異例の経歴 希少なブランド「芳寿牧場」代表取締役社長 宮井宏泰さん (長崎県産品取材編:南島原市)

営業担当者が「芳寿牧場」の社長へ

2020年4月、「芳寿牧場」の代表取締役社長に宮井宏泰(みやい ひろやす)さんが就任されました。宮井社長は香川県高松市出身で、広島大学大学院を卒業し、伊藤忠飼料株式会社に入社。「大学では家畜管理学研究室で家畜の行動について研究をしていました。そのおかげで、飼料の営業時には養豚場の中に入り、問題点を見つけて、改善の提案をすることに役に立ちました」と宮井社長。その営業先で、平会長と運命的な出会いを果たします。

師弟、親子以上の絆で結ばれた2人

2010年に「芳寿牧場」の営業担当になった宮井社長は、すぐに平会長の魅力に引き込まれました。自身の結婚披露宴では父親代わりにスピーチをお願いするほどでした。宮井社長は次第に「ここで働きたい」という気持ちが強くなります。資本や事業提携先でもない取引先の「芳寿牧場」へ出向するのは異例のことでした。出向して5年が経過した頃、今度は平会長が宮井さんに「ここでずっと働いて欲しい」と説得にあたりました。「私の性格は全部わかっとるし、後を継がせるなら宮井しかいない」と決めていました。

みせについての詳細は以下の記事をご覧ください。

健康な個体づくりから美味しいは生まれる

県内有数の事業規模を誇り、約1万7000頭の豚を管理するトップとなった宮井さんですが、平会長と同様に気さくに対応してくださり、人と会ってお話をするのが好きというのがよくわかりました。研究者からみた「芳寿豚」の美味しさは何なのでしょうか。「豚を健康に育てることができれば、体に蓄えられる美味しい成分が多く残ります。だから食べても美味しくなります。例えば、中鎖脂肪酸は美味しさを左右する成分の1つで、食べた時の食感に影響します。中鎖脂肪酸の溶ける温度(上昇融点)が人間の体温に似通っており、口の中で溶けることで美味しいを演出します。健康に育った豚は、それを多く蓄積しているから美味しくなるんです」と教えていただきました。

そんな社長に、芳寿牧場で育った豚肉のおいしい食べ方をお聞きました。

「1つ目は、ローストンカツです。1.5cmの厚さで、軽く塩(胡椒なし)衣をつけて、低温で揚げるんですけど、パン粉は細目がおすすめです。中はミディアムレアくらいが美味しさが引立ちます。

2つ目は、バラ肉のしゃぶしゃぶ。これも、ポイントは厚さで、しゃぶしゃぶ用ではなく炒め物用の厚さで。あとはポン酢がおすすめです。

3つ目は、酢豚です。これは隠し球です。ウデ肉を1cmの厚さで切ったものを1口台に乱切りし、軽く塩、片栗粉をまぶし、炒める。あとは、市販の酢豚の素でもいいです。酢豚を作ってください。肉多めが美味しく感じます。これは、私自身のご褒美レシピです。」

と語る宮井社長の嬉しそうに語られるお姿が印象的でした。

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