長崎県大村市で20年近く診療を行う『篠原皮ふ科クリニック』に併設され、皮膚科医監修のもと肌の弱い人でも使えるドクターズコスメを開発・プロデュースしている会社がある。『SSC・篠原メディカルスキンケアセンター』だ。代表を務める薬剤師の篠原光沙実さんは、”人々を守る処方箋”を日々研究・開発し、プロデュースしている。SSCの手掛けるものづくりへの想いを伺った。
未病から、アフターケアまで。
総合医療で患者を支えるために
SSCを構想するきっかけは、篠原さんが漢方薬局で働いていた頃まで遡る。
篠原「26歳の頃に勤めていた漢方薬局で漢方や食事療法、民間療法といった『統合医療』の必要性を感じました。その後、漢方薬局を退職して主人が皮膚科を開業するにあたってその手伝いをしながら、未病を防ぐ段階から、アフターケアまでを含めた総合的な医療体制の場所を作りたいと考えるようになりました」
その流れで、他社へのOEM受注や、それに伴うデザインなどの総合プロデュースまでを目指した会社を設立することで、新たな出会いが生まれてきた。
「これまで漠然と薬局で自然療法をやっていて、母として子育てしながらスキンケアの会社を立ち上げ、健康事業にまつわる講演会なども行って。そうするうちに、これを機にしっかり学んでいきたいと思うようになり、東京で薬膳を学び、フィトテラピーの先生と出会って化粧品を作り始めました」
肌に対して化学的なアプローチをし、メディカルに匹敵するものを生み出すことが目標となった。
「様々なメーカーからより良いものが出てくるのであれば、それを使用すれば済む話です。しかし、私が求めるようなものがなかったので、自分で作るしかなかった。そして、他の化粧品メーカーと同じようにやるのではなく、”自分は何をしたかったのか”を考えるようになっていきました」
みんなが手軽に手に取れ、信頼のおける高品質なものを。原点に立ち返り、細かに薬剤を調整して、院長である夫の意見も取り入れながら作っていった。
学びを重ねて、再び立ち戻る。
ものづくりと、真に向き合う
日々、悩んで、足掻いて。とにかく試行錯誤しながら学んだ。
「日々の仕事をこなしながら、自分がやりたいこと、自分にできることを掘りながら学んでいきました。漢方を毎日煎じて飲んだり、自分で色々な商品を試してみたり。完全には効かない時、何がダメなんだろうと繰り返しました」
新しいことを学ぶうちに、オーガニックに対する想いも変わっていった。
「当時JIS規格しかなかったので、化粧品のオーガニック認証を取るべくイタリアにある工場へ視察に行きました。そこでは、ひとつの材料から何種類ものグレードがあり、薬草の知識から全てが違うことを知りました。その時代で使われていた土地と、人と、ものという大切なことがきちんと引き継がれている。そこで、それまでオーガニックという単純なこだわりだったのが違うところにも作用してきました」
歴史が紡がれるなかで人の愛情とともに脈々と継承される空気感。ヒシヒシと感じ、味わい、”ものづくりのあり方”を見つめ直した。
「病院の中から出てなかった頃は、”医療人”として考える自分がいました。そこから、外の世界を見ることで新たに物作りされている方たちの心を知っていった。それで、私が長崎に導かれるように来た理由をもう一度考えました。”私が、この地にいるからこそできること”。そうすると、長崎の伝統かつ特産である植物『ビワ』に着目したのです。ビワ に含まれる抗酸化成分に目をつけ、そこから新たな植物由来原料の化粧品開発を佐賀大学などと共同研究を行いながら進めていきました」
その病、諦めないで。
患者と伴走する存在へ
そうしてできた新ブランド「ビワの葉ごころ」からスキンケアジェルが完成し、発売までに至った。それでも、まだまだ興味は尽きないという。
「知らないことが、まだまだたくさんあります。そして、知っていくのに喜びを感じる。皮膚は”一番外側で自分を守ってくれる臓器”。脳と臓器、つまり脳と皮膚も相互作用していて、皮膚が喜ぶと脳も喜びます。皮一枚で外界から守ってくれている”家”だからこそ大事にし、その土台はしっかりとしたものへ作ってあげたいと言うのが私の考えです」
皮膚は一番外側で守ってくれる臓器であり、同時に唯一自分の目で確認できる臓器でもある。
「これって、すごくラッキーなこと。状態がわかりやすい。内臓は気付かないうちに重症化するケースがよくありますが、皮膚は見えるし、わかるし、どうしたら良いかを考えられます。ただ、肌の保湿には時間がかかる。指導のもと、きっちりケアをすると1時間はかかります。他にも、寝る前にお風呂から上がって10分かけて全身を塗ってもらうと、翌日起きた時には剥がれているからまた塗り直す必要があったり。いったい何時間スキンケアに時間をかけるんだと。しかし、それをやり続けた方は、綺麗に完治されています」
皮膚も痛みを覚えるという。だから、同じところに刺激が加わるとすぐに反応してしまう。小さい頃から正しいスキンケアをずっとやっておくと、自ずと自身との付き合い方がわかると篠原さんは語る。
「病院へ行って、『あ、ダメなんだ』と思う瞬間を経験された方もいるのではないでしょうか。私は自分自身の経験から、諦められるというかそういう瞬間を体験することもありました。そうではなく、何かあった時はいつでも寄り添う。そういう場所を目指したのがクリニックであり、SSCです。見守ってもらえないと諦めてしまった人たちに諦めないでと、そして一緒に伴走できる存在でありたい」
SSCにとって、製品開発・発売はゴールではなく、今後も進化を遂げていく。そして、人々に寄り添い向き合える存在であるべく、今日も研究を続けている。
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