川棚生まれフランス育ち 川棚町・いさみ屋 × 東彼杵町・くじらの髭 和菓子の根底を覆す地域連携商品開発!?

文・編集

写真

東彼杵町や五島の産品を、川棚町の和菓子職人がカタチにしていき長崎県を紡ぎます。

日本でも数少ない大村湾を茶畑越しに臨める風光明媚な立地に位置し、そのぎ茶を主幹産業として持つ東彼杵町。これまでもそのぎ茶をいろんなカタチでお伝えしてきました。今回は、お隣のくじゃくの町、川棚町と民間事業者同士で連携しあらたなそのぎ茶の楽しみ方・まちの「ひと・こと・もの」の価値を追求していきます。

東彼杵郡川棚町の和菓子屋と言ったら「いさみ屋」

いさみ屋は、1955年(昭和30年)に創業。長崎県東彼杵郡川棚町に店舗を構えており、現在は2代目尾﨑勇一氏が代表を務め、職人・店舗スタッフ合わせて15名で運営。店舗では名物の川棚まんじゅう、かりんとうまんじゅう、冬季限定のいちご大福、リーフパイやソフトクッキーなど人気商品をはじめ、上生菓子や焼き菓子、ケーキまで100種類以上の幅広い商品を製造・販売されています。

川棚町の「いさみ屋」と言ったら尾﨑勇一氏

尾﨑氏は1961年生まれ。高校卒業後上京し都内の洋菓子店で8年間修行。渡仏しパリ市内のパティスリーで2年間の修行。帰国後は家業のいさみ屋に入店、創業者から和菓子づくり・経営を学ぶ。
2002年「有限会社いさみ屋」の代表取締役社長に就任し、2代目店主となる。伝統を守りながらも、かりんとうまんじゅうやアン食パンなど和洋を学んだからこそできる人気商品を考案。趣味はワインのティスティングとプラモデルと食べ歩き。

和菓子職人が洋菓子職人に!?

尾﨑氏の経歴を見てもらうとわかりますが、尾﨑氏は2年間の渡仏期間を経て、家業である和菓子屋「いさみ屋」を承継することとなったのですが、実は大の洋菓子好きで、洋菓子を専門で本当はものづくりをしたかったのだとか。そんなことから私たちくじらの髭で実現したかったことと尾﨑氏の願いを重ね今回の商品開発に挑みます。

尾﨑氏に今回のプロジェクトについてどう思うか率直に聞いてみました。

はじめて、外部の方と商品開発に取り組んでみられて職人としてはどうこの取り組みが映ったのでしょうか。これまで、なぜ、外部の方と連携などされてこなかったのか。率直に聞いてみました。

私は職人だから、「おいしい」の一言が出ないとやる意味がないと思っているし、今回のプロジェクトもおそらく取り組んでなかったと思う。基本は、見ただけではわからない「おいしい」が基本。この提案がなければ、もしかしたらフランスにいた頃から考えるとこの先も作ることはなかったかもしれない。これまでも、たくさんの各所いろんな企業や会社さんから取り扱いたいとか、商品開発をしたいという営業もやってきた。失礼ながらこれまでの提案や内容に、納得がいかなかったし、自分の大事にしているものを目の届かないところで売りたくない。

と、尾﨑氏の優しい表情の奥に、厳しい眼差しがありました。

なぜ今回の私たちの提案に答えてくださったのか。また、今回、この期間進めてきてどんな印象なのでしょうか。

もちろん、新商品開発を試みているタイミングでもあったけど、提案書を見たときに、直感的に自分自身がやってみたいなと思った。フランスで修行していた頃の商材をまさか提案されるとは。人の集まりがあって、自分が思っていないような商材や、使い方が皆さんのアイデアから出てきたりしたことが予想外であってあらたな境地となった。

そう、尾﨑氏は率直に答えてくださり、私たちももちろん心の中でガッツポーズを取ったのは間違いありません。

約1年近く検討を繰り返してきた念願の地域連携商品開発。

この商品開発プロジェクトがはじまったのは2020年3月。もとは言えば、地域の課題や承継問題の糸口からはじまりました。

昔気質の仕事である和菓子職人に現代の若者が興味を示してくれず、和菓子業界は、人手不足とも言える事態。

そんな中、例にもなく「いさみ屋」さんも同様の課題に向き合います。そんなお話をお聞きし提案したのは、もともと、「いさみ屋」の尾﨑氏がやりたかったことと結びつけること。また、今回の商材となる題材は、尾﨑氏が2年間滞在していたフランスの郷土菓子であり、尾﨑氏の趣向品でもある、フランスボルドー地区のワインの工程から生まれた郷土菓子でもあります。そんな商材をご提案をさせていただいたところ、尾﨑氏も社外の方と取り組むことははじめてごとながらも取り組んでみたいとさっそくこの話に賛同いただいたのでした。

これからの和菓子職人について。

伝統だし、残っていくものだとは思っている。和菓子の文化はずっと継続していく。が、和菓子店舗は全国的に減ってきている。社会自体も洋風化してしまい、洋菓子が主流になってきた。それに伴い洋菓子店舗の独立者も増えパティシエ、パティシエールと呼ばれる人たちが増えてきた。特に女性。男性社会から女性社会になってきたことも背景にはあるのかも。ケーキも華やかだし、女性の職人も昔と比べたら圧倒的に増えた。

だからこそ、男性も女性も職人として働くための志を大事にしなければならない。いまこそ、見つめ直すときなのかもしれない。その志とは一体どんなことなのでしょうか。

和菓子屋の場合は、本当に好きじゃないとできないし、本当に菓子が好きだという志がないと続かない。和菓子と言ったら、上生菓子が全般的なイメージ。私の場合はその中でもあんこが一番大事だと思っていて、製餡にこだわっている。あんこの出来が良ければホンモノだと思っている。それが、日本の良き侘び寂びの部分なのかもしれんね。

そう語っているお姿から本当に、尾﨑氏の和菓子好きが垣間見えました。

商品開発の舞台裏を支える地域の立役者

今回、この企画に賛同いただき、ご参画いただくのは、商材に使用していただくそのぎ茶の生産農家であり碾茶工場Fortheesのメンバーでもある大山製茶園の大山良貴氏や、茶商である池田茶園池田亮氏、最近、グリーンティーリズムと題して、茶畑ツアーに翻弄してくださっている松本康晴氏。そして今回の商材のまさしく女性ペルソナでもあり、当公社の運営するSorrisorisoでも定期的にパン教室を開いてくださっている東彼杵町出身、福岡在住の「帆屋」の前田帆奈己氏。また同じく女性をターゲット層としているため、ご意見番としてさいとう宿場の女将、斎藤晶子氏。そしていさみ屋さんとも佐世保にいらっしゃった時からワインで繋がっていらっしゃり監修役としてLittleLeoのオーナーシェフ宮副玲於奈氏。型のデザインは「くじらたより」のイラストを施していただいたホクゴウサトシ氏。撮影・フライヤーデザインでは小玉デザイン制作室・千綿写真室小玉大介氏。そしてこのプロジェクトを支える運営側として東彼商工会本所の総務課長、福田万作氏。各分野のそれぞれのメンバーにて今回のプロジェクトは約8ヶ月間みなさんでご意見を集約し進めてまいりました。これから徐々にその全貌が明らかになっていきます。

川棚生まれフランス育ちの新商品開発

本場フランスでは、洋菓子のイロハを一から学び、基礎を身につけたとおっしゃっていた尾﨑氏。そんな基礎をベースにどんなあらたな商品開発を進めていくのか。これまでもアン食パンや川棚かりんなど、フランスで学んだ洋菓子の要素を取り込みながら自身でも商品開発に挑まれてきました。今回はそんな尾﨑氏の話を聞いて私たちが受けた印象は「GAP(ギャップ)」です。そのギャップを今回の商品開発にも活かしたいと思い、フランスの郷土菓子を提案しました。

そんな、ギャップのある商材。

2021年1月、いよいよお披露目です。2月某日販売予定です。

どうぞお楽しみにされていてください。