『料亭 栄喜屋』の新たな取り組み。“team NAGASAKI SAFETY”

写真

取材

油断大敵とは言うものの、ようやく、各地でお酒を伴っての外食もできるようになった。見目麗しく、口も胃袋もご機嫌にしてくれる東彼杵の『料亭 栄喜屋』は3代目の森俊通さん・由美さん夫妻が中心となって店を切り盛りしている。ニューノーマルの世の中に適応するために、新たな取り組みなども積極的に取り入れているそうだ。

東彼杵の老舗料亭、栄喜屋。
今、通いたい和のお店

これまで、『みせ』と『ひと』との記事において創業94年に渡る栄喜屋の歴史をお送りしてきた。そして、現在の栄喜屋の料理は、森俊通、由美さん夫婦2人のタッグが生み出している。

俊通「アイデアも出してくれるし、そのアイデアに対して自分も考えて発言できるし。俺の意見も通る時と通らんときのあるし(笑)。そこは上手く融合して、面白かことばしてみようと。コロナ禍になって特にそれば感じとる。俺も料理学校でほんの少しやけど、洋風も学んどる。やけん、ちょっと洋風にしてみてもよかよねとか」

由美「それが玉子焼きたい。チーズば入れてさ」

俊通「もし、修行時代の親方にチーズ入りのだし巻きば見せたら『とっさん、腕ば上げたな。でも、お前は一体何を巻いてるんだ』ってきっと言われるんだろうなと。そんな気持ちで、いつも巻きよっとさ(笑)」

気さくで明るく、そして真面目な夫婦は常に二人三脚で、雨にも負けず、風にも負けずやってきた。コロナにだって負けずに、知恵を出し合い、情報を取り入れ、新しい試みに挑戦していく。これまでも、これからも。そんな東彼杵の栄喜屋は、今こそ通いたい和のお店である。

栄喜屋のニューノーマルの取り組み。
What’s “team NAGASAKI SAFETY” ?

栄喜屋が取り組む、新しい生活様式の対応策として考えたのが、”team NAGASAKI SAFETY”への加盟だった。

NAGASAKI SAFETYは、長崎県内の施設における安心・安全の認証マーク。長崎大学の協力のもと、長崎県が官民一体のチームで取り組む安心・安全のための認証制度である。認証に当たって、審査員が定期的な実地審査を行うことで県内外からの訪問客に安心・安全に「泊まる」「食べる」「遊ぶ」を心から楽しんでもらうことを目的とし、宿泊施設をはじめ、観光、飲食、交通、その他認証された施設では、長崎大学監修のガイドラインに則り、新型コロナウイルス予防対策に取り組んでいる。

チームナガサキセーフティ認証施設には、このようなステッカーとポスターを目印として配布している。 これが掲げられているお店は、ガイドラインに沿った衛生活動を行う安全・安心な滞在が叶う施設として周知されている証なので、安心して食事を楽しめる。

俊通「コロナになって、法事も宴会も無くなった。大人数での食事が制限されて、やっぱりお客さんの方もだいぶそこば気にするようになった。東彼杵町の人間って、というか長崎県人って真面目な人間が多かと思う。国がダメと言ったらちゃんと守る人の多かさ。感染の恐れのあることはなるべく避けて、多くはできんよねと自分たちで判断しよらすとやけど、こっち(飲食店側)としては困る。テイクアウトとか、ランチとかも県の補助のもと始めてみて、だいぶ助かった部分はあるっちゃけど」

入り口の体温測定器にはCO2センサーが内蔵されており、的確に体温を測定してくれる。

俊通「体温測定器はよかったね。もう一つの測定器にガンタイプがあるたい。あれは、知らない人間に一回一回測りに行かんばけん。でも、こいはお客さんが自分たちでせんばいかんけん。下に手順の掲示ばつけとるけん、自分たちでやってくれる。そいで、センサーが体温が正常か超えたかをその都度知らせてくれるけんわかりやすか。調理場にも届く音やけん、お客さんが入ってきたことも同時にわかって助かるね」

食事はマスク会食を徹底。手洗い場にも消毒液など必要なものが全て設置されており、各エリアで手順を説明した掲示板が貼られてある。

「できることなら、また元に戻って欲しか。変わっていくのはしょうがないことかもしれんけど、できるだけ変わらんで欲しかね」

ここで、改めて考えさせられる。記者自身も含め、今こそ消費者は店側の気持ちを慮るべきだと。確かに、マスクをしながらの会食は難しいし、慣れるのにも時間はかかる。だが、そこまで徹底してでも客に安心・安全に外食を楽しんでもらいたいという店の配慮や気持ちを汲み取ると、決して「あそこの店は、色々規則がうるさいから行かない」という考えにはならないはずだ。店側も、本音は今までみたいに自由に楽しんで欲しいはずで、辛さを押し殺しながらそれでも最大限楽しんでもらう努力をしている。客は神様などではなく、店全体の雰囲気は客によっても作られていることを、私たちは忘れてはならない。

俊通「そいけど、来らした人の中で『ちゃんと配慮しとるけん安心する』と言ってくれる方もおる。評価ば結構してくれてさ。この間も10人くらいで宴会ば考えとる人たちから、『NAGASAKI SAFETYには入られてますか』と聞かれたけん『ウチは検査受けて認証いただいてますよ』と。会社によっては、認証を受けていない店では宴会は自粛するように言われとるとこもあるらしか」

加盟を申し込むことはできても、その検査内容は厳しいという。

俊通「最初に店に検査しにきて、あれが足りん、これが足りんとチェックの入る。細かかチェックシートの記入もあるし、テーブルや店の寸法なども全て図った上で的確に指示の入るさ。言われたことば、次の検査日までに準備して揃えておいて、次の検査で通れば認証をもらえるという仕組みたいね」

大皿、取り皿のスタイルは完全にNGなので、全てひとりずつ出すスタイルへと変えた。変えることは多くあれど、現在では法事や宴会などもニューノーマルのスタイルで行うことが可能となった。

これまで、コロナ禍で我慢の日々を過ごしてきた私たちだが、我慢してきたからこそ今日、ほんのひとときだけでも、ギスギスした日常から少し羽を伸ばして美味しいものに舌鼓を打ってもよいのではないだろうか。そんな時は、team NAGASAKI SAFETYから認証を得ているお店で、節度を守りつつも旬の味覚を味わい、外食の楽しさを改めて堪能したい。

ひと・みせについての詳細は以下のそれぞれの記事をご覧ください。