東彼杵から大村へ移転OPEN! 革とおやつの店『tateto/poet』を営む2人
東彼杵町から大村市松原に移転OPENした革製品・卸問屋の「tateto」には、焼き菓子・季節のおやつ・ドリンクの「poet」が併設されています。お店を運営するのは、革製品を取り扱う中島陽介さんと、カフェを担当する中島なるみさん夫妻。革製品やレザークラフト用品を購入したり、ワークショップに参加したりできる中、気軽にカフェ利用もできるお店となっています。
陽介さんは、「Sorrisoriso千綿第三瀬戸米倉庫」の立ち上げメンバーでもあり、空き倉庫の片付け・リノベーションをしていた頃から共に走り続けてきた1人でした。現在では独立し、なるみさんとの二人三脚で新たなスタートを切っています。
お店の開業に至るまでには、どんないきさつがあったのでしょうか。お二人の和やかな雰囲気に癒されながら、お話を伺いました。
出会いのきっかけは、学び舎
幼少期の陽介さんは、控えめでかなり大人しい性格でした。3人兄弟の末っ子で、兄の後ろにくっついて歩いていたそうです。出身は大村で、ずっと大村で過ごしてきました。
また、なるみさんも目立たず、穏やかな性格の女性でした。12歳から佐世保に住んでいましたが、長崎で一人暮らしをしていた時期も。2人の出会いは、専門学生時代までさかのぼります。
陽介「2人とも、歯科技工士の専門学校に通っていたんです。中山と中島で、席が隣でした。クラスの人数も少ないので、バカップルだ〜なんて茶化されていましたね(笑)」
なるみ「学校入ってすぐに付き合うことになったんです。4月に入学して、早くも5月には交際スタートでした。まさかそれから結婚までするとは……!(笑)」
陽介さんは、兄の影響で歯科技工士の技術や知識を学ぶべく、専門学校に入学しました。ゆくゆくは兄弟で会社を設立し、歯科技工士の技術を生かして、ジュエリーや貴金属の製造・加工事業をしようという目標があったのだとか。
なるみ「変わった人だなぁと思っていました(笑)。目的はあるけど、歯科技工士になるつもりでは入っていないなんて、どういうことだ……!? みたいな。他の人とは違った視点を持っているなぁ、という印象でしたね」
2年間、2人は専門学校に通って、無事に国家資格を取得して卒業。なるみさんは長崎市内で就職し、数年間は一人暮らしをしていました。陽介さんは卒業後も大村に住み、バイトをしながら革製品の取り扱いを始めます。その間、しばらくは遠距離交際でした。
家族としての過渡期を乗り越えて、開業
それから、東彼杵町では後の『Sorriso riso』となる米倉庫のリノベーションが行われたり、まちに動きが見え始めます。陽介さんは『森商店』に入社し、森一峻さんらと倉庫の改修や店舗の立ち上げに携わっていました。
陽介「予定より工事が遅れてて、3日前になってもまだ完成していない状況でしたね(笑)。とにかく時間がなくて、毎日作業ばっかりしていました」
この時期は、色々なことが目まぐるしく動いている激動の数年間でした。実は、陽介さんが森商店に入社してすぐに、なるみさんと結婚。出産や子育てが重なり、家族としても過渡期を迎えていました。
なるみさんも大村で働いていましたが、子育てに専念するために仕事を退職することに。一方、陽介さんは、森商店の中で革事業・tatetoを営業していましたが、独立に向けて舵を切っていました。
なるみ「この先どうなるんだろう……? って思ってました(笑)。不安しかなくて、子どもを見ながらすごく心配で……」
陽介「うん、絶対に不安にさせてるよなって思っていました(笑)。つまり自営業者になるわけなので、この先どうなるのか分からないし。僕自身も、ワクワクしつつも不安を感じていましたね」
もうすぐ子どもが生まれるという時に、本当に革でやっていけるのか? それとも、やはり安定した仕事がいいのだろうか? 陽介さんの心境は揺れていました。
なるみ「でも、Sorissorisoが立ち上がったくらいの時期から、やっとワクワクした気持ちも湧き上がってきました。子育てしながらは大変でしたが、それでも立ち上げに携われるっていうのは面白かったし、貴重な経験だったと思います」
中島夫妻は、当時のことや気持ちの変化を振り返ります。今では、お互いに自分の店舗を持つ店長同士。変わり始める東彼杵町のエネルギーに触れて、まちやひとを伝いながら、少しずつワクワクが伝播していったのかもしれません。
お互いに関係し合うパートナーシップ
専門学校で同級生になってから、ついには共にお店を営むようになるまで、ずっと一緒に歩んできた中島夫妻。2人の目には、お互いがどう映っているのでしょうか。
陽介「僕らはバランスが良いと思っていて。僕はワクワクする方向にガンガン進めていっちゃうんですけど、なるみさんは現実的にちゃんとできるかどうかを考えてくれるタイプですね。『ちょっと待って』と、言ってくれる存在です」
曰く、なるみさんは「ネガティブ担当」で、陽介さんは「ワクワク担当」。なるほど、夫妻の人柄が伝わってきます。
なるみ「陽介さんのことは、学生時代から”変わってる”と思っていました。でも、それに付いて行ってるから私も相当変わってるんですけどね(笑)。流されるまま付いて行ってるだけですが」
陽介「付いてきてくれるなるみさんの度胸もすごいですよね(笑)」
中島夫妻はお互いから影響を受けつつ、補い合いながら進む道を決めてきました。陽介さんのtatetoでは、革製品の商品作りにおいて積極的になるみさんや女性スタッフの意見を取り入れています。
陽介「こうして、すぐに聞ける環境なのも嬉しいです。革製品を作っていくにあたって、男性の視点に偏りがちなので。女性目線で考えたら全然違う作品になるし、お店に出した時の反応も結構変わってくるんですよ」
また、なるみさんのpoetでお菓子の試作品ができれば、陽介さんは味見役なのだとか。コーヒー好きな陽介さんは、お菓子とコーヒーとの相性で考えたり、なるみさんは紅茶との相性を考えたり。
出発点は歯科技工士の専門学校でしたが、お互いに「ものづくり」や「工作」好きであることが共通しており、そして今も一貫しています。形は違えど、2人はそれぞれ好きなことを仕事に選びました。
ハンドメイドが好きな人たち同士が集まり、交流することのできるtateto/poet。お互いの考え方やお店づくりに“関係し合う”ことができる中島夫妻だからこそ、たくさんの人が居心地良く過ごせる拠点になっているようです。
「みせ」の記事につきましては、以下をご覧ください。