福岡市に本社を、嘉穂郡桂川町に事業所を持ち、主に環境コンサルティングを行う『株式会社アール（以下アール）』と、久留米市を拠点に環境に配慮した顔料や染料などの販売を行う『西邦化学産業株式会社（以下西邦化学産業）』は天然素材100％の消臭剤『酵素-R』に大きく関わる企業である。
酵素-Rは、アールで代表取締役社長を務める片山繁隆さんが『Type-R』の名で開発した微生物活性水。元々は工場や施設の稼働によって起こる悪臭や水質汚染、土壌汚染を改善するサービスの一環として活用されているもので、企業や個人向けの販売も行っている。現在酵素-Rの製造はアールで行い、西邦化学産業がブランディングや各地への販売などを担う。
株式会社アールの取り組み
アールは平成22年2月に設立。以来環境コンサルティング企業として徹底した調査・分析・試験を行ったうえで顧客ニーズに合わせた提案を行い、工場や処分場などの環境改善サービスを提供してきた。
アールの数ある事業の中でも特に注目したいのは、バイオレメディエーション法による環境改善である。バイオレメディエーションとは微生物や菌類などに元々備わっている“有害物質を無害な物質に分解する”能力を利用し、汚染された環境をきれいに浄化する方法。生態系へのダメージを抑えつつ、大規模な施設を用意する必要がないため低コストで実施できると注目を集めている。
アールでは、その環境にもともと住み着いている微生物の力を向上させる能力と、その環境に活きている微生物をさらに生み出し増やす力を兼ね備えた酵素-Rを活用したバイオレメディエーション法を実施。ポテンシャルを底上げされた微生物たちに汚染された環境を整えてもらうことで、状態は改善へ向かっていく。
ちなみに、アールの社名は①酵素-Rの主な成分『Rhodobacter ロドバクター（紅色非イオウ光合成細菌）』、②片山社長の愛車GT-R、③片山社長の名前『繁隆（隆はリュウとも読む）』、④片山社長の干支“辰＝龍”が由来となっているそうだ。
ひとつの施設を作りたい
桂川町にあるアールの事業所では犬や猫たちをはじめ、ウナギ、メダカ、エビ、熱帯魚などたくさんの動物や植物たちが暮らす。みな社員の皆さんの手で愛情深く育てられている。
私たち取材班が事業所に入ってすぐに驚いたのは、数多くの動物たちがいるにも関わらず特有のペット臭をほぼ感じられなかったことだ。というのも、寝床やトイレ、遊び場などに酵素-Rを振りかけているからとのこと。それだけで酵素-Rのすごさを実感したのだった。
事業所の内外にある水槽では魚たちと植物が共に暮らしていて、まるで水族館さながら。水槽には酵素-Rが入っており、誰でも簡単に水質を維持できるような環境を構築するための研究が進められている。
そして注目はアクアポニックスだ。アクアポニックスとは水耕栽培と養殖を掛け合わせた新時代の循環型農業のこと。魚の排泄物を微生物が分解し、植物がそれを栄養として吸収、浄化された水が再び魚の水槽へと戻ることで、水替えがいらず環境にも優しい。アールではこの方法を活用し、アレルギーを持つ子供たちのためにカリウムフリーのレタスを作る研究も進めている。
アールでは3社ほどの企業の事業承継をし、新たな事業を展開するべく動き出している。畜産をやりたい、水族館運営をやりたいといった興味や意向を持つ社員にそれぞれの事業をリードしてもらいながら、将来的にアールでひとつの施設を作れたらと専務取締役の中村宏徳さんは語る。
中村さん「社員の皆にやりたいことをしてもらいたいと考えていて。そのうちの1つの動きとしてアクアポニックスをさらに拡大して、将来は水替えがいらない面白い設備の淡水魚水族館と植物園が同時にできるんじゃないかと目論んでいます」
幅広い商品がそろう西邦化学産業株式会社
西邦化学産業は1981年に『西邦産業』の名で創業し、1993年に現在の社名となった。布に直接絵を描ける水性顔料『クロースペイント』、経年劣化や雨風の汚れで見えにくくなったお墓の名前がキレイによみがえる『ラク塗り墓石』など、繊維加工用の染料や顔料の販売が主な事業となる。
この他にもアルコールや抗菌・抗ウイルス剤などの衛生用品、産業用プリンターの販売、環境に配慮した排水処理施設やタンクなどの洗浄剤まで、6つのフィールドにわたる幅広いジャンルの商品を手がけている。
近年ではバイオレメディエーションによる環境改善事業にも注力。酵素-Rをはじめ、長期間にわたり土壌を改良する高品質有機たい肥『グリーンソイル』や、酵素-Rの能力を備えた酵素土『酵素-Rマッ土』の販売も行っている。これらの商品は作物が育ちにくくなった土壌の改善やpH調整、農作物の成長促進が期待でき、家庭菜園から農家まで使える優れものである。
染料や顔料、衛生用品などの商品は公式通販サイト『染ラボ』で購入可能となっており、業務用・一般用ともに豊富なラインナップが揃う。また、酵素-Rと酵素-Rマッ土については『酵素マニア』の通販サイトで購入可能。商品の使い方や新商品情報は公式ホームページ内にあるブログでも分かりやすく紹介されているので、要チェックだ。
自然や動物たちのために
西邦化学産業の数ある事業の一つにオリジナル商品の製作がある。Tシャツ・パーカー・ブルゾン・キャップなどの服飾系や、のれん・のぼり・タオルなど種類は豊富。世界に一つだけの物を作るのはもちろん、チームや企業のロゴマークを用いたユニフォームやノベルティ商品などのグッズも作ることができる。要相談だが撥水加工などの要望にも対応可能だ。
なお、これらの商品は在庫のリスクを回避するために受注生産となっている。完成品が届くまではある程度の日数がかかってしまうが、そのぶん品質は折り紙付きである。
これらのアパレル商品の収益は、各地の動物愛護団体へ寄付する動きを進めている。一つ例を挙げれば、大勢のロードレーサーが集う奄美大島のカフェと協力して様々なチームのユニフォームを作り、保護犬・保護猫の殺処分を減らす活動や白化現象が起きているサンゴ礁の保護、外来種の駆除などへの活動資金に充てる予定となっている。猫の殺処分が多い長崎でも保護団体があればぜひ動きたいと執行役員を務める梶原彰人さんは語った。
そして現在は東京にある営業所でアパレル商品を製造しているが、各地方で製造に協力してくれる事業所を模索している。
梶原さん「今うちの方で東京に送って製造して、ってしてるけど……地産地消というか、やっぱり地元のことは地元でどこかが旗振り役になってくれたら。各所各所にそういったキーマンになる人たちがいてくれればね、良いかなって思ってます」
株式会社アールと西邦化学産業株式会社は自然や動物たち、私たち人間が共生する環境をより良くするために前進し続けている。このふたつの企業がこれから繰り広げていく物語は、間違いなくますます面白い展開になっていくだろう。
