コロナ禍の行動と変化が実を結んだ鉢盛『彼杵の郷 若松屋 鉢盛の受注とフライヤー出演』

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彼杵の郷 若松屋』は、長きにわたって地元の人たちに愛され親しまれている老舗料亭

この度若松屋では鉢盛の受注を開始。詳しいお話を当主の東坂良久さんと妻のるみ子さんに伺いました。テイクアウト用の鉢盛を作ることになったいきさつや、良久さん自ら出演したフライヤー(チラシ広告)、2020年のコロナ禍で活動してきたことなどについてお伝えします。

想像以上に売れたお弁当

2020年に未曽有のコロナ禍が起こり、度重なる自粛で飲食店は全国的に大打撃を受けました。もちろん東彼杵町にある飲食店も例外ではありません。

そこで町の飲食店が迎えている危機を救うべく実施されたのが、お店の代わりにお弁当や料理を配達するサービス『くじらたより』。Sorriso risoを運営する当社、一般社団法人「東彼杵ひとこともの公社」を中心に立ち上げ、2020年5月1日から31日までの1か月間実施いたしました。

若松屋で用意されたのはいくつもの種類のおかずが散りばめられたお弁当やオードブル。早朝から仕込まれていたというお弁当はその美味しさが評判を呼び、かなりの売り上げを記録しました。

るみ子「夫とふたりでやっているし、お弁当を届ける時間も決まっているから朝の4時ごろに起きてすぐに取り掛かっていました。おかげさまで予想以上の売れ行きで、とても嬉しかったです」

くじらたよりでの配達に加えて若松屋では直接のオーダーも受けており、こちらもかなりの反響があったそう。

良久「テイクアウトをやっているとチラシなどで周知できたのもあって、直接店に電話予約して取りに来てくれるお客さんも大勢いました。配達分の倍以上の数は売れたかな。この先どうしようか……と悩んでいたんですが、くじらたよりで配達に動いてもらったり、テイクアウトでたくさん買ってもらったおかげでお店に活気を持たせてもらったと思います」

自らアクションを起こさなければならない

配達やテイクアウトの反響が大きかったこともあり、考えが変わっていったという良久さん。若松屋では何ができるだろうかと模索したのち、テイクアウト用の豪華な鉢盛を作ってみようと思い立ちました。

良久「コロナ禍になって、このままではお店が立ち行かなくなると感じるようになりました。これまで通りの考え方のまま、お客さんを待つばかりではどうにもならなかったと思います。配達やテイクアウトの動きが考えを変える良いきっかけとなり、こちらからアクションを起こさなくてはと決意しました」

早速動き出した良久さんは、情報の周知のためフライヤーを制作することに。元々看板屋で作ってもらったチラシはあったもののインパクトが足りないと悩んでいた良久さんから、商工会を通じて私たちくじらの髭へと「チラシをもっと効果的なデザインにしたい」と相談を受けました。

良久さんへお伝えしたアドバイスは「大将にフライヤーへ出演してもらうことで、若松屋の信頼度を表現できるのではないか」というもの。そのアドバイスをもとに自分の写真と豪華な鉢盛をあしらった新フライヤーを完成させました。

新しいチラシを見た常連さんや地元の人たちからの反応はかなり上々。コロナ禍の危機を乗り越えるため良久さんが下した決断は功を奏し、鉢盛の売り上げへとつながっています。

そうめんを食べに来た若者の話

2020年夏、「何もやらないわけにはいかない」と若松屋では500円のそうめん食べ放題を実施。数多く訪れたお客さんの中でも、とあるひとりの若者との出会いが印象に残っています。

るみ子「たまたま通りがかった若い男の人だったんだけど、『そうめん食べ放題なのにどうしてこんなに安いんですか!?』って驚きながら店に入ってきて(笑)。結局7人分召し上がったんだけど、お金を支払いする時も『なんで?なんで?』って(笑)。私たちとしては、値段どうこうよりもお客さんに来てもらえれば……という気持ちがあるんです」

良久「他の店ではそうめん1人前600円という所もあります。しかもお腹いっぱいになるほど量がないからお代わりすると1200円になってしまう。そうめんを食べるのにそれではちょっと高すぎますよね。こんな時だからこそ、儲けというよりもお店ににぎわいを持たせるためには安くても良いから、という思いで懸命にやっていました」

夏のそうめんや、お弁当の配達・テイクアウトを始めたことでお客さんから嬉しい言葉をかけてもらうことも増えてきたとか。

るみ子「『今は飲食店が大変だろうから、近いうちにまたお弁当お願いするね』とか」

良久「『そうめん美味しかったです。また来年もやるんですか?』って聞いてくれたり。そういう言葉をかけてもらえると本当に励みになります」

コロナ禍をくぐり抜けるために

想像以上に長引き、全国的に波及し続ける新型コロナの影響。誰もが先の見えない試練を抱えるなかで、若松屋はこれからどうしていくべきか思いを語ってもらいました。

良久「これから先は今まで通りのやり方では太刀打ちできないと思います。お客さん自体、自粛に慣れて様々なことを縮小しても次第に平気になってくるでしょうし。宴会やお祝いなどのイベントも大人数で行うことがかなり減っていますから、宴会場ではなく家族や気の知れた仲間内だけ集めて家でやる、みたいなスタイルに変わっていくんじゃないかな。そうなると仕出しの仕事がこれから増えると見込んでいますが、そればかりでは今後の経営は難しいでしょう。今までと違う業態に挑戦したり、思いっきり職種を変えて新たなことにチャレンジするのも良いですね」

息子さんや娘さん達から若い考えを聞きながら、新しいアイデアが出てくるのを楽しみにしていると語る良久さんとるみ子さん。娘さんからは「趣のある建物を活かしたゲストハウスはどうかな?」というアイデアが出ているとか。

百年あまりに及ぶ伝統を守りながら、時代の流れに合わせて変化してきた若松屋。これから広がっていく新たな展開からますます目が離せません。

若松屋のみせ・ひと・ものについての詳細は以下の記事をご覧ください。