紡いできたひとの輪から踏み出す新たな一歩。『OSOTOYA代表 佐藤美穂さん』【長崎国際大学 佐野ゼミ生共著記事】

取材・文

  • 福田美桜(長崎国際大学佐野ゼミ生)

    福田美桜(長崎国際大学佐野ゼミ生)

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  • OSOTOYA

    OSOTOYA

OSOTOYA 佐藤さん メイン2

ハウステンボス駅から電車に揺られること30分。だんだんと隣接する壮大な海の横を電車で通ったり、山々の自然な香りが漂ってきたりと落ち着く雰囲気に包まれながら、大村市にある松原駅に到着しました。

そこから歩いて早5分、まるで隠れ家のような雰囲気を放ったお店がそこにはありました。携帯に映し出された地図と見比べながら、恐る恐る門に足を踏み入れると、そこには、田舎にある実家を彷彿させるような安心感とやさしさの空気感溢れるお店が佇んでいました。

OSOTOYA 佐藤さん 喫茶店の外観

そのお店こそが、今回の記事の舞台となる〈OSOTOYA喫茶室〉です。扉を開け、周りを伺うと部屋の奥から「こんにちはー!」という声が聞こえてきました。その声の主は、佐藤美穂さん。

2021年4月24日に〈サンドヰッチ OSOTOYA〉(以下、OSOTOYA)を、2023年9月1日に〈OSOTOYA喫茶室〉をオープンされた店主です。緊張気味で人見知りを発揮する私を、優しく出迎えてくれる佐藤さんの人柄に、固まっていた自分の心は徐々に和らいでいき、インタビューが始まりました。

OSOTOYAでの苦労とやりがい

この OSOTOYAがオープンして早3年、佐藤さんに OSOTOYAさんでの苦労ややりがいをお伺いしました。

OSOTOYA喫茶店 サンドイッチ

「店を開業する前は普通のスタッフとして違うお店で働いていたので、お休みがもらえて自分のやりたいことを休みの日にやれていたんですけど、お店を始めてからはプライベートの時間を作ることが難しくなってきてしまって。自主的に自分の時間を設けるっていうところに苦労しました」

お店の運営のことを考えるほか、佐藤さん個人としての自由な時間が取れないという状況の中、それでもこのお店を守ってきた理由、やりがいが気になって聞いてみました。

「飲食店という業種に携わって、お客様に空間やお料理をその場で体感していただき、その場で消費されて最後に評価してくださる、そのストレートに伝わってくる嬉しい言葉が自ずと自分のやりがいにつながっています」

OSOTOYA喫茶店 内観

やりがいを語る際、自然と笑みがこぼれる佐藤さんを拝見し、この店内で行われるお客さんとのやり取りがどれほど佐藤さんの力の糧になるのか察することができました。

また、この佐藤さんの人を安心させるような笑顔や空気感に魅力を感じられるお客さんも少なくないのだろうと思います。

初めてここを訪れたのに、この OSOTOYAがどこか懐かしいような安心できる空気感であるのは、松原という素敵な地の効果だけでなく、この場所を行き来する人たちの心温まる交流と相重なって形成されているからなんだろうと納得しました。

お客様との交流

そんな素敵な関係をお客様との間で築かれる秘訣は、佐藤さんの真摯な対応にありました。

OSOTOYA喫茶店 イメージ

OSOTOYAのインスタグラムのフォロワー数は約1.7万人(2024年8月現在)にも上ります。そこでは、色鮮やかな写真とともに、季節に合った新メニューの紹介やイベント情報が読みやすく丁寧な文章と一緒に発信されています。お客様に興味を持ってもらえるような投稿の作成、またURLなどで紐づけを行い、少しでも利用しやすいよう誘導していくスタイルを意識して行っているそうです。

お客様目線に立って展開される運営方針がOSOTOYAが持つ魅力の一つになっているのだろうと考えます。

転機

今回、サンドヰッチOSOTOYAとOSOTOYA喫茶室に続く三店舗目、〈OSOTOYAコメディールーム〉が新規オープンされることになりました。そこで、その新規オープンに踏み込んだきっかけを佐藤さんに伺ってみました。

OSOTOYA 佐藤さん コメディールーム

転機となったのは、大きく二つの要因からだといいます。1つは、佐藤さん自身の心境の変化です。この事業を展開し始めた頃は、味や見た目などお店にある商品のブランディングを守ることに一生懸命になっていたといいます。

「第三者に何かを託すということをまだ発想出来てなかったんです」

OSOTOYAというブランドを確立させ、ブレさせないための店主としての責任が大きかった部分もあり、方向性が曖昧になっていたという佐藤さん。そのような中で、このお店を営業してきた三年を通して、新たに佐藤さんの中に気づきが生まれ始めたといいます。

OSOTOYA 佐藤さん コメディールーム

「走り続けてきた3年間で気づかせてもらったことなんですけど、7名の従業員に恵まれて、その仲間たちと一緒に何かを作り上げていくことに喜びや達成感を感じ、そこにすごい魅力を最近感じ始めてきているんです。そこで、今がみんなでまたステップアップできるチャンスなんじゃないかと思っていました」

OSOTOYAというブランドが大きくなるにつれ、従業員も増え、自然とやりたいことの実現に幅が出てきました。また、その従業員たち皆、自分のことのようにお店を考えてくれる人ばかりが集結してくれたことで、スタッフ間での信頼が高まり、同じ志や目標をやり遂げていける最高の環境がつくられました。

「もちろん達成できることばかりでなく、失敗も多いです。毎回トライアンドエラーの繰り返しで、小さな成功体験でみんなと喜び合い、その喜びがさらなる挑戦のばねにつながっています。平面上で見た時、点にも等しい小さな成功体験を重ね、線となった時に初めてどのように経営していったらよいのか概要が見えてくるんです」

OSOTOYA喫茶室 ロゴ

イベントに参加したり、新メニュー考案で話し合ったりと、今の従業員との試行錯誤の上で確立してきたお店です。また、この仲間たちの間で任せられる・頼られるといった信頼関係が培われたからこそ、佐藤さんの中にチャレンジ精神が芽生え、それに素直に向き合うことのできる状況をつくれました。

キーパーソンは、森一峻さん、OSOTOYAの仲間、地域のみなさん全員
OSOTOYA 佐藤さん 地域の皆さんと

「三年前OSOTOYAをオープンさせてからずっと千綿の皆さんと交流をさせていただいていて。そこで出会った温かい皆さんと、すごい明るい一般社団法人東彼杵ひとこともの公社さんたち、支えてくださるSorrisorisoの皆さんたちとOSOTOYAが一緒に成長出来たらなにより嬉しいことだなと思いました。千綿は頼りになるレジェンドばかりで大船に乗った気持ちです(笑)」

OSOTOYAを一緒に盛り上げ、信頼できるこのメンバーで何かに挑戦したいと意気込んでいる時期に、Sorrisorisoを運営する森一峻さんのお声がけがあったこと、この二つが運命的に合致し、OSOTOYAコメディールーム新設の後押しとなりました。

OSOTOYAコメディールームのビジョン

人のご縁を大切にし、人同士の交流に重きを置いている佐藤さんが思い描く、OSOTOYAコメディールームの理想像が気になり、聞いてみました。

OSOTOYA コメディールーム外観
OSOTOYAコメディールーム 商品
OSOTOYAコメディールーム OPEN
OSOTOYA 佐藤さん コメディールーム
OSOTOYAコメディールーム ロゴ

コメディールームは漢字で“米饋室”と表記されます。米は、お店が提供する商品であり、間の饋という字はおくるという意味です。そして、ルームが室。お米で人を笑顔にするという意味合いでこの店名がつけられたといいます。

その為、佐藤さんたちが提供するお米でお客様を笑顔にしたいということ、今までのブランディングとは少し違う方向で活気にあふれ、このコメディールームにしかできない店づくりを目指していきたいと語られました。

「森さんをはじめ、公社の皆様、地域の方々がつくり上げられてこられたSorrisorisoという大切な場所に、私たちを招いてくださったことに対して恩返しをしたい。飲食店らしく町の方や県外の方、様々な人が集うこの場所でより多くの方のお腹と心を満たす存在になれたらいいなと思っています」

Sorrisorisoで新規オープンして間もない今、自分のやりたいことや様々な人との出会いを大事に挑戦していく、佐藤さんの姿はかっこよく輝いていました。ぜひ、長崎県を訪れられる際は、大村・東彼杵に立ち寄ってこのOSOTOYAコメディールームを旅のプランに入れられてみてはいかかでしょうか。

OSOTOYA 佐藤さん メイン1