コーギーの本当の魅力を発信していきたい『Cafe&Restaurant DOGHILL 岩崎由子さん』

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Cafe&Restaurant DOGHILL(ドッグヒル)』は、大村湾に臨む東彼杵町小音琴郷にあるドッグカフェ。このお店の代表を務める岩崎由子さんは、1996年から夫の秀則さんと共に『ウェルシュ・コーギー専門犬舎NAVY SAILORMAN(ネイビーセーラーマン)』でコーギーの繁殖を行うブリーダーでもあります。

コーギーはイギリス西部ウェールズ原産の牧羊犬。イギリスでは「コーギーの背中には妖精が乗っている」という言い伝えがあることから「幸せを運んでくれる犬」と信じられています。そして首元にある白い模様はエンジェルサドルと呼ばれ、この愛らしい特徴を持つのは唯一コーギーだけだとか。

私たちくじらの髭では、コーギー本来の魅力を伝えるために奮闘を続ける由子さんへインタビューを敢行。これまでの人生の出来事やコーギーを育てていく上でのお話、そして今後の展望などを伺いました。

佐世保に生まれ、看護師の道へ

由子さんは佐世保市天神町の出身。家の前には病院があり、幼少期はしょっちゅう遊びに行っていたとか。

由子「実家のすぐ目の前が病院だったので、そこが私の遊び場になっていました。なので当時は病院の先生たちにとてもお世話になって。子どもながら皆さんが働いている姿を眺めるうちに、看護師の仕事をやってみたい!と憧れるようになったんです」

中学は福石中学校、高校は九州文化学園高等学校の衛生看護科へと進学。高校卒業後は九州文化学園の専門学校へ入学し、その後すぐ看護師として佐世保中央病院で働き始めました。

夫・秀則さんとの出会い

由子さんのご主人である秀則さんは熊本生まれで、幼いころから様々な動物に囲まれ暮らしてきました。やがて自衛隊の衛生士として働くこととなり、由子さんが勤務する佐世保中央病院へも仕事の関係で訪れていたそう。

由子「私は佐世保中央病院の透析室へ、主人は佐世保自衛隊病院の衛生士として勤務していました。主人とは2つの病院が合同で開催したクリスマス会で初めて対面し、映画を見に行こうとデートをしたのがきっかけでお付き合いが始まって。ですが交際を始めて半年過ぎたころに主人が6ヶ月以上かけて遠洋航海をすることが決まり、『それなら出港前に結婚式を』とお互いの両親の希望もあって入籍することになったんです」

結婚後にふたりの息子さんを授かった由子さんは一時退職したものの、子育てがひと段落して佐世保市の村上病院で20年にわたり勤務。その後はドッグカフェ設立の修業のためハウステンボス内のチーズケーキ店で2年働きましたが、「うちに来て欲しい」との要請があり佐世保中央病院へと舞い戻りました。

由子「当時はコーギーの飼育をすでに始めていたので、看護師・ブリーダー・主婦を同時進行でこなす毎日でした。とても大変でしたよ(笑)」

コーギーを極めたい

時は少しさかのぼり、由子さんが生まれて初めてコーギーと出会ったのは叔父さんがコーギーを飼い始めたのがきっかけでした。当時の日本でコーギーはかなり珍しい犬種だったとか。

由子「叔父が『初めてコーギーって犬を飼ったけど、こんなに頭のいい犬種は初めてだよ!』嬉しそうに話してて。胴長短足のフォルムで…って説明してくれて、どんな犬だろうって興味を持って接したのが最初でした」

すっかりコーギーの可愛さに魅了され、自分でも飼うようになった由子さんでしたがまさかの問題に直面することに。TVCMがきっかけで巻き起こったコーギーブームの流れに乗って、悪質な業者が頭数を少しでも増やそうとめちゃくちゃな交配を繰り返している事実を知ってしまったのです。

由子「コーギーたちがかなり粗末に扱われ、このままではコーギーが崩れてしまうと強い危機感を覚えました。それでコーギーの本来通りの姿を取り戻すため、ブリーダーとしてコーギーを極めようと決めたんです」

やがて『ウェルシュ・コーギー専門犬舎NAVY SAILORMAN』を設立し、数々のドッグショーへと挑み始めます。2021年現在ネイビーセーラーマンが輩出したチャンピオン犬は数百頭にのぼるそう。

由子「本当にコーギーを愛している人たちの元へ飛び込んで勉強させてもらって。その中で素晴らしいブリーダーさんやハンドラーさんとの繋がりもできました。どんどんコーギーへとのめり込んでいきましたね」

しかしドッグショーへ何度も出場するうち、由子さんは「今のままではコーギーの魅力が伝わらないのでは?」という疑問が芽生えるように。そこで考えに考えて思い立ったのが、ネイビーセイラーマンの犬たちと直接ふれあえるドッグカフェを作ることでした。

そして2010年、コーギーたちとの時間と美味しい食事を提供する『Cafe&Restaurant DOGHILL』を開業。日本国内のみならず世界各国からわざわざお客さんが訪れるほど人気のカフェとなっています。

DMとの闘い

DM(変形性脊椎症)とは10歳前後で発症する脊髄の病気のこと。歩行障害、失禁、呼吸障害が起き、さらに症状がひどくなれば呼吸不全となり発症後約3年で死へと至ってしまう恐ろしい病気です。

DMの原因は遺伝子の変異によるものとされており、地球上にいるコーギーの約85%がその因子を持っています。DMの因子を持たないコーギーは『クリア』と呼ばれ、コーギー全体の10%ほどしかいないとか。

由子「いま私たちはクリアの子を作っていくために頑張ってて。うちでは現在12頭のクリアの子がいるので、その子たちを交配させて子犬を繁殖させているんです。最近では他のブリーダーさんから『クリアの子が欲しい』というオファーを頂くことが増えてきました。お客さんから『病気の因子がない子をあちこち探して、やっとここにたどり着きました』って言われたこともありますよ」

DMを発症し、症状が加速すれば寝たきり生活は避けられません。散歩はカートに乗せて行い、食事の世話や度重なるおむつの交換など介護は想像以上の過酷さがあるといいます。

由子「ドッグヒルのお客さんの中に、ワンちゃんを3年介護して見送ったという方がいました。それはそれは大変だったそうだけど、それでもまたコーギーが飼いたいんだって仰って。それだけコーギーの存在って大きいんだと思います」

コーギーが導いてくれたこと

コーギーに携わるようになって25年。犬舎とドッグカフェを作り継続できたのは、言霊の力とコーギーたちの導きのおかげだと由子さんは語ります。

由子「看護師時代にいつかワンちゃんのお店をやりたいって心に決めてから『絶対お店を開く、絶対成功させるんだ』って毎日言い続けていたんですが、実際こうやって開業できた。努力もしなきゃいけないけど、自分が願っていることは口に出していけばちゃんと現実で叶うんだなって。そして何よりコーギーたちがいてくれたからこそ今があります。おかげで色んな人と出会えたし、人生が動くチャンスを見つけられたんだと思います」

インタビューの最後に、由子さんが今後やってみたいことを伺ってみました。

由子「今は新たな土地を見つけたいですね。沢山のワンちゃんが思いっきり走って遊べる広いドッグランと、急な災害が起こったときにワンちゃんが一時避難できる小屋を作れたらと考えています」

コーギーを危機から救うべく、ブリーディングやドッグカフェを通じて自らの思いを伝え続けてきた由子さん。これからもコーギーたちと共に、そのはつらつとした姿で人生を邁進していくことでしょう。

みせについての詳細は以下の記事をご覧ください。