時代は変わり、形態は変わるも 変わらぬ味を届け続ける池田茶園

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三代目で本格的な茶師へと転換
東彼杵町に根付いて信頼を築き上げる

近年、お茶の産地として注目されている東彼杵町。三根郷に広がる田畑に囲まれた閑静な場所に佇むのが池田茶園だ。当茶園の歴史は古く、昭和16年から約80年ひたむきにお茶を作り続けてきた。3代目社長の池田隆さんは語る。

「終戦後、私の祖父の代から茶園は始まりました。もともとは佐賀県の出身で宮大工だったんですが、東彼杵に呼ばれて定住するようになって。現在も、茶園敷地にお寺の門だけが残っていますが、それは祖父が建てたものです」

三代に渡って歴史を紡いできた茶園は、代が変わるとともに、その在り方も変容していったと言う。

「祖父の代で茶畑を始め、そして父の代では茶畑に加えて問屋業もやっていたから、茶畑の管理から、茶摘み、仕上げ、販売まで一貫して全部やっていた。小学生の時からよく手伝わされていたのを思い出します(笑)。それが、私の代になって、人手が足りないというか、新茶の時期がものすごく忙しいと感じていた。自分が行って指導ができれば良いんだけども、人任せにはできんので。そこで、完全に絞ろうと思いました。ここの地域は、茶工場まで持って原料まで作る生産者はいっぱいいます。逆に、我々のような商社、茶師というのは少ない。なので、そっちに舵を切ろうと思いました。自分が23くらいの歳のことです」

そこから31年、変わらぬ美味しさを提供してくれる茶園だと地元で関係性を築くべく、ただひたすらに走ってきた。信用というのは、泥臭く地道な努力を続けていく、そして結果を出していくことでしか得られない。大変なことだが、だからこそ地元住民から愛される今の池田茶園が存在しているのだ。

職場の空気は明るく、お茶を求めに店に来る客も後を絶たない。スタッフであり、家族であるみんなが同じ方向を向いて仕事をするからこそ、作りあげられるものなのだ。

「これまで、基本的には家族経営でやってきました。現在は、私がお茶の買い付けや外回りといった営業を行い、弟の厚が工場長でブレンド、仕上げの作業をしています。息子が4代目として引き継ぐ形で動き、娘夫婦もこちらで働いてくれています。総勢9人体制。今までもそうでしたが、一歩ずつ階段を上がってきました。これからも地道に続けていきたいですね」

そう話る三代目には密かな夢もあるという。

「再び、茶畑をやりたいという気持ちもあります。コストとか考えず、自由に、やれる範囲で好きなようにやってみたい。お茶は、この工程が面白いとかではなく、全部の工程が楽しいです。やっていた当時はキツかったのですが。夏休みになると手伝わされたり。でも、今となってはそういうのもやりたいなぁと。完全に本業を息子に任せられたら、考えても良いかもですね(笑)」

そのぎ茶は全国品評会で
日本一3連覇の偉業を達成。

野球に甲子園が、マラソンに駅伝があるように、お茶の世界にも全国一位を決める品評会がある。なんと、そのぎ茶は、3年連続して日本一に輝くという快挙を成し遂げた。そこまでに業界評価の高いそのぎ茶ブランドは、どうやって生まれたのだろうか。

「今は若手の生産者が揃っていますし、やろうという一念発起のような機運もあって、町とか農協も協力してくれています。生産者の技術を磨くための大会なんで当茶園はあまり関わっていないですが、品評会専用の製造機械をみんなで一か所に作って。そのぎ茶ブランドをやると決まったのは、かなり前からです。10年と言わず20年以上前からになるんじゃないかな」

町をあげて、一番を目指して取り組み始めた。辿り着くまでには血の滲むような相当な努力があったことだろう。しかし、全国で様々なお茶のブランドがある中で、この東彼杵の地で生産されるお茶が美味しいという、一番になれるという確信があったから成し遂げられたのではないだろうか。

「全国のお茶を飲み比べても、やっぱりここのお茶が一番美味しいですね(笑)。同じ値段でも、全然そのぎ茶の方が上だよねって。ただ、地名というブランドで売っている部分も多く、このお茶は絶対このクラスに上げて良いと思うことはあっても、知名度でどうしても上げられないとか多々あります。それだけ、知名度は大事です。知覧茶なんかは、はじめは小さい規模だったんですが、今では鹿児島茶の代表にのし上がるほど飛び抜けて良いですもんね。ブランド作りの大切さを身に染みて感じます」

見事、全国一に輝き、それも三連覇を達成するという偉業まで成し遂げた東彼杵町のお茶。ただ、そこで終わりというわけではないのである。

「現在、そのぎ茶も結構認知度が上がっていますが、まだまだ先は長いです。同業者では、全国的にそのぎ茶の名前が知られているんですが、消費者のほうにそれがまだ伝わっていない。なので、彼杵茶は高額でなくても美味しいお茶が飲めるので、そのぎ茶は今が買い時ですよ(笑)」

「もっとPRしていかんといけないでしょうから。まだまだ道のりは遠いですが、地道に頑張ります」と語る3代目。そのぎ茶ブランドを全国に広める担い手として、池田茶園はこれからも精力的に活動を続けていく。

ひとについての詳細は以下の記事をご覧ください。

店 名
有限会社 池田茶園
所在地

長崎県東彼杵郡東彼杵町三根郷1123Google Map

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