子供たちが遊び、学び、楽しむお菓子の国をつくりたい。『株式会社フルカワ』

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取材

大村市に本社を構える『株式会社フルカワ』は、70年以上にわたって長崎県を中心にお菓子の卸や小売を行っている菓子問屋である。お菓子を卸している取引先は数百社にのぼり、長崎の子供からお年寄りまで、あらゆる世代の人たちに美味しいお菓子を提供してきた。

本社1階にあるショップ『オカシノフルカワ』ではフルカワが扱うお菓子を直接買うことができ、地元の子供たちでにぎわうこともしょっちゅうだ。また、近年では詰め合わせセット『くいしんぼうパック』などの企画商品や、製菓会社とコラボレーションしたフルカワオリジナルのお菓子シリーズ『九州じげもん街道』の販売も手がけており、これらも大変好評を博している。

このたびくじらの髭では、代表取締役社長を務める古川洋平(ふるかわようへい)さんと、洋平さんの父であり会長を務める芳和(よしかず)さんにインタビューを敢行。フルカワの始まりからこれからの展望まで、じっくりとお話を伺った。

70年以上におよぶ歴史
代表取締役社長・古川洋平さん(左)と会長・古川芳和さん(右)

それは1951年1月のこと。終戦後にお菓子の事業を起こそうと、洋平さんの母方の祖父が自身の兄や姉婿と3人で『有限会社古川兄弟商会』を立ち上げたのがフルカワの始まりだ。

元々は佐世保市内でお菓子の卸を行っていたが、させぼ四ヶ町商店街内の土地を縁あって購入。そこに設けた店舗『お菓子のデパート 銭屋』で小売もスタートした。銭屋は大変な繁盛ぶりで、お菓子を包む包装紙がお客さんに好評だったという。

1967年には長崎南部にも販路を広げるべく、長崎市赤迫に長崎支店を設立。当時長崎市内の人口が多かったことや、全国に店舗を構える大手スーパーと取引を結んでいたこともあり、こちらも大いに繁盛した。しかし、大手の取引先が徐々に手を引き始め、少しずつ売上が下降してしまう。業界の活気は低迷し、当時長崎に10社あった菓子問屋は次々に倒産。フルカワだけが唯一生き残った。

そんな状況のなか、古川兄弟商会は1973年に姉妹会社『株式会社フルカワ』を設立し、2009年に合併。改めて株式会社フルカワとして再スタートを切った。そして2014年には本社を長崎県の真ん中に移そうと大村市内に社屋を設け、現在に至っている。

人との巡り合いを大切にしたい
芳和さんは2022年10月に自伝を自費で出版。これまでの人生の出来事を事細かに記している。

会長の芳和さんは電話関連企業や建築企業を経て、結婚を機に33歳で古川兄弟商社に入社。長崎支店に長年勤務し58歳で社長に就任した。フルカワは人との出会いを心から大切にし、誰か困った人がいれば「一緒に頑張っていきましょう」とすかさず手を差し伸べてきた。芳和さんも同じく、様々な場面で心を尽くし続けてきた。

数千万円の累積赤字を抱え、いくら頑張っても儲けられない薄利多売の状況が何年にもわたり続いていたフルカワ。だが、苦しい経営ながらも長年続けてきた心がけのおかげで、いくつもの企業が力を貸してくれ、様々な危機的状況からフルカワを助けてもらったという。

かつて長崎県内に30店舗以上を構え、現在はイオン九州となっている『スーパーますや』は、芳和さんにとって忘れられない取引先の一つだ。ますやが佐世保市内に1号店をオープンするにあたりお菓子の取引をお願いされ、快く応じたのが交流の始まり。ますやには銭屋の包装紙も提供し、それでお菓子を包むとよく売れたという。やがてますやの店舗が増えていく毎にフルカワの売り上げも伸びていった。

創業者の山本重利氏は「フルカワには大変お世話になったから、大切にしなさい」とますや各店の店長やスタッフによく話していたそうだ。芳和さんはますやの営業を担当し、山本氏からは数々のアドバイスをいただく機会もあった。また、取引の際に店長や担当者からも手厚い対応をしていただいたことを今でもはっきりと覚えていると芳和さんは語った。

全国でおなじみのカルビー株式会社は、60数年前にえびせんを開発したものの売り上げが伸び悩み、非常に厳しい時代が続いたという。フルカワは「きっと困ってらっしゃるだろう」と先にカルビーへお金を送り、商品を後で送ってもらうという特別な方法で取引を行うことに。そんなやりとりを数度繰り返したころ、カルビー創業者の松尾孝氏から「助けていただいたお礼に」と株を分けていただくという嬉しい返礼があった。

芳和さん「良いことというか、感謝されるようなことをしておけば、本当に救われていくんだなって思うっさね。自分だけ生き延びようとか人を押しのけて生きていこうとかね、そういう風な生き方も一つなんだろうけど、一つの企業というか時代があるとすれば、やっぱり人と巡り合うってことを大事にせんばならんのやなって思いますね」

おもしろい菓子問屋へ
現在の経営理念は、元々芳和さんが考えていたものを洋平さんなりの言葉にアレンジしたものだそうだ。

時代の潮流が変化するとともに、菓子問屋の存在価値も変わってきていると社長の洋平さんは感じている。時代の波を味方につけるべく、少しでもフルカワの新たな価値を見出せればと様々なチャレンジを続けてきた。

その背景には、“業者”の印象が根強い問屋に対する世間のイメージを変えたいという思いもある。洋平さんが行ってきたのは企画商品の売り出しやオリジナル商品開発、カフェや雑貨店への販路拡大、キャラクター『フ〜くん』の発案など。「面白い菓子問屋」として何かできることはないかと現在も日々模索中だ。

また、洋平さんとしては新たなフルカワを目指すにあたって社員の認識も変えていきたいという。自分は問屋だからという考えにとらわれず、仕事に対する気付きを得たり、新たなアイデアを生み出したりなど自由な発想を持ってもらえたら、と洋平さんは語る。

洋平さん「働いて対価を得るだけだとなんかすごくもったいないなって思うし、一緒に過ごすなかで面白みというか、自分の人生的にプラスになることも一緒に作って共有していきたいなって。みんなで切磋琢磨して苦労しながら面白いことやってみることは楽しいと思うし、将来的に自分の生きがいとかにつながっていけば最高だよなって、働いてる人たちも」

しかし、理想の菓子問屋像に向けては課題もある。今フルカワのテーマとなっているのは「お菓子を愛すること」。どうしても“商材”としてのビジネスライクな視点になってしまいがちだが、そもそもお菓子そのものの魅力をもっと深く知り、多くの人に届けたいという思いを持たなければ、フルカワとしても育たないと気付いたからだ。

そこで洋平さんはお菓子のパッケージデザインなどの研究を始めた。お菓子には子供が思わず手に取りたくなるような楽しいデザインにあふれていて、遊びがいがあったりアート性が含まれているところが醍醐味だという。お菓子に遊びや学びが紐づけられていることに洋平さんは面白さを感じている。

また、洋平さんはお菓子の素材にも着目しており、無添加やオーガニックなどの選択肢も模索している。より多くの子供たちにお菓子を楽しんでもらえるよう、身体に配慮したお菓子の提供も計画中だ。

フルカワのキャラクター『フ~くん』。フルカワではフ~くんのバッグやキーホルダーなどの雑貨も展開。今後は絵本刊行を予定している。

これからは会社の現状を整理しながらフルカワがやれること、フルカワの魅力、そして社員の望みが少しでも一致できるよう、やるべきことにひとつずつ取り組みたいという。同時に、フルカワらしい新たなコンテンツを持つためにも自分たちでフルカワの魅力を再発掘し、積極的な情報発信をすすめていきたいと考えている。

洋平さん「伝えるってなかなか難しいなって思うんですけど、まずは発信したいことを軸にバンと持って、それにふれてもらう機会を増やしていければ。今回のインタビューで自分の天井みたいなものを取っ払わなきゃ、っていうのをより感じました」

代々の思いを大切にしながら、美味しいお菓子と楽しいひとときを届けてきたフルカワ。人を思う誠実な姿勢や、ワクワクさせてくれる斬新なアイデアがたくさんの人の心をつかんできた。

これからフルカワが築いていくお菓子の国はどんなところになるだろう。
それはきっと、おいしくて、やさしくて、たのしい国だ。

株式会社フルカワの「ひと」の記事については、以下をご覧ください。

店 名
株式会社フルカワ(オカシノフルカワ)
所在地

長崎県大村市寿古町811-1 1FGoogle Map

営業時間
月曜~土曜
9:00~17:00

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休業日
日曜

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TEL
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