そのぎ茶農家の風雲児・大場真悟さんの新たな挑戦。 『ミニトマト栽培』に『ワイン醸造』…だと…!?

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東彼杵町、そのぎ茶農家最年少であり青年茶審査技術競技会の日本一

雲はわき、光あふれて。日本の暑夏の風物詩のひとつに、白球を追う高校球児たちの熱闘が思い浮かぶ。栄冠は君に輝く、甲子園のような血湧き肉躍る全国大会がお茶業界の中にもある。『全国茶品評会』だ。 令和3年度で49回目を迎えた歴史ある当大会をモチベーションにし、己が生み出すお茶の質を上げ続ける農家は東彼杵の地にも数多くいる。なかでも、そのぎ茶農家最年少であり青年茶審査技術競技会の日本一を保持している『そのぎ茶、深緑の里・大場製茶』4代目の大場真悟さんは、情熱をかけてお茶を育て、毎年勝負に挑んでいる。そして、軽いフットワークで新たな面白い試みもどんどん展開しているという。

大場製茶が語るお茶のことについて

現在営んでいるお茶畑は、もともとお茶屋が管理していた畑だったという。

大場池田茶園さんが、この土地で茶畑を管理されていました。それで、やめるからということで自分たちが引き継ぐことになって。もう30年とかなるんじゃないですかね。茶畑は点々とあって、現在は十数箇所畑を管理しています。だいたい8ヘクタールくらいですね。土地ごとに品種を変えています。お茶屋さんから借りている土地、自分の家の周りは自分の家でという風に育て分けてその場所にあった品種を育てています」

茶葉が摘めるようになるまで木が成長するのには、5~6年の歳月がいる。それまでも、その後も。土づくりは欠かせない。

大場「土づくりはほぼ毎年更新で作ります。お茶の新芽が出たら、土も養分を吸われて弱ってしまう。一回辞めてしまうとリセットしてしまうから、常に継続して土づくりをすることが大事です。そして、それに合わせて肥料も毎年見直します。良い肥料が見つかれば、試しに使ってみたり。誰も使ったことがないようなものも取り入れています。例えば、海藻とかを混ぜたものや、さとうきびといった廃糖蜜の粒剤になったものなど。なるべく、土の中の微生物が元気になるような資材をあげるようにしています。土が元気になればおのずと茶畑も元気になるので、心がけてやっています」

手塩にかて育てた茶葉は、応えるように美しく青く生い茂る。収穫の時期になると、1日で生葉3000キロ、ピークの時で5000キロほど採れるという。

大場「専用の軽トラックにだいたい300〜400キロ入るので、毎日10数台分。下手したら20台分くらい積むこともあります。なので、工場と茶畑の往復をだいたい20回ほど繰り返すことになります」

育てるのも大変、摘み取るのもまた大変な作業である。軽トラックに積み込まれた茶葉は、工場に送られて加工作業へと入る。

大場「生葉を蒸す前に、2~3時間寝かせる作業を行います。農家それぞれで運ぶ仕組みは異なるんですが、ここではベルトコンベアで一旦上げています。生葉は、摘んだ時点から呼吸して発酵が始まるので、この時点では少し葉が熱い。なので、こうして上にあげて、下から風を送って空気に触れさせれば冷めます。生き物だと感じますね」

今売り出しているのは、全部で10種類くらい。自身で、できたお茶をブレンドすることもあるという。

大場「一応、審査技術日本一なので(笑)、その技術を活かして。自分の中で黄金比率を見つけているんですよ。コツとしては、まずは単品を飲んで、到達点の茶の味をイメージしながら、そこに味を持っていくようにブレンドしていきます」

お茶屋として、いかに変わらない味を出すかが重要だという。お客さんが美味しいと思っているお茶に合わせるべく、その年のお茶の特徴を生かして毎年ブレンドの比率を変えて、そのイメージに近づける。

大場「だけど、特徴のひとつとして味が変わることがあっても良いと思っています。例えば、お茶で藪北(やぶきた)という定番の品種があるんですが、普段は変わらない味を出しつつ、さらに新しい価値をつけるために『今年の薮北はこんな味です。比較して飲み比べてみてください』と。そういうのがあっても面白いですよね。お客さん自身も、“お茶って毎年こんなに味が変わるんだ”と気づいてくれますから」

お茶業界で毎年開かれている大イベント『全国茶品評会』がある。大場さんも、自分の実力を測るべく毎年自分が作ったお茶を出している。

大場「そういう大会も、ひとつの自分のポテンシャルを上げる要素になっています。新茶の時季になると、やっぱり覇気が上がりますね。21歳で地元に戻ってきて今年で13年目になるんですが、常に出し続けています。品評会用のお茶というのは、茶葉を摘む部位が『一芯二葉』という新芽の部分しか摘みません。一般茶用は、その下の茎に旨味成分が多く入っているので、ここまで刈り採って製造すると旨味が出ます。品評会は、どちらかというと見た目の綺麗さが重視される傾向にあるので、透明感をいかに出せるかが勝負になります。人で言うと美人か、可愛いか(笑)。なので、美味しいのは確かなんですが、一般の人が飲んで美味しいと感じられるかというとそうではないと思います。値段も、一般茶の何十倍ですから。一キロ20~30万円の世界です。一反あたり5キロほどしか採れない貴重な部位です」

では、なぜ品評会を目指すのか。

大場「品評会で日本一を取れれば、それだけで自分の育てたお茶に価値がついてくる。ブランド力の向上のため、やっていくことに重要性を感じます。品評会で有名になればなるほど、一般茶も売れるわけですから。なので、品評会用も、一般茶用も、方向性が違うというだけでどちらも大事です」

持ち前のフットワークの軽さで情報を手に入れ、お茶を広める

高校卒業後、18歳から20歳までの2年間は静岡県のお茶の専門学校へ。卒業し、家業を継ぐために東彼杵町へと戻ってきた。

大場「静岡に行った理由は、簡単にいうと修行です。お茶農家を志す人が各地から集まるので、情報交換をする目的で友達作りというか、ネットワークを広げていました。福岡、静岡、埼玉、沖縄など、全国各地から来るので、地域ごとの栽培方法や、その時代の土地に流行った品種などの情報交換がすぐできます。県ごとに味や見た目も全然違いますから。各地で試験栽培を行っているので、新たな品種も教えてもらったり」

全国各地のお茶農家と交流し、情報交換のネットワークを築くのにはフットワークを軽くする必要がある。若さゆえできることと片付けるのは、簡単なことだ。イノベーションの種は、いつだってこういうところに転がっているものだ。

大場「いかに時代に応じた対策を柔軟に取れるか。それが、どの業界でも求められていることかと思います。昔のスタイルを貫くのも良いことかも知れませんが、環境は変わるものだと思います。40年前と、今とでは全然スタイルも違うわけで。なので、そこをいかに対応できるかが大事なのかなと。そういう意味で、茶農家同士のネットワークを広げておくとか、情報交換が重要になってくるんですよね」

やれること、学べることはどんどん取り込む。良いものを作るための探究心は尽きない。そのためには、そのぎ茶のファーマーズで集まって、お茶のチームを組むこともあるそうだ。

大場「6人で集まって、これまで活動をしてきました。例えば、シンガポールやフランス、オランダ、ドイツ、ベトナムといった海外にそのぎ茶を持っていってPRし、外国の人たちにどう伝わるかというのをテストしたり。日本国内でも、東京、大阪など各地でそのぎ茶を振る舞ったり。チームでやることによって、活動範囲が広がったのがメリットでした」

そのぎ茶を海外の人に飲んでもらった反応は、どうだったのか。

大場「実際にやってみて、シンガポールは渋めより甘く軽めのお茶が好まれる傾向にありました。シンガポールでは、あらゆる飲み物に砂糖を入れる傾向があるんですよね。ベトナムも甘い系。逆に、ヨーロッパでは本当のお茶の味を楽しむ文化があると感じました」

現在は、一旦チームを休止し、6人中4人が「碾茶工場FORTHEES(フォーティーズ)」を結成して活動している。

大場「6人で動くのも良かったんですが、碾茶もやるとなると大変になってしまったので、一旦休止しようと。今でも一緒にお茶の品評会をやっているので、時期やタイミングが合えばまた一緒に動いてもいいのかなと思います。メンバーの中で自分が一番年下なんですが、先輩たちが嬉野や彼杵でトップクラスに市場で評価が高い人たちなので、自分はその技術を盗みます。良いところを見つけて、それを応用して。他人のやり方をみていると、仕立て方や作り方も違うなと。本当に、参考になります」

お茶を作るだけでなく、お茶をどう売るかについても真剣に考え、取り組んでいる。

大場「お茶は、飲んでもらわないとわかりません。例えば、パッケージが良いから買ってみて、中身が美味しくなかったら二度と買わないと思います。お茶を買ってくれる人は、一回飲んでみて美味しいと判断したら買う流れなんですよ。リピートして、ファンになった人がネットでも買ってくれるようになる。なので、いかに多くの人にお茶を飲ませられるかが勝負だと思っています」

そのためには、イベント活動なども欠かせない。

大場「美味しさを自分たちで広めて、そこからネット販売などに持っていくのがお茶のPRとしては良いのかなと考えています。以前、Sorriso risoで『そのぎ作法』という、色んな方にそのぎ茶のお茶の淹れ方を教えながら、試飲してもらうイベントを行いました。それで、そのぎ茶は美味しい。そして、簡単に淹れられて美味しく飲めるお茶だと浸透していけば、そのぎ茶を買ってみようという流れになるのかなと思っています。」

大場「他にも、2019年には『100人の手摘み』という企画で130人くらいを集め、品評会用の一芯二葉を摘むイベントを行いました。3時間くらいかけて、生葉を四十五キロくらい摘んでもらって。なかなかお茶摘みをできる機会はないです。そもそも茶畑に来れる人って、一般の方ではなかなかいない。だから、イベントではみんなが喜んでいました。現在はコロナ禍で中々動き難い部分はありますが、そういう活動がメインになってくるんじゃないかと思います」

お茶農家の新事業ミニトマト栽培と新たな試みミニトマトワイン…!?

お茶農家はお茶に関する仕事をするというイメージを持つ人も多いと思う。筆者もそうだった。だが、大場さんは茶農家として、新たな事業展開を考えて動いている。

大場「3年前からミニトマトのハウス栽培をしています。理由としては、お茶は季節のものということ。4~6月の時期が繁忙期で、その期間で1年分の収入を稼ぐことになります。その他の時季は、お茶農家だけをやっていると収入がないので、もったいないと思って。そこで、できることを色々と考え、農業の指導員の方にも話を聞くと、夏からお茶の始まる季節までできる作物であれば、ミニトマトが良いと。トマトのハウス栽培であれば、年間を通して収穫できると教えてもらいました」

「じゃあ、試験的にやってみよう」。もともと興味はなかったが、軽いフットワークでミニトマト栽培を始めた。そこから3年経った今でも、お茶畑とは別の土地で本格的なハウス栽培を行い、各家庭の食卓に届けているのだから面白い。

大場「2年間くらい試験的に育ててみて、安定して収穫できることがわかりました。それで、3年前にドーンとトマト農家さんくらいのハウスを建てて、本格参入する決意をしました。ミニトマトは良いですね。お茶と違って実が成るので、お茶とはまた違った面白さを感じます。なので、ミニトマトに関しても品質に拘って自分なりのものを出していきたいなと思っています」

農作業中は、足袋を履いている。左右で緑と赤の”お茶&ミニトマトカラー”が映える。「ミニトマトとお茶で”tomattea”足袋を意味しています!」。心はもう、完全なミニトマト農家でもある。

ミニトマト栽培は軌道に乗り、そしてミニトマトでの新しい試みを展開することに。

大場「ミニトマトワインを、2019年に作りました。ワインは、16〜17度くらいが一番熟成に良いと言われるのですが、同じ環境下でお酒を貯蓄しています。試飲会も一度行いました。(Minitomatowine Tastingparty 東彼杵ミニトマトワイン試飲会)初年度のワインは、もう残り3本くらいしかないかな。大村湾で、現在も海底熟成させていています。そろそろ、4代目が出来上がります」

なるほど。では、見せてもらおうか。大場製茶のミニトマトワインの仕上がりとやらを。……なに!? 一般販売されていない…だと…!?

大場「インターネットテレビ局のABEMA TVの番組で、キングコング西野さんがコンサルティングをする「株式会社ニシノコンサル」という番組があったんですよ。そこに応募して出演し、ミニトマトワインという商品のアプローチ方法を聞いてきました。本人が言うには、まだ売らずに、価値をもっと付けてから売った方が良いと。なので、その通りにしてあえて売っていません。いつ売るかは、今のところ未定ですが、いずれ環境が整った段階で販売していこうかなと。今は、みなさんがミニトマトワインを飲んでみたいと言う喉の渇きを作ってあげる状態です。試作品はできていて、年間100本は作り続けています」

無人島田島にて、海底ミニトマトワインを引き上げている様子

その話を聞くだけで、すでに喉は乾いている。御託はいいから早く飲ませて欲しい、というのは冗談だが、商標化も難しいと言われるほど前例がない”野菜のワイン”は、もし発売されれば日本初の試みとなる。幕が明けるその日まで、首を長くして待ちたい。

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