人の愉しさを追い求めて 『株式会社GlobalB』山本健太郎さん(大村市編)

写真・編集

長崎県大村市を拠点に持つIT企業『GlobalB』でCEO(最高経営責任者)を務める山本健太郎さん。

理美容業界で活躍しながらGlobalBを立ち上げ、インバウンド向け動画やホームページ制作をスタート。そして業務改善システム『METOOS(ミトース)』を開発するに至った。

現在は日本を始めタイや香港などアジアを中心にあらゆる企業のサポートを行っている。

理美容業界へ飛び込み

山本さんは1974年、長崎県長崎市生まれ。高校中退後、床屋へ住み込んで修行に励んだ。

山本「1ヶ月働いて給料2万円の生活を2年間続けました。いわゆる丁稚奉公みたいなものですね。週末に5000円もらって、ラーメンを食べに行くのが何よりの楽しみでした」

修行先の床屋を辞めてしばらく経った27歳の頃、とある佐賀県の理美容室へいきなり飛び込み、社長へ直接自分を売り込んだ。

山本「最初に給料を50万くれって頼んで。そしたら社長から、まだあなたのことは信頼できないって言われたんで、1ヶ月給料なしで3ヶ月無休で良いからと頼み込みました」

なんとか入社した山本さんは、会社が運営している2店舗の継続がかなり危ないことを知る。そこから改善策を打ちまくった結果、会社は経営を持ち直し、山本さんはマネージャーへ昇進。入社から2年をかけ6店舗へ展開させた。

リストラ後、独立
現在、山本さんが経営する美容室Anneの様子

会社を大きく成長させ、プライベートでは第一子が生まれるという絶好調の時期にいきなり事態が一転。リストラ宣告である。

山本「当時はすごく荒れてて、パワーマネジメントをしていたんです。入社してすぐ自分が配属された店舗スタッフ5人の内4人をクビにしたりとか。社長には文句まがいの改善案をしょっちゅう言ってました。自分ができることは他の人にもできるはずだって思い込んでいたんです」

このリストラの後、自分のやり方が間違っていたと気付いた山本さん。以前から理美容業界へ感じていた疑問が頭をよぎり、自分の失敗経験を活かすためにも独立への道を踏み出した。

山本「佐賀にいた頃は独立するつもりはなかったんですが、この業界の福利厚生には常々疑問を感じていました。美容室は企業として経営している所が多いんだけど、街の床屋には福利厚生が完備された店が無い。保険証も国民健康保険で。だからこそ、そういうことがしっかりとした理容室を作ろう! と決意しました」

やがて30才で理容室あん松並店をオープン。地元では社保など福利厚生を完備する初めての理容室となった。

3度の自殺未遂を乗り越え―IT、MGとの出会い

理容室あんの経営が軌道に乗り、毎年のように店舗を開業し続け32歳で(株)Anneを設立。一見絶好調に思えるが、山本さんの心中は経営の悩みでいっぱいいっぱいだった。

山本「この頃が一番苦しくて、3回自殺未遂を起こしました。まだ飲酒運転がそんなに厳しく無かった頃ですが、大量のお酒を飲んだ後に車で親の墓前まで行ってそこで…。翌朝には仕事行きましたけど。別の場所では、死のうとフラフラ動き回る自分を見かけた近所の人が心配して、警察を呼ばれたこともありましたよ」

それからしばらくして、日本で発表されたばかりのiPhone3GSを購入した山本さんはITに興味を持ち始める。

山本「店をどんどん開業していたけど、長崎県内の人口が減少しているのもあってこれ以上店舗を増やすのも違う、別のことを始めなきゃという考えも漠然とありました。その矢先、iPhoneを手に取ってみたらこういうIT系の仕事も良いかも! とピンと来て。Bluetoothが日本に普及し始めたころ中国で商材を買ったり、部品をヤフオクで売ったりしてました」

自殺未遂を繰り返すほど苦しみ抜いた山本さん。モチベーションをどん底から上げ直すことができた理由を語ってくれた。

山本「楽観的になったんですよ、自殺未遂まで行ってもどうにかなるって。その考え方に変わって悩みを乗り越えられたのはMGのおかげですね」

経営の考え方を変えたMG

MGとはマネジメントゲームの略。簡単にいえば自分が社長になったつもりで会社を経営していくゲームのこと。1万社以上の企業研修にも導入されている。

山本さんがMGを知ったのは2011年ごろ。共にGlobalBを立ち上げることとなる佐藤潤一COOに出会って2年後のことだった。

GlobalBのCOO(最高執行責任者)である佐藤純一さん

山本「自分にとってMGはめちゃくちゃ重要なもの。これが無かったらGlobalBを作っていないですよ」

『愉しむ』ことが喜びにつながる
大村市にある本社の看板

山本さんには仕事に対する思いも語っていただいた。

山本「自分は、たのしむという言葉を『愉しむ(愉=よろこぶ、心が晴れ晴れする)』だと考えていて。仕事を効率化して行くことで相手の心をスッキリ晴らせたら、自分も愉しくなる。相手にありがとうと言われ喜んでもらうことで自分たちのモチベーションが上がって、やりがいをどんどん見つけていけるのではないでしょうか」

大きな挫折を味わいながらも一筋の光をキャッチし、新しい道を切り拓いてきた山本さん。「何があっても愉しむ気持ちがあれば、きっと大丈夫」と教えてくれた。

みせ・ひと・ことについての詳細は以下のそれぞれの記事をご覧ください。