新たな交流拠点『uminoわ』に佐世保からもエールが。「茶飲場CHANOKO」のスープは「らーめん砦」プロデュースだ!

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「やったことない、楽しそう」とがっちり握手!

2022年2月に無事オープンを迎えた、東彼杵の新しい交流拠点『uminoわ』。テナントの1つ「茶飲場CHANOKO」では、佐世保発の新世代拉麺店『らーめん砦』がプロデュースしたスープが味わえるのだ。

同店店主“龍ちゃん”こと川尻龍二さんは、“森ちゃん”ことくじらの髭・森さんからのオファーを受け「今までやったことない、楽しそう!」と二つ返事でオーケー。東彼杵のメーカーともコラボした、体験したことのない地元愛たっぷりな味をぜひ堪能してみてほしい。

佐世保らーめん界のエンターテイナー、龍二さんにメニュー開発の裏話を伺いながら、スープとの出会いにワクワクしてみよう。

ひらめきの連続で創り出されるらーめんたち

龍二さんの両親が経営していた中華料理店「龍ちゃん亭」の廃業とともに創業した「らーめんMARU龍」。未経験ながらも手探りでらーめん作りに励むさなか、龍二さんは震災がきっかけで『貝白湯(かいぱいたん)スープ』を考案し次なる一手を打った。

「らーめんMARU龍」の看板を弟さんに託し、最後の砦の意味を込めてオープンしたのが万津町にある『らーめん砦』。

豚骨や鳥ガラ不使用の物流に頼らない、誰もやったことのないらーめん作りをベースに続々と生み出されるオリジナルメニューたち。スタンダードな「砦」をはじめ、海老をこれでもかと盛り込んだ「超人的海老潮」、レモングラスとスパイスを使用したエスニックな「亜細亜」など、どれもが龍二さんの「マジで美味いから食べてみて!」がほとばしる逸品たちである。

その1つ、その名の通り「味噌」は、森さんが龍二さんに紹介した大渡商店のものを使用している。

実際に口にして、もしくは現地まで足を運び惚れ込んだ食材から新メニューが生まれるのかと想像してしまうが、意外にも器からインスピレーションを受けることも多い。

龍二「この器可愛いなあーと思って買って、その色から入ってイメージして立体図描いて、こんな感じでこのアイテムを使おうとか。大きなところから入ってだんだん小さくしていくのが俺の作り方」

まるで作品のようだ。まずはコンセプトから入って、詳細の味を決めていくスタイル。龍二さんにとってらーめん作りは、創作活動でもあるようだ。

龍二「思い通りにいかなかったこともたくさんある。見せてないだけで」

水面下の龍二さんの姿を知る人は本当に数少ない。きっと家族ですらも。

龍二「新しい味を考えるとき、影響を受けているなと感じるのはおばあちゃんの存在。全盲だったんだけど、共働きの両親の代わりに三食メシ作ってくれて。買い物とかは俺が行ったりしてたんだけど。

刺身とか切ったりできるし、軽量せんでも感覚で美味しく作れてた。俺はそれを小さい頃から体験しよったけん。感覚で、自分の味覚で美味しいらーめんは作れるって信じとる」

ちなみに、らーめんの作り手でもあったお父さんの影響は特に受けていない(受けないようにしている)ようだが、「ちゃんぽんとチャーハンだけは、親父には勝てんね」とぽつり。

「来世は公務員」のはなし

「来世は公務員」という、一度聞くと忘れられない名前のらーめんがある。これも、龍二さんの意外なところからのひらめきで誕生した一杯だ。

龍二「らーめん界の公務員って、きっと豚骨だと思う。一番安定、国の中心のイメージ。豚骨らーめんっぽくしたかったけど、貝白湯ベースなので豚は使いたくない。魚粉、胡麻、ナッツをつかってみたりして、ドロッとそれっぽくして仕上げた。『本当は公務員になりたかったんだもんね…』というところからのメニューネーミング。思いつくきっかけなんてそんなもんでしょ」

どのメニューに関してもそうらしいのだが、気がつくと勝手に決まっているものなのだそうだ。

龍二「やっぱりね、これを見たお客さんからは『公務員になりたかったんでしょ?』って言われる。はじめはちゃんと説明してたんだけどだんだん端折るようになって、『そっすねー!』で済ませたりしちゃう」

「茶飲場CHANOKO」スープ開発の道のり

いつ来店しても刺激をくれる“龍ちゃん”の作るらーめんファンでもあるくじらの髭・森さんが龍二さんにスープ開発の話を持ち掛けたのが2020年5月あたり。新店舗「波佐見ラーメンセンター」がオープンした直後のタイミングだった。

大渡商店の味噌を使ったスープを第一の案として、夏には少しずつ試作を重ねた。特に女性の方々に喜んでもらえるような、ほっと温まる優しいスープを。

龍二「森ちゃんから初めて話をもらったときは、やったことないし、楽しそうって。ほら、彼女ができて、一日中楽しいやん。それと同じワクワク感というか」

「いや、それ自分だけやけん!」とツッコまれ、「うるせー!」と返す龍二さん。本当に楽しそうだ。

ところで、らーめんとスープのみの開発って同じように進むもの?

龍二「スープとらーめんはちょっと違うけど、出汁の取り方とか全体的なバランスはほぼ一緒。工程が少ない分、スープだけの方がいくらか楽ね。難しかったのは、スタッフへのオペレーションを踏まえたレシピを考えることかな。誰にでも対応できるようにする必要があったので」

こうしてスープの試作は続き、完成間近と思われたのだが…。

龍二「龍二 vs COVID-19っすわ。9月に。味覚やばいぞってマジで凹んで。でも、なにがなんでもやらんばぞ、と」

一旦は開発ストップと思われたが、周りに不調を見せぬよう出来る限り進めていった。最近ようやく本調子に戻りつつあるという。森さんもハラハラしながら見守ったエピソードだ。

あとは、楽しく仕事するだけ

これから『uminoわ』スタッフとして活躍していただく、さだまさしファンのひかりさん。頑張り屋だから大丈夫、という龍二さんのお墨付きだ。練りに練ったオペレーションシステムはきっと彼女を支えてくれるだろう。

メニュー開発と、さらにお店のプロデュースを同時にやっていくのは並の体力と精神力では務まらない。東彼杵でさまざまなプロジェクトに関わる森さんが「すごい」と手放しで褒めてしまうほど、龍二さんのアイディアとセンス、コーチング能力はすごいのだ。

龍二「何が一番大変かって、考案したメニューをきちんとした商品として出すまでよね。例えば、『サバをスープに使ってみよう』とかいう、最初の発想の部分。あとは、リリースに向けてあれこれ削ぎ落としていくだけ」

メニュー考案からリリース、さらにはオペレーションまで。その過程は、「大きいところから入ってだんだん小さくしていく」龍二さんの丁寧な仕事が幾重にも重なっている。

準備は整った。

「あとは、楽しく仕事するだけ」

龍二さんは少年のような笑顔で二カッと笑った。

全国に散りばめられた「らーめん砦」のDNAは、ここ、東彼杵の『uminoわ』でもキラリと輝く。砦のさまざまな物語を引き継いだこだわりの一杯、ぜひ味わってみてほしい。