東そのぎICを降り、大村市街方面へ国道34号線を走らせていると、左手に三角屋根の何やらデザインの効いた建物。これまで駐車場として利用されていた空き地に、突如として現れたこの建物は、東彼杵ひとこともの公社と九州電力との協業により生まれる交流拠点『uminoわ』だ。
この交流拠点『uminoわ』は、「洗濯場 わ」「縫製場 わ」「喫茶CHANOKO」が入居する小さな複合施設。目玉となるのは「メディアウォール」と呼んでいる地域のプロモーション。「ひと」にフォーカスしたパネル展示や商品の紹介など、当HP「くじらの髭」をリアルな場で表現したような情報発信を計画している。その他にも種々のコンテンツを検討しており、地域の方と町外の方とを結び、東彼杵のファンの“わ”を更に大きくしていくことを目的に運営される。
きっかけは、コインランドリー
さて、この交流拠点が始まる歴史をひも解くと、Sorriso risoが生まれる頃に遡る。Sorriso risoは元農協さんの米倉庫を改装した施設。この一帯の建物は農協さんが管理をされていた建物で、Sorriso risoの隣にある「コインランドリー」も農協さんから経営を引き継ぐことに。
地域の方が利用されている「コインランドリー」は、大切な生活インフラであり、農協さんとの取り決めの中で、経営を続けていく必要があった。しかし、設備の老朽化や人口減少に加え、大村市などに新設されていくコインランドリーとの競争の中で、経営は厳しい状況に。
そんな中、ある相談が舞い込んだ。「洋服のお直しの仕事を東彼杵でやれないか」。
相談を持ち込んだのは、東彼杵町で新聞配達を営む石高さん。奥さまのお母さんが、お直し屋さんで勤めてこられた経験やスキルを活かして創業させてあげたいという相談だった。
衣服の循環とぐるぐる回る洗濯機
そこで、コインランドリーと洋服のお直しで、既存の「コインランドリー」を改装できないかと考え、困った時のデジマグラフ。羽山さんとマルチノさんにコンセプトワークや店舗デザインを依頼。こうして、衣服にまつわる循環型のコンセプト「洗濯場わ」と「縫製場わ」が誕生した。
しかし、ここで問題が発生する。既存の「コインランドリー」を改装しようとすると、想定以上の多額の費用が必要となることが判明。資金的に着手が難しくなり、この「洗濯場 わ」と「縫製場 わ」は、お蔵入りになってしまうのではないかと怪しい雲行きに。。
新たな仲間の登場
そこに九州電力との協業開始の話が舞い込む。何かしら連携ができないかと持ち掛け、飲食店と物販ができる店舗の話が浮上。新たにハコものを作ることに否定的ではあったが、店舗向けの空き家が不足していることや、Sorriso risoで行うことができる催事や展示などにも限界が出てきたことから、新たに交流拠点を作ることに決定。
ただ、ここでも課題が生じる。新たに建物を作ることには相当の資金が必要となる。しかし、そんな資金は九州電力による当該プロジェクトの予算でも到底難しく、もちろん公社にもない。そこに長崎県観光振興課からある補助金のご案内があった。それが「長崎県21世紀まちづくり推進総合補助金」だ。
「長崎県21世紀まちづくり推進総合補助金」は、交流人口の拡大や地域課題の解決などを目的としたもので、そのうちの「観光交流まちづくり推進事業(異業種等連携創出事業)」に当プロジェクトを応募。長崎県や九州電力のサポートを受け、無事採択された。こうして、交流拠点の建設費用の一部を補助金で補うことができたことで、このプロジェクトの動きが加速する。
魅力的なデザインが形になっていく
2021年4月、補助金採択が決定したのち、島原市に本拠地を構えるインターメディア一級建築士事務所の佐々木翔さんに実施設計を依頼。夏頃の着工に向けて急ピッチで設計が進む。
と、そこにもまた、壁が立ちはだかる。新型コロナウイルスの影響によるウッドショックだ。当初想定していた金額以上に施工費がかさんでしまい、施工費の減額にむけた仕様見直しが余儀なくされた。
資金が不足する中、施工を請けてくださったのが、波佐見の里山建築さん。さまざまな仕様見直しによる工夫はもちろん、限りない企業努力をしていただき、何とか着工へ踏み切ることができ、9月10日に地鎮祭を執り行い、無事、工事が始まった。
着工後は着々と工事が進み、どんどんと建物の輪郭が明らかになっていく。国道34号に面する立地であることもあり、通行する車からもその変化の過程は目立つ。
地域の皆さまへのご挨拶「お餅まき」
地域の方々からも何ができているのか問い合わせも増えてくる中、11月12日、上棟式が行われた。工期が限られているため、上棟式を迎えた頃には既に棟木は上がっていたが、この日は関係者に参加していただき、棟札への署名や四方固めなどの安全祈願が行われた。
その後、昔ながらの風習でもある「お餅まき」を実施。近所のおじいちゃんやおばあちゃんにも沢山お集まりいただき、建設現場にはだんだんと人だまりができていく。移動販売「CHANOKO」号も回游し、くじら焼やそのぎ茶が振舞われるなど、「お餅まき」は地域の方々でとても賑わった。
さてさて、この交流拠点の物語は、まだまだ始まったばかり。2月のオープンに向けて、どんどんと「こと」が進んでいく。
また、その物語は交流拠点が完成した後編で。お楽しみに!