川棚の町に、人に愛されるお菓子処 和洋菓子屋『菓舗 いさみ屋』

和菓子も、洋菓子も
素材や工程に拘り抜く。

1955年に創業をした『菓舗 いさみ屋』。創業者である先代尾崎勇さんが行商から始め、やがて路面店を構え40年以上にわたって店を繁盛させてきた。そして、18年前。町を流れる川棚川のほとりに店舗を引越し、リニューアルオープンしたのが現在のいさみ屋である。看板商品で長く愛される川棚まんじゅうをはじめ、和洋を問わず幅広いジャンルのお菓子を販売している。

「名前の由来は、『父の名前が尾﨑勇(いさむ)だったから』が有力です。でも、真相はわかりません。母の名がミヤノだったから(いさ)むと(みや)のでいさ・みやだったかもしれないねと身内ではそんな説もでたり」

と現在代表を務める2代目、尾﨑勇一さんは笑って語る。

ひと : 川棚で生まれパリの味を知りつくす和洋菓子職人『菓舗 いさみ屋』社長 尾﨑勇一さん

店頭では、いさみ屋の看板商品であり川棚町の名物「川棚まんじゅう」が蒸されている。ここから、1日平均3000個もの川棚まんじゅうが買われていくのだ。出来立ての湯気と匂いにつられて入ってしまう人もきっと多いだろう。

「うちが一番大事にしているのがあんこです。和菓子の命とまで言うのはどうかと思うけど、それだけ大事にしています。昔は製餡所からあんこを取り寄せていましたが、25年くらい前からプラントを投入し豆から自分で炊いて製餡している。そこまでしているお店は、県内でも何軒かです」

製餡は、餡の製造・加工のこと。日本では、各地の和菓子店等の小売店に向けて製餡・販売する製餡所もあるくらい重要な製造過程なのだろう。原料となる小豆は、機械的に同じ時間、温度、タイミングで煮ても、同じあんこにはならないという。小豆を煮て、水を切るタイミング。そこにも職人の磨かれた技術があるのだ。あんこは、1日してならず。製餡所に頼みたいところだが、いさみ屋は独自で製餡する道を選んだ。

「あんこで鮮度って言ってもよくわからないかと思いますが、あんこには鮮度があります。豆から炊き上げて1時間以内にあんこにするのがベスト。製餡所から持ってくると、前日に生餡にしたものを冷蔵に持ってくるため、どうしても鮮度という意味では自家で行う方が新鮮です。あと、製餡所に頼む際に、餡の100%が国産の大豆であるかどうか、こちらで調べられないということもあります」

「というわけで、25年前に思い切って製餡のプラントを導入しました。賭けに出ましたが、きちんと結果を出せたから今のいさみ屋があると思います。本当、アドベンチャーですよね(笑)」。

工場内を見学したが、そういった思いで全ての工程を自社工場で行っているのだと考えると感慨深い。

和菓子屋にとっては一風変わった設備かもしれないが、本来は洋菓子職人として本場フランスでも修行を積んできた尾崎さんが営む和洋菓子店ならではだ。和菓子に加え、数々の洋菓子もここから生産されるのだ。

「ひとりでお菓子は作れない」
菓舗 いさみ屋が愛される理由。

和菓子職人と聞くと、売り場には出ずにひたすら厨房で寡黙に作品と向き合うイメージする人も多いのではないだろうか。実際に、記者はそういうイメージを持っていた。だが、それだけでは店は立ち行かない。そんなこと、当たり前なのだが、2代目の話を伺うとお菓子に、そして人に向き合って初めてお店独特の空気が築かれていくんだと気付かされる。

「先代となる父がいた頃は、自分には後ろ盾があると感じていました。自分が失敗してうまく立ち行かなくなったとしても、どこかで尻拭いをしてくれるような。実際にそれがなくなった時、本当の意味で経営者としての道に立たされました。ただ、そこでいろんなものが見えてきた。ひとつは、ひとりでお菓子は作れないこと。いくら腕の良い職人がいようとも、それを支えてくれる人、その人たちと一緒に上手くお店を回す経営力がないと立ち行きません。そして、もうひとつは、妻の存在。どうしてもこういう仕事は二人三脚でやらないと回りません。18年、妻と走り続けてきました。いろんなところにアンテナを立てていて、人の気持ちがよくわかる人です。頭が上がりません」

現在、川棚まんじゅうに並ぶ看板商品である「かりんとう饅頭」。実は、妻の知加子さんのおかげだという。

「かりんとうまんじゅうの存在がなきゃウチも全然違っていたでしょうね。それが今も絶えることなく、落ちることなく売れているのは、足取りが軽くいろんな場所を視察し情報をキャッチする妻と、より良いものを作るという信念の元、ブレずに、慢心せずに直走ってきた夫だったからなせる、尾﨑夫妻の努力の賜物なのだ。

現在は、15名のスタッフに、アルバイトやパートが加わっていさみ屋で働いている。社員一人一人が、尾崎さんのお菓子や顧客に対する想いに賛同し、動く。その心配りは、お菓子の味にも、接客にも表れている。2020年は、コロナウイルスの影響でいさみ屋も催事などの注文は激減したが、一年の売り上げを見てみるとそこまで業績が落ちなかった。いったい、なぜか。それは、地元のお客さんが個人として甘味を求めに買いに来るからだという。真心込めた味と接客。信頼を得ている菓舗だからこそ、営業を続けられるのだ。

「売り上げを伸ばすことを考えるよりも、客入りを伸ばすことが大事だと思います。そうすると、対策が立てやすいです。より来てもらうにはどうするかを考えることが大事」

創業以来、変わることない人気を誇るお菓子処であり続ける『いさみ屋』たる理由が、ここにあった。

ひと・ことについての詳細は以下のそれぞれの記事をご覧ください。

ひと : 川棚で生まれパリの味を知りつくす和洋菓子職人『菓舗 いさみ屋』社長 尾﨑勇一さん

こと:川棚生まれフランス育ち 川棚町・いさみ屋 × 東彼杵町・くじらの髭 和菓子の根底を覆す地域連携商品開発!?

もの:川棚町で愛される『菓舗いさみ屋』が手がける名菓。そして、”これから”のお菓子作りについて知ってほしいこと

もの:『尾﨑カヌレ』は、食べた後も”幸せ”が訪れる。 波佐見町の『工芸イワナガ』特製木箱にご注目!

もの:満を時して、商品とリリース日がついに決定!【発売日:2021年10月29日~】和洋菓子処いさみやの『尾﨑カヌレ』プロジェクト

記事:東 孔明
写真:小玉 大介
編集 : 森 一峻

店 名
菓舗 有限会社いさみ屋
所在地
長崎県東彼杵郡東彼杵町蔵本郷1848
営業時間
8:00~18:00

※変更になる場合がございます。くわしくはお問い合わせください。

休業日
不定休

※変更になる場合がございます。くわしくはお問い合わせください。

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TEL
0956-82-2301
FAX
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