新聞を見て今日が始まるという大切な日常を守るべく今日もみなさんの元へ新聞を届ける。
長崎新聞を主力商品とし、全国紙やスポーツ紙等を販売するそのぎ新聞販売センター。2021年2月には千綿地区の川尻新聞店と統合し、東彼杵町全エリアを担当することになった。新聞配達は時間厳守が原則だ。そうすることで読者との信頼関係を築いている。新聞を見て今日が始まるという大切な日常を守るべく、所長の石高晃司さんを中心に数十名のスタッフが、未明から夜明けにかけて忙しく作業している。
石高「午前1時、長崎市の本社印刷工場で刷り上がった新聞が東彼杵町に届きます。そこから配達エリアや配達スタッフごとに部数を分けて、1時45分ごろから順次出発します。遅くとも5時30分までには配り終えなければなりません」
東彼杵町の掲載記事をいち早く確認するのも石高さんの日課。空き時間ができれば、町内外の200名ほどが集うライングループ「たしてひがしそのぎ」へ新鮮なうちに情報を共有する。新聞を何事もなくすべて配り終えると、ようやく佐世保へ帰宅して就寝する。石高さんは2歳児から高校生までの子どもを持つ4男3女のパパである。学校が休みの日は当然、ゆっくりできるはずもない。
家庭を支える奥さんに感謝しつつ、昼過ぎには再び東彼杵町へ戻る。折込チラシを組む作業を行い、集金や会合等にも出向く。結局、一段落つくのは新聞到着前の数時間。ここで仮眠をとるようにしているが、なかなかグッスリとはいかない。目をつむると、新聞と販売店のこれからについて考えてしまい、頭の中を期待と不安が交差する。
石高「人口減少や読者層を考えると先細りは否めません。その中で、販売店として何を目指すすべきか。新聞をただ届けるだけでなく、その先を学ぶことの大切さを少しでも伝えられたらと模索しています。自分は同世代で考え方に差があることにショックを受けました。そういった体験をしてきたからこそ努力をしました。知識をつけることで心が豊かになることを知って欲しいです」
情報がわかりやすく集約された新聞を取っ掛かりに、さらに本やオーディオブックを読んで知識を深めた石高さん。それが自信となり、少しずつ成長することができた。新聞に親しむのは早い方がいいと思う。だから、新聞を小学校等の教材として活用する「NIE(教育に新聞を)」には、販売店としても積極的に関わっていきたいと考えている。
縁もゆかりもない東彼杵町で、地域と深く関わる新聞販売ができたのは、地域が温かく迎えてくれたからに他ならない。地域のためならできるだけのことは協力したいと思い、地元ではないが消防団にも入った。
石高「新聞配達は地域のみなさんが寝ている時間に回っています。もし、何かがあった時には自分がすぐに動けるし、誰かを助けてあげられるかもしれない。新聞配達は地域パトロールを兼ねる自警団のような存在でもあると思っています」
新聞販売にプラスした何か。高齢の世帯や一人暮らしの見守りもそう。地域に寄り添った付加価値の提供がこれからの販売店に求められることなのかもしれない。そんな中で、石高さんは別事業を行う株式会社ソノヒを立ち上げて、『縫製場 わ』をオープンした。
石高「この町に育ててもらい、自分が変われたからこそ何か恩返しがしたいとずっと思っていました。町に衣服のリフォームやリペアの専門店がなく、義理のお母さんの縫製の経験も生かせることから『縫製場 わ』を始めました」
新聞販売+縫製の新しいカタチ。『縫製場 わ』の店舗を構えて本格的に事業が動き出したら、新しい働き方も提案したいと考えている。朝は新聞の配達。昼間は縫製の内職はどうだろう。特に、女性の活躍に期待しており、さっそく配達スタッフに声をかけたところ好感触を得た。
石高「みなさんのその日が良い日でありますように。その日の始まりには新聞があってくれたらいいなと思っています」
日々是好日。その日その日が充実し、楽しくなるようなお手伝いをしたい。新聞販売センターも、縫製場も地域の中でそんな存在を石高晃司さんは目指している。
ひと・ことについての詳細は以下のそれぞれの記事をご覧ください。