上田皮ふ科の社員研修がスタートした。このような社員研修が始まったのは、会社・社員各々の未来への望みを叶えたいという上田先生の熱い思いがきっかけである。

上田皮ふ科には35名のスタッフがおり(その内33名は女性)、子育てに励む人も多い。もしもの際はスタッフ同士で臨機応変に補いつつ、それぞれのワークライフバランスに応じたスタイルで仕事にいそしんでいる。そして今後はひとりひとりの現状や価値観、今後への願望をふまえて、ワークライフバランスをスタッフ各々により適した形に見直し尊重していきたいと考えている。

上田先生「『相手の望みが叶うことを自分の望みにする』ということを私は意識するようにしてるので、スタッフの願望が叶うことが私の願望なんです。上田皮ふ科にはいろんなメンバーがいますので、ひとりひとり思いが違って当たり前とも思っています。クリニックのメンバーに向き合い、寄り添っていければ。私がスタッフの皆さんの応援団になります」

理想を実現するには注意深くお互いの言葉を「聞き」、お互いに言葉を「伝える」力を育てながらそれぞれの願望を理解し合い、深く結びつく信頼関係を築くこと、みな一丸となってこれからの未来へ向かうために医院・社員の幸せや望みが互いにイコールになることが重要であるとのことで、この度の社員研修が発足することとなった。

役割に応じていくつものチームをつくっている上田皮ふ科では、スタッフ間のコミュニケーションが欠かせない。午前のワークショップでは数人ずつのグループに分かれ、言葉でのやり取りをはかりながら組み立てるパズルゲームを実施。互いの言葉を聞き、伝え、相手の真意を理解する大切さを改めて実感する機会となった。

昼食は東彼杵町にある評判のフレンチ『リトルれお』のサンドイッチ、uminoわ内のカフェ『茶飲場CHANOKO』のパティシエである中村雅史さん特製の焼菓子のほか、CHANOKOで人気のベジポタスープやそのぎ茶が特別に用意された

特製のランチセットで楽しく盛り上がった昼食タイムを挟んで、午後からは上田院長、事務スタッフの古賀結子さん看護師の山下さんの公開取材を実施。望みを深く理解するには、その人のルーツや文化的な背景などを知ることも大変重要である。3人には今後の願望はもちろんのこと、人生の出来事や仕事への取り組み方などもそれぞれ1時間ずつお話しいただいた。

上田先生「今回古賀さんと山下さんのお話を聞いて、やっぱり色んなスタッフの人たちがいらっしゃって、私はどうやったらその人たちの応援団になれるかなと改めて考えさせられました。そして気持ち新たに明日からですね、自分の中でこういったところが貢献できるのかなと気付くきっかけにもなりました」

これからも定期的に取材を行い、今回は聞き役に徹していただいた他のスタッフさんにも順次お話を伺っていく予定だ。さらに1年後には、目標や願望のゴールにどれくらい近付いているかなどを改めてお話しいただくことになっている。

障がい者がいきいきと暮らし、働く場を

上田先生への公開取材では、ご家族についてのお話もじっくり伺った。知的障がいのある3歳年上の兄のこと、元音楽教師で現在は介護状態にある父親のこと、そしてガンと判明してからわずか半年で亡くなってしまった母親のこと。3人の懸命な姿は上田先生の福祉活動に大きな影響を与えている。

上田先生「母親がガンだと分かって6ヶ月であっという間に亡くなってしまったので、命って限られてるというのをまざまざと教えてもらいましたから、やはり限られた人生の中で挑戦をしていこうと。それで、知的障がいのある兄や介護状態の父親を持つ今の私だったら何ができるかとか、医療関係者でもあるのでサービス利用者・提供者両方の立場が分かるからこそできることは何かと模索しました」

現在の日本において、障がい者施設の従業員や家族からの虐待行為が毎年2000件報告されている。また、障がい者が住むグループホームなどの施設や就労支援施設も不足している現状がある。現在は大村市内でグループホーム『スイサイ』を営んでいるが、障がい者が理想的な環境で暮らし、働く場所の選択肢をさらに増やせるよう貢献していきたいという。

2023年の秋か冬ごろには、新たに障がい者向けの就労支援施設をオープンすることが決定している。新施設では、スタッフが皆いきいきと働きながら学ぶ場にしたいこと、そして障がい者の雇用もしたいと考えているという。上田皮ふ科では化粧品(u-beauty)の通信販売も行っているが、それに関わる作業を一緒にできればと新たに会社も設立する予定だ。

上田先生「全国各地の施設へ見学に伺うと、この人には何の障がいがあるんだろうと思うほどいきいきと働いている障がい者の方もいらっしゃって。長崎にもこのように障がい者の方が働くような場所があればと思ったんですね。そういった場はやはり障がい者の方が望むビジョンでもあるんです。そして大村市、長崎全体にも喜ばれるような、皆にとって良いものじゃないかなと。今までのような競争社会じゃなく、共につくっていく『共創』社会に絶対になると思っています」

数年後には障がいの状態や年齢などにとらわれない『富山型デイサービス』のような共生型施設のオープンも予定している。上田皮ふ科の“医療”やスイサイの“福祉”サービス、新就労施設に加えて音楽やアートを楽しめるような場も設け、地域になくてはならない唯一無二の存在になればと上田先生は語る。

上田先生「今は大村市、長崎全体もそうだと思うんですが、若い方がどんどん流出していて、クリニックもですし医療業界、福祉も人手不足と言われているんですけども。私たちのような中小企業というか小さなところが頑張れば、もしかしたら面白いことやってるなと思ってもらえたら、わずかかもしれませんが人口減少に対しての貢献ができるのかなと。で、その中で私たちができることは何か……結果的にスタッフにとっても、患者さんや利用者さんにとっても、地域にとっても三方良しとなるような場を作れれば。それが今の私が考えてることであり、現時点でのこの組織の願望のど真ん中にあります。いつかやりたいとかそういうことではなく『絶対にやる』と決めております」

ただ、熱い思いがあっても現実的には収支やビジネスとしての課題もある。先述した富山型デイサービスのような施設経営はかなり難しく、法律との兼ね合いもありなかなか現実化されないというのが現状だ。

上田先生「収支の部分での課題が現実としてはあるんですが、どうにか思いの部分とあわせて実現させていくということと、素晴らしいビジョンがあっても誰がしていくかっていうのも非常に大事かなって思ってて。どうしてもビジネスとしての側面だけで打算的にとらえられるケースもあると聞いていますので、私や私の仲間もそうですが思いがある方はいらっしゃいますし、誰がするかというのがすごく大事かなと思っています。私は兄のこともありますし、障がい者の家族の気持ちが分かる人間だということで、まずは動いていかないといけないかなと」

仲間を募集しています

三方良しとなる医療や福祉を通じたサービスをつくっていくにあたって、共に動いてくれる仲間が必要だそうだ。サービス管理責任者や医療・福祉関係の資格を持っている方、『クレド』に心から共感し仲間と共に望みを実現したい方など、これからの活動に興味を持った方はぜひ一度、上田先生のもとへ訪れてみてほしい。

上田先生「私たちの活動に対して興味を持っていただける方がいらっしゃったらですね、お気軽にお声がけをいただければと思います。最近はいろんな発信をしているおかげか、相手方から一緒に働きたいというお声もいただいていますが、私たちはまだまだ多くの仲間を必要としております。賛同いただける方はぜひ遊びに来ていただけたらと思います」

一日かけて行われた社員研修ではスタッフ同士の新たな一面を知り、改めて未来への思いを感じる貴重なひとときとなった。

上田先生「私たちはクレドみたいに思いを言語化して実現しようと皆でやってるんですが、やっぱり今回のように、自分たちで言葉にしたり映像にしたりして皆に伝えていくっていうのは大事だなと思っています。そして森さんをはじめ、多くの応援してくださる方との出会いもあって、こうやって発信をしていくことでもっと多くの仲間が集まってくれるのかなっていうのもあるんですね。一人で出来ることって本当に限られてるなって思ってますし、一つの組織ができることも限られてくるのかなと思うんですが、同じような目的をもって共感いただける方の力を借りて、ぜひですね、大村市ひいては長崎全体をちょっとでも盛り上げていきたいなと思っております。本当に貴重な機会をいただきまして、ありがとうございました」

スタッフのため、患者さんのため、そして地域のために動きだしたプロジェクト。これまでは様々な状況で成し得なかったことにチャレンジし「三方良し」を実現しようと奔走する上田皮ふ科の皆さんの姿は、長崎だけでなく日本中にすばらしい影響をもたらすだろう。

上田先生への公開取材の様子は以下の動画で。お母様とのエピソードは要注目です。

『上田皮ふ科』の研修に関する記事は、以下をご覧ください。