東彼杵町一ツ石郷にある『有限会社 茶友』は、そのぎ茶の栽培・製茶・販売までを一貫して行っている会社です。2004年に代表取締役を務める松尾政敏さんが父親の三千男さんから茶園を受け継ぎ、法人化したのが茶友のスタートとなりました。
茶友で丹精込めて手掛けられたお茶は、その味わいの素晴らしさが口コミなどで評判を呼び、日本全国にファンが増え続けています。また2008年からは農林水産大臣賞を5回、2010年には天皇杯、2014年から開催されている日本茶アワードでは最高賞にあたる日本茶大賞を2回受賞し、品質の高さを裏付けました。
そして茶友はお茶会を開催し、そのぎ茶を普及する活動も行っています。定期的に地元客を招待して行うお茶会のほか、東京やドイツなどあらゆる場所へ積極的に出向き沢山の人へお茶の豊かな魅力を届けています。
茶友の看板『あさつゆ』
現在、茶友では8つの品種が生産されていますが、その中でも茶友の看板銘柄となるのが『あさつゆ』です。玉露のような濃厚な味わいを感じるあさつゆは天然玉露とも称される日本茶の品種。あさつゆがなければ甘味やうま味に優れた茶葉は生まれなかったと言われています。
政敏「あさつゆは京都で選抜され、今日の日本茶のうま味・甘味の嗜好の本となる品種です。数々のお茶のコンテストで上位を占めている『さえみどり』なんかはやぶきたとあさつゆが掛け合わされて出来たもので。だからそういう意味でもあさつゆが今のお茶の時代を作っていると言っても過言ではない品種なんです。ただやっぱりすごく栽培が難しいですし、製造も大変なんですよ。でも、このあさつゆの茶葉が出来上がり、味・香り・色を見ると他にはない充実感があるんです。近年栽培する人は少ないですが、希少なものとして受け継いでいきたいですね」
茶友のあさつゆは海もあり山もある東彼杵町独自の環境を利用して育てられており、濃厚な甘みとうまみ、優しい余韻が特徴。その品質の確かさが天皇杯受賞や一般消費者が評価を決める日本茶アワード入賞へと導きました。また2014年からはJR九州ななつ星クルーズへも提供されています。
そのぎ茶の魅力を最大限に伝えるお茶会
茶友では17年前からお茶会へも注力。年に4回、季節が変わるごとに地元のお客さんを招待し、茶友のお茶と地元の産物を使った手作りの料理やお菓子を振舞っています。また東京の日本橋でも定期的にお茶会を開催。少しでも多くのお客さんにお茶に親しんでもらえるよう、妻の美嘉さんと共に取り組んできました。
政敏「僕たちの仕事はお茶をつくることだけでなく、つくったお茶を美味しく飲んでいただくまでが仕事なんです。そしてお茶づくりを続けるには、お茶を飲み続けていただかないといけません。より美味しく飲んでいただき、生活の中に取り入れていただけるような普及活動をしなければと思っています。その活動の一環としてお茶会を開いているのですが、実際に消費者の方と対話をする機会となり、いろんな意味でお茶づくりの励みになっていますよ」
お茶会の輪は国内に留まらず、海外へも広がっていきます。日本茶アワードへ参加した際に「ドイツで日本茶を広める活動をしたい」という方に出会ったのがきっかけで、2016年から『日本茶ドイツプロジェクト』を開始。ミュンヘンで行われた展示会『フードアンドライフ』へ3年連続参加し、現地ではかなりの評判となりました。
またバイエルン州立博物館で行われたシーボルト展でのお茶会や、リゾート地エルマルの古城ホテルで日本茶と料理のペアリングをテーマにした催しも開催。いずれも席が完売するほど大反響を呼び、ドイツの人たちが日本茶へ高い関心を寄せていることが分かる経験となりました。
政敏「まわり切れないほど沢山のお客さんがいたので、お茶を提供するのが大変で(笑)。だけど素晴らしい経験をさせてもらえました。ありがたいことにとても良い機会に恵まれていると思います。『こういう事が出来たら良いね』『じゃあやりましょう!』って実際とんとん拍子に動いてみると、やりたいことは実現できるもんだなって。やってみたいと以前から思っていたことがどんどん叶っていますよ」
2020年には札幌でのお茶会のオファーがありましたがコロナ禍で延期。地元でのお茶会も中止を余儀なくされています。
政敏「人とのつながりでオファーを頂いているのでその縁は大切にしたい。これからも、お茶のつくり手として伝える活動をやっていこうと考えています」
現代の『釜炒り茶』をつくる
釜炒りとは、江戸時代に長崎の興福寺に招かれた中国の隠元法師がもたらしたと伝えられているお茶の製法のこと。熱した釜で茶葉を炒り、短い時間で殺青(さっせい・酸化酵素の働きを止めること)し、茶葉を揉んで乾燥させることで青々とした綺麗な色と独特の芳しい香りを出す製法です。
この釜炒り茶は九州で盛んにつくられ、日本茶貿易の先駆けである大浦慶が世界各地へ輸出していた歴史がありました。茶友ではこの歴史や先人たちに敬意を払い、現代の釜炒り茶をつくり出すべく最新の機械を導入し研究機関と協力して商品開発を行っています。
政敏「現代の時代背景や生活習慣などを踏まえつつ、もっと美味しい、もっと斬新なお茶をつくろうかと。というのも、お茶ってどこも同じ製法なんですよね。だからもう根本的から変えて、もっと新しいものを新しい感覚で茶葉を楽しむこともあって良いんじゃない?って。先人たちが私たちに伝えてくれた大切な知識や技術を活かしながら、更にその先を目指しています」
現在一般的に販売されている飲み物は、コクがあってしっかりした味わいのものと、食事に合わせて飲むためにライトな飲み口で香りが控えめなものに二極化しているため、「その時必要なものを必要なだけ様々に・柔軟に対応できれば」と研究しているそう。
政敏「うちでは研究用の機械を取り入れています。同じ茶葉でもちょっと製法を変えるだけで『こんなに変わるんだ!』と驚きますし、飲む人もいろんな味わいの違いがあれば楽しめますよね。同じ葉っぱから色んなものが出来ていって、本当に面白いですよ」
茶友では、独自の釜炒り製法を活用した抹茶が商品化されるそう。スティック状のパックに抹茶の粉末を梱包したもので、家庭ではもちろんプレゼントやお出かけ先でも楽しめる逸品。わたしたちくじらの髭の店舗でも販売を予定しています。
政敏「濃いめの抹茶なのでしっかりとした味わいで、ビター感があります。お湯で溶かして飲めば茶葉の味わいをそのまま感じていただけますし、ミルクやシロップと合わせて飲んでも美味しいです。アイスクリームに掛けるのもおすすめですよ。暑い時期は氷を入れて冷たいドリンクにしても良いですね」
親しみとあこがれ
大きな賞を数々受賞し、新たなお茶を追求し続ける茶友ですが、日常で飲むものにもっとフォーカスしなければならないと政敏さんは語ります。
政敏「例えばコンテストで一番をとったお茶にはスポットライトが当たりますが、それって我々の生活には馴染まないものなんですよね。みんなが憧れるような、頂点を目指すようなお茶ももちろん大事ですが、それだけでなく我々の日々の暮らしの中にあるお茶の在り方にもスポットライトを当て、研究していくことも必要なんです。僕が常に思っているのは『親しみとあこがれ』の両立。賞を勝ち取って素敵なお店やシチュエーションで提供されるようなステータスを持ちながらも、日常的に親しみを持ってたくさん飲んでもらえる。そんなお茶を作っていきたいですね」
そのぎ茶の最前線を独自に走り続けている茶友。誠実にお茶へと向き合う姿勢と、そこから生み出される美味しいそのぎ茶が数多くの人を魅了してきました。
あなたもぜひ、茶友のお茶を味わってみませんか。
ひとについての詳細は以下の記事をご覧ください。
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